古文書400点ネット公開 富山県南砺市の善徳寺

インターネットでの古文書の公開を発表する黒川理事長(右端)や亀渕輪番(右から2人目)ら

 富山県南砺市の城端別院善徳寺は31日、県指定文化財の古文書のうち400点を、インターネット上で公開を始めた。同寺は火災に遭ったことがなく、創立以来の史料が膨大に残る。NPO法人善徳文化護持研究振興会(善文研、黒川紘紀理事長)がデジタル化し、解読作業を進めてきた。2027年度までに約9千点の公開を目指す。同寺によると、民間機関としては全国初の取り組み。同日、記者会見を開いて発表した。

 善徳寺は、3度の移転を経て1559年に現在地に構えた。加賀藩や東本願寺との連絡を担う触頭(ふれがしら)を担い、歴代門主・藩主の書状をはじめ、藩の寺社奉行や東本願寺家老からの通達など多くの貴重な文書が残る。

 善文研は、2020年度から解読に着手。43人の解読員に加え、23年度からはAI翻訳も併用して県指定の9309点をスキャンし、10万枚に上る画像にデジタル化した。

 31日に公開したのは400点、画像にして2400枚分で、画像とくずし字を現代の日本語文字に直した翻刻文などを掲載した。近く150点を追加し、年度内にはさらに2千点を追加でアップする。織田信長といった歴史上の人物は除き、不名誉な記録や差別などプライバシー侵害に当たると判断した文書については、非公開や閲覧制限の対象とする。

 会見で、善徳寺の亀渕卓輪番は「公開は大きな意義がある。寺の歴史が明らかになっていくことを願う」と述べた。

 同寺のホームページに「古文書収蔵庫」のコーナーを設けた。解読作業のペースを早めるため、ボランティアを募集している。24~29年度の事業計画で3千万円の不足が見込まれるため、寄付も募る。

© 株式会社北日本新聞社