新フォーマット採用、3時間レースで起こる“変化”とは…… 期待されるのはガチンコ勝負と大逆転ドラマの共存【スーパーGT】

SUPER GT2024年シーズンは予選だけでなく、決勝にも新たなフォーマットが採用されている。それが5月4日に行われた第2戦の3時間タイムレース。周回数ではなく終了予定時間到達時の順位が決勝順位となる、耐久レースで採用されているフォーマットだ。

昨年5大会で採用された450kmレースも3時間くらいかかっていたので似たようなものだと当初は思っていたが、いざ蓋を開けてみれば450kmとは全く異なる、これまでになかった戦い模様が繰り広げられた。

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■ピットインタイミングが異なる450kmレース

結果はGT500クラスが、2番手グリッドの3号車Niterra MOTUL Z(高星明誠/三宅淳詞)がスタートでトップを奪い、そのまま最後まで守り切って優勝。GT300クラスは88号車JLOC Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)がポール・トゥ・ウィン。周回数はGT500クラスが117周、距離にして530km超と、450kmよりも2割ほど長くなった。距離が長くなるほど順位は大きく変動しそうなものだが、そうはならなかった。これは450kmレースとの微妙な距離の違いにより、戦略の幅が狭くなったことがひとつ起因している。

450kmレースでは、2度のピットインタイミングがそれぞれチームによって大きく異なっていた。タイヤの摩耗が進みペースが落ちる前にピットインし、その後フレッシュなタイヤでしばらくペースを稼げば、ある程度のジャンプアップが一旦は可能になる。

さらにピットインがセーフティカー導入とうまく重なれば、それ以上の効果もありえる。グリッドが下位のチームなど、そうしたギャンブル的戦略を採ってくるチームがあったからだ。だが第2戦では全チームがほぼ、1回目が1時間後、2回目が2時間後と、同じタイミングでピットインを行った。距離が2割増しになったことで、燃費の面で1スティントあたりの走行距離に幅がなかったのだ。

■よりスポーツ的な要素が強まった

だがそれでレースがつまらなくなったのかといえば、決してそうではない。観戦するファンにとってメリットがあったと思われるのが、レース展開が分かりやすかったことだ。2度のピットインのタイミングはGT500クラスの場合、ともに全チーム10周以内で、実際の順位が分からない時間帯が短かった。また戦略面の幅がなかったことで力と力とのぶつかり合いとなった結果“速かったチームが勝つ”という、長距離レースながらもガチンコ勝負となったことだ。よりスポーツ的要素が強まったことを、プラスに捉えたファンも多かったのではなかっただろうか。

3号車は昨年、一昨年と連続でランキング2位を獲得している強豪チーム。その3号車を破り昨年チャンピオンを獲得した36号車au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)も、開幕戦優勝で最重量ハンデを背負いながらしぶとく4位フィニッシュ。第2戦がラッキー要素の少ない、力と力との勝負だったことは結果にも表れている。

ただし第2戦がこうなったのは、セーフティカー導入などの波乱が何もなかったから。もしもセーフティカーが入れば、そのタイミングや長さに応じそこから戦略の幅は広がり、逆転劇の可能性が生まれていただろう。

今週末(6月2日決勝)に鈴鹿サーキットで行われる第3戦も同じく3時間レースだが、鈴鹿は富士とはコース特性も異なるし、現時点の予想では雨の可能性もあり、同じような展開になるとは限らない。つまりガチンコ勝負、大逆転ドラマ、両方が期待できるということになる。今回も3時間、たっぷりと楽しめそうだ。ついでに何が起ころうとも時間通りにレースが終わるというのは、原稿締め切り時間が決まっている我々にとっては安心材料。個人的にはそこも、より楽しめる要素だ。

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