「2位はもういらない」ニッサンのエースナンバーを背負う千代勝正とクインタレッリ。王座獲得に懸けるふたりの熱い想い

 スーパーGT公式YouTubeチャンネルにて、5月31日(金)21時よりプレミア公開される『フォーメーションラップ produced by auto sport』のエピソード1。今季2024年第2戦では23号車MOTUL AUTECH Zと36号車au TOM’S GR Supraに密着。この映像に収め切れなかったインタビューを再構成してお届けします。そこからはGT500の緊張感が伝わってきます。

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「チャンピオンに餓えている。2位はもういらない」。瞳に強い光をたたえながら、千代勝正が言った。「この状況に、慣れたくはないんです」。2022年、23年と、スーパーGT GT500クラスで2年連続のランキング2位。あと少しのところでスルリと逃げていった王座への思いは、誰よりも強い。

 昨年は3号車。そして今年はNISMOから、ニッサンのエースナンバーである23号車MOTUL AUTECH Zを走らせる。背負うものはひときわ大きく、重くなった。「コクピットに収まってしまえば、カーナンバーは見えないので」と笑いつつ、「そういうポジションを任された以上は、しっかりと自分の仕事をしたい」と表情を引き締める。

「さすがにエースチームだけあって、メンバーのひとりひとりが一流のプロフェッショナル。ドライバーとしては非常に集中できる環境にあります」

 言い訳のできない状況だからこそ、内面にたぎるものがある。チームメイトとなったロニー・クインタレッリについては、「僕よりも熱いんですよ」と笑う千代。「普段の栄養管理、時間管理、そしてトレーニングも含めて、ものすごくストイック。そばにいて、すごく勉強になります」と、ベテランのクインタレッリから多くを学びつつある。

 クインタレッリは、GT500で4度タイトルを獲得している最多記録保持者だ。それでも千代と同様に、飽くことなく王座を渇望している。「5度目のチャンピオンに向けて、ずっと強い思いを持ち続けています。そして今年は速くて強い千代選手が加入して、よりチャンスが大きくなったと感じているところです」

 今年で45歳の大ベテランだが、レースへの取り組みや意気込みはフレッシュなままだ。

「事前の準備がとにかく大事。しっかりと準備して、自分の力を100パーセント出し切らないと、チャンピオンは獲れない。今まで以上に努力していますし、45歳のファイティングスピリッツを皆さんにお見せしたい」

 イタリア人のクインタレッリは、2002年にシートを求めて来日した。スーパーGTを観て、素晴らしいキャリアのドライバーたちがN-FORCE(マシンや機材を載せ、レースウイークの前戦基地にもなるNISMOの巨大トレーラー)から颯爽と出てくる姿に、憧れた。「オーラがすごかったんですよ」。今、自分がそこにいることが信じられないし、本当にラッキーだと思う。

今季2024年からエースナンバー「23」を背負う千代勝正(右)とロニー・クインタレッリ(左)。4度のチャンピオン経験者であるクインタレッリは、第2線富士の搬入日にカートコースでウォームアップしてからサーキット入りした。この一戦にかける気持ちが伝わってくる。

 あと少しで、栄光に手が届く。千代にとっては初めての、そしてクインタレッリにとっては5度目のチャンピオンは、すぐそこにある。もちろん、ドライバーだけではなく、メーカーであるニッサンにとっても、威信を懸けた戦いだ。

「今年こそ王座を奪取します」と、中島健監督は力強く宣言した。

「我々は、23番というニッサンのエースナンバーを背負っています。そこに対する期待の大きさをつねに感じている。その期待に応えるように、いいレースをしなければならない」

 誰ひとりとして、どのレースでも、気を抜くつもりはない。「もっと速くなりたい」と、千代はストレートだ。「これはドライバーの本能だと思います。そして、プロのドライバーという仕事を続けていくためでもある。つねに期待を越えなくちゃいけない。100を期待されるなら、110の結果を出さなければ、先はありません」

「23号車である限り、チャンピオンを獲らないとみんな満足しませんからね」とクインタレッリ。

「日本の人たちは、みんな一生懸命に仕事に取り組む。僕に対しても、心から本気で話しているのが伝わってくるんです。皆さんには本当に感謝しているし、自分の出せる限りのパフォーマンスで恩返ししたい」

 目の前には、36号車au TOM’S GR Supraが立ちふさがる。昨年の覇者は今シーズンの開幕戦で優勝を果たし、やはりタイトルにもっとも近いと目されている。

「とくに意識はしていない」と千代は言う。だが、「気付くと近くに彼らがいる。切っても切れない関係ではある」とも。昨年の覇者であり、今年のチャンピオン候補がそばにいる。それはつまり、23号車のすぐ近くに王座があることの証だ。

 ニッサンのエースチームとして、敗北が許されない23号車MOTUL AUTECH Z。今シーズンの王座奪取を義務付けられた彼らは、第2戦富士をいかに戦ったのか。23号車と、そこに立ちふさがる最強ライバル、36号車au TOM’S GR Supraのレースを追いながら、ドライバーたちのリアルな肉声に迫る、スーパーGTシネマティック・ドキュメンタリー動画『FORMATION LAP Produced by auto sport』の予告編は、こちらから。

 本編は冒頭のとおり、スーパーGT公式YouTubeチャンネルにて5月31日(金)21時プレミア公開予定だ。

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