ゆたかなる旅路 Act.10「小道具?で旅を豊かにする」

みんな「ほうき」にまたがってジャンプしている

道の駅 小豆島オリーブ公園のウェブサイトより

香川県小豆島。高松から1時間ほどのフェリーで行けるこの島は、オリーブと映画「二十四の瞳」のセットを活用した映画村などが有名だ。また、干潮の前後3時間だけ小島へと続く道が現れる「エンジェルロード」も、今では外国人観光客も訪れる人気の観光地。映える写真を求めて多くの人々が訪れる。

この小豆島にはもうひとつ、観光客には欠かせないスポットがある。それは「道の駅 小豆島オリーブ公園」。いまや全国各地にある道の駅は地元の産品を販売したり、温泉があったりと観光資源であること自体は珍しくない。だが、この道の駅は少し違う。ある写真を撮るために誰もが訪れる。

海を見下ろす高台に広がるオリーブ畑。そこにギリシア風車と名付けられた南欧風の風車がある。その周辺まで行ってみると面白い。観光客があちこちでほうきにまたがってジャンプしている光景を見ることができる。

たくさんそろえて無料で貸し出した

小豆島オリーブ公園のほうき

「魔女の宅急便」という映画をご存じだろうか。一人前の魔女を目指す少女キキがほうきにまたがり空を飛ぶシーンが有名なスタジオジブリの名作。

実は実写版「魔女の宅急便」のロケ地がここ小豆島。風車をバックにホウキにまたがりジャンプ、その瞬間を写真に収めた画像が拡散し、一躍人気のスポットとなった。

道の駅に入るとすぐそこに、たくさんのほうきがかけられていて、誰でも簡単にレンタルできる。たった1枚(ではないかもしれないけれど)の写真を撮るためだけに旅に出る、そうしたきっかけを作ったのはこのほうき。そんなに高価なものでは無いからたくさん揃えられるし、無料で貸し出せる。それがこの地に多くの人を訪れる動機にしている。まさかこれだけのためにほうきを持って飛行機や列車に乗るわけにもいかないだろうし。

自分で用意しても面白いけど

映画やアニメの聖地と呼ばれるところは無数にある。同じシーンで「なり切り」で写真を撮りたいというニーズもまた数多くあるだろう。しかし、大多数のところはそこがロケ地であったことの看板と撮影風景の写真程度で済ませている。もし、そこに小道具が揃ったら。

もちろんコンテンツや著作権への配慮など、難しい課題が無くはない。でも、ちょっとしたことが人を集めるきっかけになるというヒントを小豆島が教えてくれている。小さなぬいぐるみやキキのリボンくらいなら自分で用意しても面白いけれど。あらかじめ小道具がある、と情報提供されていればそれはきっとワクワクするに違いない。

せっかくだから私も「飛んで」みた。なんか数センチ浮いているような写真にしかならなかったけど。

自分で用意しても面白いけれど(鞆の浦に「崖の上のポニョ」を持って行ってみた)

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 高橋敦司(たかはし・あつし) ㈱ジェイアール東日本企画 常務取締役CDO

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