話題の新団体マリーゴールドに現われた女子プロレス界注目の超新星、天麗皇希とは何者か? 「もう人生が180度変わったと言っていいくらい」

話題の新団体マリーゴールドは、旗揚げから3大会すべて満員という最高のスタートを切った。

ロッシー小川氏がスターダムを離れて設立した女子プロレス団体。ジュリア、林下詩美と元スターダムの選手たちが中心になると思われたが、そこにアクトレスガールズを離脱した選手たちが加わって陣容が分厚くなった。

中野たむ、なつぽい、安納サオリなど多くの人気選手を輩出したアクトレスガールズ。2022年からはプロレス団体としての活動をやめ、プロレスをモチーフとしたエンターテインメント・パフォーマンスのイベントを開催してきた。試合展開を事前に作り込み、リハーサルを繰り返してリング上で披露する。勝ち負けは試合前から決まっていると団体が公言してのエンタメだ。

ただそこから、プロレスに戻りたい、もっと本格的にプロレスをやりたいという者も出てくる。アクトレスガールズでプロデューサー/アドバイザーを務めていた風香氏は、かつてスターダムのGMだった。その縁からマリーゴールド旗揚げに加わることに。

“非プロレス”のアクトレスガールズでデビューした選手たちは、マリーゴールド旗揚げ戦で正式なプロレスデビューとなった。後藤智香、天麗皇希(あまれいこうき)の2人だ。

後藤が173cm、皇希は170cmと長身。会見に登場した時から、そのビジュアルもあって注目されてきた。とりわけ皇希のポテンシャル、期待感については小川氏もたびたび言及している。

5月20日、後楽園ホールの旗揚げ戦では、アクトレスガールズでも同じユニットだった皇希と後藤の「ツインタワー」タッグが翔月なつみ&松井珠紗に勝利。アクトレスガールズの先輩からの金星だった。

フィニッシュとなったのは皇希のアメジスト・バタフライ(旋回式ボディプレス)。同じ技で旗揚げ2戦目、新木場1st RING大会昼の部(5月26日)では石川奈青を下した。デビューから2戦連続で自分よりキャリアの長い選手に勝ったのだ。

さらに5.26新木場大会・夜の部では、団体エース格の林下詩美と「ロイヤルタッグ」を結成。ファンからも見たいと要望が多かったというコンビで翔月&ビクトリア弓月に勝利した(林下が弓月をフォール)。

これで皇希は旗揚げから3連勝。プロレスデビューから3連勝でもある。皇希とのタッグについて「私たちはビジュアルもいいし、強いし、美しいし」と林下。シングル対決も望んでいるという。

皇希も「詩美さんは超えなくてはいけない存在」と語る。3連勝という結果もあり、そんな目標を掲げる自信もついたのだ。
「でも、最初は不安でした」と皇希。これまでやってきたのは技(形)を綺麗に見せるパフォーマンス。マリーゴールドで練習してみると「基礎が全然足りてない」ことを痛感した。それでもなんとか3連勝。

「前の団体でやってきたことが無駄ではなかったんだなと」
アクトレスガールズは2022年からの新体制で“プロレス界”と縁を切るような活動形態となり、プロレス専門マスコミによる取材もなくなった。露出が減り、いわば知る人ぞ知る団体に。皇希はそこから大注目の新団体に移ったわけだ。

「これまでと違う層の人たちに見てもらえている感覚があります。SNSでは“待ってたよ”という言葉もいただきました。プロレス界に来てほしかったと」

もともとは演劇の世界で活動。アイドルをしていた時期もある。そこからプロレスに触れ、さらに“本物の”プロレスラーに。

「もう人生が180度変わったと言っていいくらいです」

クラシックバレエとストリートダンスの経験がある皇希。まず立ち姿の美しさが目を引く。長身から繰り出す技は誰が見てもダイナミック。すでに単なる新人ではなく、女子プロレス界の注目株だと言っていい。

旗揚げ前、舞台出演もあって満足できるほどにはプロレスの練習ができなかった。そのことを対戦相手の石川に批判されてもいる。だが「自分が決めた道なので」と“兼業”にプライドを持っている。もちろん、これまで以上にプロレスの練習に取り組むのは大前提。これから実力はさらに上がっていくだろう。

マリーゴールドに来て、一気に世界が開けたという。自分でも想像していない人生だったが、そこに可能性も感じる。

「勇気を持って一歩踏み出すだけで、こんなに変わるんだよっていうのを体現していけたら。こういう自分の見せ方もあるんだって。今、見える景色が全然違うんです」

最初の段階では“ロッシー小川新団体はスターダム離脱組による団体”というイメージもあった。しかし実際のリングでは、元アクトレス組が抜群の新鮮さをもたらしている。旗揚げ戦でジュリアが負傷し、当面は欠場となるだけに皇希の役割も大きくなる。ここから皇希がどこまで成長していくか。それを見ていくのもマリーゴールドの楽しみの一つだ。

取材・文●橋本宗洋

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