「選手から怒りを買い、ファンからは憎まれ役」となった“史上最悪の審判”が突然の引退を発表した理由<SLUGGER>

5月28日(現地)、数々の誤審で悪名を馳せてきたエンジェル・ヘルナンデスが突然、審判を引退することを発表した。

1991年以来、30年以上にわたってメジャーリーグの試合を裁いてきたヘルナンデスのキャリアは、常に批判と論争とともにあった。

とにかく物議を醸すような判定が多く、また態度も頑なだったことから、選手を対象にしたアンケートでは常に球界ワーストクラス。2018年のポストシーズンでは、最初の4イニングで3回も判定がリプレー検証で覆たこともあった。有名選手からも「他の仕事を探したほうがいい」(イアン・キンズラー)、「MLBは何か対策を取るべきだ(ペドロ・マルティネス)、「なぜ彼が大事な試合(ポストシーズン)を担当しているのか理解できない」(CC・サバシア)と批判が殺到していた。

近年は“誤審”シーンがSNSで何度も紹介されるようになったこともあり、ファンの間でも悪評が定着。“MLB史上最悪の審判”という声も少なくなかった。
その一方で、17年には「ワールドシリーズのクルーチーフから長年外されているのは人種差別である」(ヘルナンデスはキューバ系アメリカ人)としてMLBを告訴。この訴えは連邦地裁で退けられ、控訴裁判所もこれを支持したが、今回、MLBとの間で和解が成立。突然の“引退発表”は和解の条件の一つだったとの見方が強い。

昨年は背中の痛みでシーズンの大半を欠場したヘルナンデスだったが、今季も4月にレンジャーズの注目ルーキー、ワイアット・ラングフォードの打席でストライクゾーンの外角の端から約7インチ(約18cm)も外れた球を3球続けてストライクと判定して物議を呼んでいた。

ESPNの人気記者ジェフ・パッサンは、ヘルナンデスが審判仲間の間では好かれていたこと、他の審判たちがヘルナンデスを守ろうと団結していたと意外な一面を明かす一方、「近年は選手たちから怒りを買い、ソーシャルメディアではファンから憎まれ役になっていた」と波乱万丈のキャリアを総括した。

構成●SLUGGER編集部

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