『HUNTER×HUNTER』の再開近し? 忘れられない「衝撃的だったキャラの死」を振り返る

『HUNTER × HUNTER』

2024年5月1日に、漫画家の冨樫義博氏がXで『HUNTER×HUNTER』のペン入れ原稿写真を投稿して以来、約1か月に渡ってペン入れ完了の報告が続いている。同作は『週刊少年ジャンプ』2022年12月26日発売号に掲載された第400話を最後に連載がストップしているが、5月26日の投稿で第408話のペン入れが完了。本誌で進行中だった「王位継承編」の続きを読める日が近いのではないかと、世界各国のファンからは期待の声が絶えない。

『HUNTER×HUNTER』にはこれまで数え切れないくらいの魅力的なキャラが登場してきた。推しキャラがいるという人も多いだろう。だが、同作では人気キャラであろうとも突然の死が訪れることも珍しくなく、読者に衝撃を与えてきた。

今回は『HUNTER×HUNTER』再開に際し、これまでの物語で衝撃的だったキャラの死を振り返ってみよう。

■えげつない死に方をしたポックル&コルトピ

作中で最も残酷な方法で殺された人物といえば、ポックルではないだろうか。彼は物語序盤「ハンター試験編」で初登場し、ゴンとともに第287期合格者となった。その後、彼は「キメラ=アント編」で放出系の念能力を身に着けた幻獣ハンターとなって再登場する。

目的はキメラ=アントの調査と討伐で、試験で一緒だった蜂使いのポンズらとキメラ=アントの犠牲国であるNGLに乗り込んで潜伏していた。しかし、一行はザザン隊によって壊滅してしまう。念能力者の集まりが一発でやられたこのシーンは、キメラ=アントの強さを読者の目に焼き付けるものだった。

餌として本部に連れていかれた彼は、骨の山に隠れて何とか逃げ出そうとするが、女王直属護衛軍の一人であるネフェルピトーに見つかって万事休す。生きたまま脳を操られ、念能力の情報を引き出されてしまう。脳みそをいじるときの「クチュ…」という擬音、「あっあっ」と言いながらよだれを垂らして目を見開くポックルは、少年誌の描写とは思えないほどトラウマものの表情だった。

こうした馴染みのあるキャラの突然の退場は敵味方関係なく訪れる。盗賊集団・幻影旅団のメンバーで、具現化能力を使ったコピー能力を持つコルトピの驚くほどあっさり描かれた死もなかなかにショッキングである。

彼は、仲間と行動しているときに1人で公衆トイレに行き、そのまま中で待っていたヒソカに首を切断されてしまう。これは元旅団員だったヒソカが団員全員を殺すことを宣言したすぐあとの展開で、あまりにもあっけなく、あまりにも無残なその死に様により、読者にヒソカの凶暴性を再認識させたシーンだ。

さらにその後、同じく旅団メンバーのシャルナークがコルトピの首を持ってトイレから出てきたヒソカと戦闘するも、戦闘力に差のあるシャルも殺されてしまう。血だらけでカラスに突かれている彼の亡骸もまた切ないものだった。

■仲間のために命を張ったパクノダ&ウボォーギン

幻影旅団は冷酷無比な集団というイメージが強いが、仲間意識が強く団結力がある。特に初期メンバー9人はケンカしつつも絆が深く、魅力的なキャラが揃っていた。

そんな旅団で最初に命を落としたのはウボォーギンだった。高い戦闘力と強靭な肉体を持つウボォーを殺したのは、クルタ族の復讐に生きるクラピカ。

クラピカは彼を誘い出し、能力を強制的に無効化する”束縛する中指の鎖”で縛り仲間の情報を吐かせようとした。しかしウボォーは口を割らず、「殺せ」と答えるだけ。怒りに震えたクラピカが、制約を破ると鎖が心臓を握り潰する”律する小指の鎖”を打つも、なおもウボォーは迷うことなく「くたばれバカが」と言い、鎖に心臓を潰されてしまう。念を覚えたてのクラピカの強さにも驚くが、ウボヴォーの潔さが印象に残るエピソードだ。

さらに、同じく幻影旅団メンバーであるパクノダの死も衝撃的である。ウボォーの死後、団員はクラピカ捜索に動き、クラピカは団長であるクロロ=ルシルフルの拉致を目論んでいた。ゴンとキルアを人質に取った旅団は、パクノダの能力で2人からクラピカの情報を読み取る。

同時にクラピカもクロロの拉致に成功し、彼に“律する小指の鎖”を刺し行動を制御することで、仲間との交流禁止を告げた。

またクラピカはクロロの拉致後にパクノダを電話で脅し、1人で人質交渉に来るように伝える。パクノダは、「旅団に危機が迫ったら団長でも切り捨てろ」という旅団のルールよりも団長の命を選び、クラピカに従う。そして、団長開放の代わりにゴンとキルアを開放し、情報を漏らさないというクラピカとの "律する小指の鎖”の制約を受け入れたのである。

開放された団長は旅立ち、彼女は自分の記憶を他人に見せる”記憶弾”を初期メンバーに打ち込む。これによりクラピカの情報は団員に知れ渡り、制約を破ったパクノダはその場で息絶えたのだった。

彼女が伝えなければ、何も知らない団員は仲間割れする可能性が高い。つまりパクノダは、旅団を守るために自らを犠牲にしたのだ。「お願い 私で終わりに…」という最後の言葉が切ない。

■涙なしでは見られない…蟻として生まれ人として死んでいった“王”メルエム

最後は、作中トップクラスの強さを誇り、人類を恐怖のどん底に突き落としたキメラ=アントの王・メルエム。その圧倒的な強さに絶望感を覚えつつも、彼の威厳に満ちた姿と生きざまは非常にカッコよかった。そんなメルエムの死は、名エピソードとしても名高い。

鍵を握るのは、メルエムが暇つぶしにと盤上競技に興じていたときに出会った全盲の軍儀世界チャンピオン・コムギ。これまであらゆる勝負で負けなしだったメルエムは、コムギに手も足もでないことに苛立つが、次第に彼女に対して言葉にできない感情を抱き、価値観にまでも変化が起こり始める。

とはいえ、彼の本質は王であり、自分の中に芽生えた感情に大いに動揺した。しかし、コムギに名前を聞かれても答えられなかった時から、「余はなんのために生まれてきたのだ」と存在意義にも疑問を抱き始めていく。

その後、ハンター協会会長であるネテロとの一騎打ちになったメルエムは、激戦の末に、猛毒を食らう。死を悟った彼が取った行動は、命尽きるときまでコムギと過ごすことだった。

このときのメルエムはもはや独裁者ではなく慈愛に満ちた王。そして、ひたすらにコムギを求める1人の男だった。

メルエムは、軍儀を打ちながら自身が侵された毒が伝染することを告げ、「最期を…コムギ お主と打って過ごしたかった」と初めて気持ちを吐露する。それを聞いたコムギは、「ワダす…今…とっても幸せです 不束者ですが お供させてください」と笑顔を見せた。

毒が回り視界が途絶えるように、真っ暗な数ページにセリフだけが描かれて演出されたこの後のシーン。気持ちが通じ合ったこの瞬間、2人は「自分はこの時のために生まれてきた」と人生の意味を見出し、軍儀を打ちながら幸せに包まれて息絶えるのだった。これまでの全ての伏線を回収する一連の流れは素晴らしく、消えゆく2人の掛け合いは涙なしでは見られない美しすぎるものだった。

このほかにも、カイト、ゴトー、ネテロ会長など魅力的なキャラが次々と衝撃的な死を遂げる。だが、それも同作の良さであり、だからこそハラハラドキドキできるのだ。本編は現在、暗黒大陸への渡航中に行われる「王位継承編」の真っ只中。登場キャラは数百名にもおよぶ。生き残れるのは誰か、物語の続きを楽しみに待ちたい。

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