手取を圧迫する社会保険料 年金と医療費で100兆円超えのこと、知ってます?医療費の6割は65歳以上の現実

いよいよ6月から始まる定額減税。

給与明細への明記について「義務化」されるようだが、そもそも給付でなく減税である理由や、政府が給与明細への明記にこだわる理由は何だろうか。

岸田首相は、昨年の11月の内閣総理大臣記者会見で、今回の定額減税が給付でなく減税である理由について「賃上げと定額減税、双方の効果を給与明細において目に見える形で実感することができる」と給与明細への明記に加え、6月から開始する意義を強調したうえで、定額減税により「幅広い国民が所得の下支えを実感することができる」と述べた。

一方、今月23日に発表された厚生労働省の「毎月勤労統計調査・令和5年度分結果確報」では、名目賃金は3年連続で増加となったが、実質賃金については2年連続減の2.2%減となった。

今回の6月から始まる定額減税では、1人あたり3万円の所得税が減税と、1人あたり1万円の住民税が減税されることから、岸田首相の述べた「賃上げと定額減税、双方の効果を給与明細において目に見える形で実感」は、名目賃金としては確かなのだろう。

ただ、実質賃金については、物価上昇の影響で2年連続減の2.2%減となったことにより「幅広い国民が所得の下支えを実感」するのは難しいのかもしれない。

定額減税が終わると、給与明細で「手取り額の減少を実感」してしまうのでは…

6月から1人4万円の定額減税が始まるが、定額減税がいつまでも続くわけではない。

給与所得者、いわゆるサラリーマンの場合、定額減税の4万円のうち、3万円分の所得税分が今年6月から最大12月まで、1万円分の住民税分が2025年5月までが、それぞれ定額減税により減額される期間だ。

定額減税がなくなったとき、少なくとも定額減税以上の賃金上昇がない限り「給与明細」の手取り額で、その減少を“実感”してしまうのではないだろうか。

また、多くのサラリーマンは給料から社会保険料が源泉徴収されるが、年々その天引き額は上昇していることに加え、「少子化対策支援金」によりさらに天引き額が増える見込みだ。

しかし、年金や医療費等に充てられる社会保障給付費は、年金と医療費だけで100兆円を超え、国の支出と私たちが支払う社会保険料だけでは、そもそも賄いきれていない(2021年度)。

今月23日に開催された内閣府の経済財政諮問会議では「高齢者の健康寿命が延びる中で、高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべき」との提言があったが、この提言に絡むのは「年金」の話だけではない。

医療費の6割以上が65歳以上の現実…

現在、医療費の窓口負担割合は、年齢や所得によって異なるが、6歳までは2割負担、69歳までは3割負担、70歳から74歳までは原則2割負担、75歳以上は原則1割負担だ。

実際、年齢別の医療費の割合は、14歳以下が5.4%、15~44歳が11.9%、45~64歳が22.1%、65歳以上が60.6%で、65歳以上の高齢者で6割以上を占めていて、年々、医療費の総額は増えている。

他の世代より人口の多い団塊の世代が75歳以上になることから、2022年10月より、後期高齢者のうち一定以上の所得がある場合は窓口負担割合が2割に変わったが、働く世代の負担は減っていないのが実情だ。

定年延長の提言があった経済財政諮問会議においても、高齢者の窓口負担割合の議論をしているが、結論には時間がかかりそうだ。

減る手取り額、止まらない物価上昇に値上げの波 都道府県別で200万円の年収差も…

厚生労働省が3月に発表した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の月額賃金は、前年比2.1%増の31万8300円になったとのことだ。

しかし、これはあくまで平均。この平均値を超えている都道府県は、わずか5県で、栃木県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府しかない。残り全ての都道府県は平均以下だ。

また、もっとも年収が多い東京都の年収は581万円、最も少ない青森県は384万円となり、約200万円もの差となった(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとに)。

もともと給与が少ない都道府県で、手取り額が減るとますます生活は苦しくなる。

岸田政権肝いりの「物価高騰対策」による電気・ガス料金の負担軽減措置は、今年6月から半分に縮小することに加え、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価、いわゆる再エネ賦課金は1.40円/kwhから3.49円/kwhに引き上げられる。

止まらない物価上昇に値上げの波…。高齢者の健康寿命が延びているのであれば、働く世代の生活に直結する「手取り額」を減らさないよう、少なくとも天引きされる社会保険料を増やさないため、「医療費」についても「年金」についても、抜本的な議論が必要なときではないだろうか。

政府が推進する定額減税で「所得の下支えを実感」できるは、2025年5月までのあと1年だ。

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