ゴルフブームを実感 私的“行動変容”/小林至博士のゴルフ余聞

暑い夏でもゴルフは楽しい(写真はイメージ)

ゴルフシーズン本番である。私は、短パンで、汗をかきながらプレーするゴルフが大好きである。真夏だってやる。それにしても、予約を取るのが大変だ。私は会員権を持たない、パブリックゴルファーである。そのため、PGMやアコーディアのコースでプレーする機会が多いが、週末の予約は熾烈な争奪戦だ。PGMの月次営業実績を見ても、来場者は前年同月を上回っている。ゴルフブームは続いているのだ。

コロナ禍の三密回避で、ゴルフを新たに始めたり、しばらく離れていた人が再開したりして、右肩下がりだったゴルフ人口が増加し、コロナバブルの様相を呈したことは広く知られており、以前、小欄でも取り上げた(2022年8月30日付「ゴルフ人気はホンモノかもしれない」)。

昨年5月にコロナが5類感染症に移行し、日常が戻ったことで他のレジャーに人が流れ、ブームの反動減に見舞われるとの予想もあったが、週刊ダイヤモンド5月18日号によれば、2023年の来場者数は、2000年以降で過去最多となった2022年とほぼ同じ約1050万人。コロナ禍前、2019年の約930万人と比べて1割増である(経済産業省の特定サービス産業動態統計調査による)。予約を取るのが困難なのも道理である。

ゴルフ用品市場も好調だ。矢野経済研究所の調査によると、2022年のゴルフ用品市場規模は前年比12%増の3092億円。3000億円を突破したのは2001年以来のことである。2023年も堅調に推移する見込みだという。

余暇産業の活況は、可処分所得の増加を示す。つまり、長い雌伏の時を経て、ようやく経済が上向いているということで、国民のひとりとしては喜ばしいことだ。一方、私はいちゴルファー、消費者であり、サービス提供者ではない。安くて、空いている方がありがたいのだ。

これだけ予約が取りにくくなってくると、会員権の購入も検討してみるかという気になって調べてみると、同じように考えている人は多いようだ。会員権売買を行う桜ゴルフのウェブサイトで会員権相場を見ると、コロナ前よりも全国平均で25%、関東では36%も上昇している。

予約が取れない時はシミュレーターでしのぐという手もある。これまた同じことを考える人は多いようで、近年、私の住む地域でも駅前や幹線道路沿いなどあちこちにインドアゴルフの看板が見られるようになった。船井総研の調査によれば、コロナ前の2019年比で46%増だという。

実は、私も近隣のインドアゴルフの会員になり、しばしば利用しているが、これがなかなかいい。測定器で弾道やクラブの挙動が数値化される練習は新鮮で、堂々巡りのゴルフから抜け出し、何かをつかめるかもしれないと期待している。いずれにせよ、長い冬の時代、そしてコロナ禍を経て、多様なニーズに応えられるようになったゴルフ産業、しばらく好調が続くように思える。(小林至・桜美林大学教授)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン