〈詳報〉鹿児島県警、前生活安全部長を逮捕 退職後に職務上知りえた2個人の情報漏えい容疑 別の捜査情報流出事件調査中に発覚 「改めて深くおわび」…本部長コメントは代読

前生活安全部長逮捕の概要を説明した後、謝罪する西畑知明警務部長=31日、県警本部

 鹿児島県警は31日、職務上知り得た秘密を職を退いた後に漏らしたとして、3月まで県警本部生活安全部長を務めた元警視正、職業不詳の男(60)=鹿児島市紫原5丁目=を国家公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕した。県警は「捜査に支障がある」として認否を明らかにしていない。最高幹部の一人である生活安全部長経験者の逮捕は極めて異例。

 逮捕容疑は、県警を退職した直後の3月下旬、鹿児島市内で、生活安全部長在任中に入手した警察情報が印字された複数の内部文書を第三者に郵送して閲読させ、秘密を漏らした疑い。

 県警によると、警察情報には現職警察官1人の氏名、年齢、階級などと、一般人1人の氏名、年齢が含まれていた。警察情報とは別に、警察関係者の氏名や連絡先を記した文書も同封していた。県警は一般人に謝罪した。

 捜査資料とみられる文書が流出した問題を巡り、県警は3月18日、「100件を超える事件資料が外部に漏れた可能性が高い」と発表。捜査情報を第三者に漏らした地方公務員法(守秘義務)違反容疑で4月、巡査長の男を逮捕(同罪で起訴、懲戒免職処分)した。

 刑事、警務部を中心に捜査、調査を進める中で、捜査資料流出とは別に今回の容疑が発覚した。県警は元巡査長との共犯関係はないとしている。漏えい先が同一かどうかは「明らかにできない」とした。第三者と金銭の授受はなかったとみられる。

 前生活安全部長は瀬戸内署長や鹿屋署長を経て警視正に昇進した2021年、鹿児島西署長に就任。22年3月に生活安全部長に就き、24年3月25日付で警視長に昇進、同日付で県警を退職した。県警の警察官は地方公務員として採用されるが、警視正以上になると国家公務員になる。

 今年4月以降、県警の現職警察官3人が逮捕されている。逮捕後の記者会見で西畑知明警務部長は「極めて遺憾で改めて深くおわびする。より抜本的で網羅的な防止策を進める」とする野川明輝本部長のコメントを代読した。

 県公安委員会の増田吉彦委員長は「全容解明に努め動機を明確にしてほしい」。鑪野(たたらの)孝清委員は「非常にショック。生半可ではなく腰を据えた再発防止策を要請する」とコメントした。

2020年以降の鹿児島県警警察官の逮捕事案

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