【コラム・天風録】わたしの〈いけん〉

 子や孫を持つ身ならドキッとしそうな、小学1年生の詩がある。〈わたしがなんかいうと/おかあさんは/「くちごたえをしたらいけません」とおこります/せんせい/くちごたえってなんですか/わたしは/いけんをいっているつもりです〉▲神戸の小学教員だった鹿島和夫さんが、受け持ちの1年生とやりとりした交換日記にあった詩である。鹿島さんが87歳で昨年亡くなり、追悼で出版された日記の選集「一年一組せんせいあのね」(理論社)から引いた▲曇りのない目は、鹿島さんにも容赦ない。〈わたしのせんせいは/てつぼうを/10かいさせます/せんせいは/いっかいもやりません〉。どう答えたのだろう▲大人になるうちに忘れてしまうが、誰しも子どもだった。その頃の気持ちを書き留めておけば、読み返せたはず。せめて新刊選集「せんせいあのね」(西日本出版社)も併せ読めば、昔の自分に出会えるかもしれない▲国連の「子どもの権利条約」を日本政府が批准してから、この春で30年を迎えた。子どもの意見尊重は、条約4原則の一つである。小さな〈いけん〉を受け止める姿勢が保護者にも教員にも欠かせない。くちごたえをしたらいけません。ax

© 株式会社中国新聞社