「僕は絶対取り返すんで」オリックス宗佑磨、奇跡の逆転優勝に向けて持ち続ける諦めない気持ち【オリ熱コラム2024】

5月19日の楽天戦でのこと。同点で迎えた9回裏、オリックスは無死二塁とチャンスを作るも宗佑磨がバントを失敗して空振り三振に倒れ、試合は延長戦に突入した。10回裏、2死一、三塁の場面で再び打席に入った宗はセンターに弾き返す劇的なサヨナラ打でチームの勝利に貢献した。

9回のバント失敗を「やっちゃったなあと思った」という宗。しかし「次の回、井口(和朋)さんがピッチャーになった時に(ロッテの)鈴木大地選手のいい当たりをしっかりキャッチできたので、まだ流れは切れてないと思って死ぬ気でいきました」と振り返った。中嶋聡監督も「悔しかったんじゃないですか。それぐらいの気持ちがないと、プロ野球選手としてはダメだと思うので」と宗の負けん気を評価した。

3年連続でゴールデン・グラブ賞を受賞している宗は今年のオールスターファン投票でも三塁手部門2位につけており、今やパ・リーグを代表する人気選手の一人と言っても過言ではない。今季はここまで44試合に出場して打率.248と苦しみながらも、得点圏打率は.344と勝負強さは健在だ。

ミスからサヨナラ打につないだことに関して宗は「あるあるなんで僕。マジで」と言う。「僕は絶対取り返すんで。今日もバント失敗して、守備で強い打球を捕ったんで。それがやっぱり大きかったなと思います」

サヨナラの打席はいろんな感情が混ざっていたようだ。「ちょっと熱くなりかけたっすけど、2球目にファウルがちょっと強くスウィングしてしまった結果のミスショットだったんで、『あっダメだダメだ』と思って。もうここは冷静にもっとコンパクトにコンタクトしていかないと思ったんで。そういうところの冷静さが良かったかなと思います。打球が抜けた時は、ちょっとセカンドライナー気味だったんで、最初に嬉しくて、次にホッとしてっていう感じです」 もちろん、三塁というポジションに思い入れも持っている。「僕は守備から流れを、リズムを作っていくタイプだと自分で思ってるので、そういう面で守備も大事にしていますし、打席につながる守備をと思っていつもやってます」と守備から打撃へと流れを作っていくという。

故障者が続出していることもあり、チームは現在、首位のソフトバンクと11ゲーム差の4位。厳しい状況だが「今、いる選手で戦うしかないと思っているので、 出てる全員がやらなければいけないことをやってますし、それで結果が出ないことももちろんありますけど、でも切り替えてやっていくしかない」と前を向く。

もちろん、昨季までの3連覇を経験したことも大きい。「今日だけに限らず、こういう戦いをものにしてきた3年間なので。最後まで諦めない戦いというのを今日は見せられた。こういう団結力というか繋がりを今後も見せていきたい」。事実、22年は11.5ゲーム差をひっくり返す逆転優勝だった。

それだけに、ファンに対しても「最後まで観てもらいたい」という気持ちが強い。「強いからだけじゃなくて、面白い試合をするからっていう風に観に来てもいいと思うんで、そういう試合を僕らもしたいなと思います」

4連覇をあきらめるつもりはサラサラない。「絶対に取り戻す」という強い気持ちを持って、逆転優勝に向けて好プレーを続けていく。

取材・文●どら増田

【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。

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