鹿児島県警は31日、職務上知り得た秘密を職を退いた後に漏らしたとして、3月まで県警本部生活安全部長を務めた元警視正、職業不詳の男(60)=鹿児島市紫原5丁目=を国家公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕した。県警は「捜査に支障がある」として認否を明らかにしていない。最高幹部の一人である生活安全部長経験者の逮捕は極めて異例。
◇解説=徹底検証急ぎ、県民納得の対策を
鹿児島県警の最高幹部だった一人が内部情報を第三者に漏らしたとされる事件は、逮捕直後とはいえ、動機や目的が全く明らかにされず、県警が説明責任を果たしたとは言えない。共犯関係にはないとしながらも、4月には別の元巡査長が情報漏えい容疑で逮捕されたばかりだ。「県警の底が抜けた」と言っても過言ではない。徹底検証を急ぎ、県民が納得できる対策を打ち出す必要がある。
4月以降、不同意わいせつと盗撮の疑いでも現職警察官が逮捕された。野川明輝本部長は30日の県議会代表質問で「コロナ禍で人間関係が希薄になったため」と一因を挙げたが、県民からは「本気で言っているのか」とあきれる声が聞かれた。今回の逮捕はその発言翌日の出来事で、自浄能力に疑問符が付く。
逮捕後の記者会見に野川本部長の姿はなく、コメントが代読された。県民はおろか、県警内部からも「これまでの県警の謝罪姿勢こそ現場の士気を下げている」という不満の声が漏れる。おごりはないか。これ以上、県民の失望を広げるべきではない。