3被告に禁錮2年 那須雪崩事故 「不注意による人災」と無罪主張退け実刑

判決公判のため宇都宮地裁に入る那須雪崩事故の遺族ら=30日午後0時35分、宇都宮市小幡1丁目

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した那須雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭ら3人の判決公判が30日、宇都宮地裁で開かれた。瀧岡俊文(たきおかとしふみ)裁判長は3被告の過失や雪崩発生の予見可能性を認定。「雪崩という自然現象の特質を踏まえても、相当に重い不注意による人災」などとして、3被告に禁錮2年(求刑禁錮4年)の実刑判決を言い渡した。「雪崩は予見できなかった」とした弁護側の無罪主張を全面的に退けた。

 有罪判決を受けたのは、当時の県高校体育連盟(県高体連)の登山専門部委員長で講習会の責任者だった猪瀬修一(いのせしゅういち)(57)、副委員長で死亡した8人がいた1班の引率者だった菅又久雄(すがまたひさお)(55)、2班を引率していた渡辺浩典(わたなべひろのり)(61)の3被告。

 雪崩発生を予見できたかや訓練範囲の明確な設定などが公判の争点だった。

 瀧岡裁判長は、現場周辺に少なくとも30センチの新雪が確認され、上部斜面では客観的に雪崩発生の危険が存在していたと説明。「歩行訓練を行えば雪崩の急襲に巻き込まれる危険が懸念される状況だった」とした。

 3被告は積雪期の登山や指導経験などから、「雪崩の発生を容易に予見できた」と認定。那須岳登山から深雪歩行訓練へと漫然と計画を変更し、安全を確保するための明確な訓練範囲を定めず、周知もしなかったとして「危険回避の措置を講じず、義務に違反した」と判示した。

 瀧岡裁判長は量刑理由で「部活動の死傷事故としては類をみない大惨事」「相当に緊張感を欠いたずさんな状況で漫然と実施された」などと言及し、実刑は免れないとした。

 弁護側は、当時の積雪は15センチ程度で大量と認識しておらず、訓練範囲を明確に定め、生徒や講師に説明したと主張したが、退けた。

 判決によると、17年3月27日朝、3被告は前夜からの積雪を踏まえ、講習内容を深雪歩行訓練に変更。新雪が積もった急斜面で雪崩発生を予想できたのに、情報収集や安全区域の設定、的確な周知をせず、雪崩に巻き込まれた8人を死亡させ、5人にけがを負わせた。引率の菅又、渡辺両被告は危険回避の明確な指示や安全確保の措置も怠った。

 地方公務員法で教員は執行猶予を含む禁錮以上の刑に処せられると失職する。

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