開雲堂(弘前) 145年の歴史に幕/買い物客 別れ惜しむ

閉店日の営業を終えシャッターを下ろす従業員=31日午後5時50分ごろ、弘前市土手町

 創業から145年にわたり地域に愛されてきた青森県弘前市土手町の老舗菓子店「開雲堂」が31日、閉店した。多くの買い物客が絶え間なく訪れ、名店との別れを惜しんだ。

 同店は1879(明治12)年創業。弘前藩の旗印をかたどった「卍最中(まんじもなか)」や白皮の丸い最中「有明」など、市内外に知られる菓子を多く手がけた。

 閉店発表後は最中など限られた菓子数種類の販売となっていたが、この日も午前9時半の開店を前に約50人の買い物客が行列を作り、思い出の味を買い求めた。閉店時間となった午後5時を過ぎても客足は途絶えず、約1時間営業を延長。最後はいつもと変わらない様子で、午後6時前にシャッターが下ろされた。

 同市在住の花田悦子さん(70)は「歴史ある菓子店がなくなるのは本当に残念。またどこかで売ってくれたらという思いでいっぱい」と寂しげに話した。

 同店は1928(昭和3)年に建てられた銅板の外壁が特徴の看板建築で、市が2010年に「趣のある建物」、19年に景観重要建造物として指定している。市都市計画課の今井郁夫課長は閉店後も指定を外すことはないとし、「市民や観光客の皆さんのため、建物は街のシンボルであってほしい」と述べた。

 31日に閉店したが、6月3~7日、卍最中と有明のみ販売する。

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