長崎経済同友会総会 代表幹事に山川信彦氏(十八親和銀行頭取)

山川信彦氏

 長崎経済同友会は29日、長崎市尾上町の出島メッセ長崎で総会を開き、3人制の代表幹事のうち、任期満了で退任する森拓二郎氏(十八親和銀行会長)に代わり、山川信彦氏(同行頭取)を起用する役員選任案を承認した。東晋氏(長崎放送社長)と佐世保地区の吉澤俊介氏(同行顧問)は留任した。任期は2年。
 森氏は2016年度から4期8年務めた。退任あいさつで、任期中の実績として▽九州新幹線長崎ルート全線フル規格化に向けた佐賀経済同友会への働きかけ(18年)▽長崎、佐賀、福岡3県で一体的な経済発展を目指す北部九州経済圏メガリージョン構想を提言(22年)▽全国44の経済同友会共催による「全国経済同友会セミナー長崎大会」開催(23年)-の三つを挙げた。
 24年度事業計画によると、長崎サミットプロジェクトやSDGs(持続可能な開発目標)、新産業創造などを各委員会活動を通じ引き続き推進する。

◎一問一答/社会機能維持、長崎らしい産業創出

 長崎経済同友会の代表幹事に就いた山川信彦氏。総会終了後の会見での一問一答は次の通り。

 -限られた任期で目に見える成果を出すには。
 総花的な提言にとどまらないよう優先順位を付けることは大事だ。
 一つは社会機能の維持。例えば、市民の足である交通インフラがどんどん無くなっており、強い関心を持っている。介護も人材不足で崩壊しつつある。国の施策は子育て世代に手厚いが、未来に希望を持てない地域に人は住まない。高齢化が猛スピードで進む本県だからこそ、全国に先行し介護分野を支えていくべきだろう。
 もう一つは長崎らしい産業の創出。全国的に注目されているのは半導体ビジネス。九州では熊本県に次いで大きい経済波及効果を得ると試算されているが、それが長崎らしいかというとちょっと違う。洋上風力発電や漁業など海洋関連ビジネスに力を入れていくべきだと思う。

 -とはいえ半導体産業には勢いがある。
 高校や高専の人材が一気に引き抜かれていくのを最も危惧している。半導体ビジネスは非常に市況に左右されやすい。県内の社会機能や育てたい産業に人材が行かない状況になるのは良くない。
 同友会には県内主要企業の経営者や県外に本社を置く企業の支店支社長の皆さんが加入し、考え方や意見に多様性がある。長崎の企業や事業の魅力を発信していく上で、この組織を生かさない手はない。

 -九州新幹線長崎ルートの全線フル規格化には佐賀県が難色を示している。
 佐賀経済界には「このチャンスに整備しなければ未来永劫(えいごう)、佐賀駅に新幹線は止まらない」と危機感を持つ方も多い。ただ、より経済活動にプラスになるからと長崎が一方的に主張するばかりでは進まない。経済団体が腹を割って交流する中で、相手の事情を受け止め、課題にどう協力できるか考えていければ。
 全線フル開業までは時間がかかるが、今できることがある。「移動する手段」の確保と同時並行し、両県経済団体が一緒に観光ルートを整備するなど「移動する目的」となる魅力を創出していけば、「やはり新幹線は必要」という機運につながっていくのではないか。

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