クマに襲われ男性けが 金沢・医王山、県内2人目

現場の確認を終えて引き上げる猟友会員や署員ら関係者=24日午後2時40分、金沢市湯谷原町

  ●初の5月発令、県が「注意報」

 24日午前10時半ごろ、金沢市営医王山スキー場付近の同市湯谷原町の山道で、犬と散歩していた金沢市の男性(52)がクマに襲われた。男性は右頰と右足のすねを引っかかれて軽傷を負い、自力で市内の病院を受診した。市や猟友会、金沢中署が周辺を調べたが、クマの姿や痕跡は見つからなかった。石川県内でのクマによる人身被害は今年2件目。県は同日、過去最も早くツキノワグマ出没注意情報を発令した。

 現場は、スキー場近くの医王山寺の本堂横にある石階段。市や寺の井上惠照住職によると、男性は午前10時すぎに飼い犬と石階段を上り、その中腹でクマに襲われた。男性は頰から血を流していたといい、井上住職は「注意喚起の看板を増やし、被害が出ないよう祈りたい」と話した。

 市によると、クマは体長約1メートルの成獣とみられる。市職員や猟友会員、金沢中署員が午後2時20分ごろから、爆竹を鳴らしながら現場に向かい、署員がパトカーで周辺を巡回した。

 県内では、4月28日に奥(おく)獅子吼(ししく)山に向かう白山市白山町の登山道で、50代女性が顔を引っかかれる事案が発生している。県によると、5月までに人身被害が2件確認されたのは2019年以来。近年で被害が最も多かったのは20年の10件で、15人が負傷した。

 県は今季、クマの餌となるブナの実の凶作が予想され、出没が相次ぐことが見込まれるため、4月26日に出没警戒準備情報を出していた。5月21日時点で県内では28件の目撃情報があり、昨年同期比で2件増。金沢で人身被害が発生したことを受け、出没注意情報に警戒レベルを引き上げた。注意情報の発令は7月に出した22年を上回り、最も早いタイミングとなる。

 金沢市は情報共有会議を開催、県は連絡会議を開いた。県は市町に対し捕獲用オリの増設を要請。住民に山林近くなどでの早朝、夕方、夜間の散歩・ジョギングを控えるよう呼び掛けることも求めた。

 

  ●「6、7月さらに警戒を」

  ●県立大・大井特任教授

 クマの生態に詳しい石川県立大の大井徹特任教授は「クマの生息域が広がったことで5月でも人身被害が起きた可能性がある」と指摘した。

 6、7月はクマの交尾期で雌を求める雄が活発に動き、親離れをした若いクマも移動するため、目撃が相次ぐ傾向にあるとし、「さらなる警戒が必要だ」と訴えた。対策として、クマが身を隠す草むらを刈り払い、自宅周辺に生ごみやペットフードを置かないことが重要になるとした。

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