8人死亡の那須雪崩事故「予見可能性」どう判断するか 業務上過失致死傷罪、教諭ら3人にあす地裁判決 求刑禁錮4年、弁護側は無罪主張

宇都宮地裁

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭ら3人の判決公判が30日、宇都宮地裁(瀧岡俊文(たきおかとしふみ)裁判長)で開かれる。検察側は「過失や被害結果は重大」などとして3被告に禁錮4年を求刑。一方、弁護側は一貫して無罪を主張し、全面対決した。初公判から約1年7カ月。地裁が雪崩発生の予見可能性や過失の有無などをどう判断するか注目される。

 在宅起訴されたのは、当時の県高校体育連盟(県高体連)の登山専門部専門委員長で講習会の責任者(57)、副委員長で死亡した8人がいた1班の引率者(55)、2班の引率者(61)の3被告。

 検察側は、当時の現場周辺の写真や積雪データ、雪氷の専門家の証言などを基に、現場の斜面に30センチ以上の新雪が積もり、雪崩が発生しやすい状況だったと説明。雪山の知識や経験のある3被告は「危険性を容易に知り得た」と主張した。

 また3被告が那須岳登山から深雪歩行訓練へと漫然と計画を変更し、安全を確保するための明確な訓練範囲を定めず、周知徹底も怠ったと指摘。「注意義務を尽くせば事故を防げたのは明らか」と強調した。

 一方、弁護側は事故当時の積雪は15センチ程度で大量の積雪と認識していなかったと主張。その上で、安全なスキー場のゲレンデと樹林帯を訓練範囲として明確に定めて参加者に説明したとし、「漫然と計画変更はしていない」と反論した。訓練変更に必要な情報収集については、目視や体感で雪や風の状況などを確認したと述べた。

 3被告は「雪崩は起きないと考えた」などとし、雪崩の予見可能性をそれぞれ否定し、無罪を訴えた。

 刑事裁判は22年10月25日に始まり、17回の審理で今年2月29日に結審した。

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