留学奨学金、応募ゼロ 砺波市、1人50万円の好条件でも 円安で滞在費増不安?

再募集する海外留学の奨学資金のチラシ

  ●6月28日まで期間延長

 砺波市が篤志家の寄付をもとに創設した海外留学を支援する奨学資金の募集が苦戦している。1人50万円給付する好条件にもかかわらず、今月10日に締め切った段階で応募ゼロにとどまった。急速な円安と世界的なインフレで、海外滞在の負担額が大きい不安が背景にあるとみている。市は応募期間を来月28日まで延長し、再度募集を呼び掛ける。

 市は昨年度、匿名希望の篤志家から1千万円の寄付を受けた。市出身の青少年が国際社会で活躍できる人材に育ってほしいと願いが込められた。市は未来を担う子どものために使う「となみっ子応援基金」に積み立て、海外留学支援奨学資金制度を創設。4月1日から募集を開始した。

 対象として市出身の高校生や大学生を想定。市内在住か1年以上継続して市内で暮らした実績がある15歳~25歳で、おおむね1年以上の海外留学を開始する人とした。

 今年度は4人の支給枠を予定。市はホームページに掲載したほか、富山、石川県内の大学や県内で留学に関心がありそうな学科がある高校に案内を出したものの、問い合わせも1件もなかった。

 市教委が状況を独自に調べたところ、学生の留学に積極的な大学でも円安やインフレが影響して希望者が例年より少ないことがわかった。50万円の無返還奨学金を昨年度に創設した高岡市も今年度の応募は数人程度にとどまっている。高岡は昨年度11人の応募があり、反応の鈍さは砺波と同様だ。

 円相場は現在1ドル=150円台半ばで、1年前に比べて10円以上の円安となっている。留学費用を年間3万ドルと仮定した場合、負担額は円換算で30万円以上大きくなる。世界的なインフレもあり、学生にとって留学は「高根の花」になっている。

  ●「篤志家に応えたい」

 28日に開かれた砺波市教育委員会の定例会では教育委員から「篤志家の気持ちに応えたい」と状況を憂う意見が出た。市教委は高校、大学に再度募集の案内を出し、周知に取り組む。ただ、期間内に応募がなかった場合は再延長はせず、来年度に仕切り直す方針だ。

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