熱中症減、観光客は増...「涼しい野馬追」手応え

 相馬野馬追執行委員長の門馬和夫南相馬市長は31日、南相馬市役所で会見し、初の5月開催となった今年の国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」(25~27日)について、人馬ともに熱中症に関する救護所の対応件数などが7月開催の昨年に比べて大幅に減少したと発表した。一方で、3日間の観光客数は昨年を上回る13万500人となり、門馬市長は「日程変更により一定程度の負担が軽減された。正直ほっとした」と手応えを語った。

 野馬追の開催期間中、観測点のある相馬市の最高気温は3日間ともに30度を下回った。今年の救護所の対応のうち、観客などの熱中症への処置は18件で、昨年の83件の4分の1以下にとどまった。馬への診療件数は25、26日の2日間で38件で昨年の112件より大幅に減少し、内容もほとんどが熱中症を予防するための対応だったという。

 涼しさが功を奏したか、神旗争奪戦などが行われた26日の本祭りでは、雲雀ケ原祭場地の観覧者が3万3000人、沿道の観覧者が4万人となり、3日間の観光客数を昨年より9100人増やす結果につながった。夏休み期間からの日程変更で、みこしの担ぎ手などの確保も課題とされていたが、地元企業などの協力で大きな支障はなかった。

 日程変更の影響については、副執行委員長を務める立谷秀清相馬市長は同日、市役所で開いた会見で「今回の野馬追についての報告をじっくり検証し、来年度に向けて対策を練っていきたい」と述べた。今後は執行委が農作業や学校行事との関係などについて調査を進め、国指定重要無形民俗文化財として持続可能な運営について協議する見通し。

 騎馬武者にとっても5月開催は歓迎されており、小高郷騎馬会の松本充弘会長は「5月末を基礎に、出場者や関係者みんなでもっといい環境が考えられるはずだ。相馬野馬追の未来は間違いなく明るいものが続くだろう」と話した。

 騎馬武者、382騎に増加

 門馬市長は、今年の野馬追の出場騎馬数が昨年より21騎多い382騎だったと発表した。出場騎馬数の増加は2年連続で、門馬市長は「新型コロナウイルス拡大による縮小開催前の400騎を目指し、裾野を広げていきたい」と述べ、伝統を守りながら出場を呼びかけていく考えを示した。

 出場騎馬数の推移は【グラフ】の通り。東日本大震災前の2010年は480騎が出場した。11年は震災と東京電力福島第1原発事故の影響で活動が制限されたが82騎が出場して伝統を継承した。12年以降はおおむね400騎台をキープしてきたが新型コロナウイルス禍による縮小開催を経た22年は337騎に減少した。

 23年は361騎で、前年より24騎の増加だった。今年は21騎の増加で、400騎に近づいた。執行委員会は、5月の日程変更などを好材料にしたい考え。

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