本格ロシア料理を堪能 「偏見だけで拒否せず、文化通して知ってほしい」 兵庫・神戸にカフェオープン

このたび、二宮神社(神戸市中央区)のすぐ近くに、ロシアカフェ神戸「ミーシカ」がオープンしました。店名の「ミーシカ」は、ロシア語で「子グマ」を意味します。

【写真】オーナーの手描き内装がかわいい ロシアカフェ神戸「ミーシカ」店内

同店のオーナーを務めるのは、神戸市垂水区出身という生粋の神戸っ子・古池麻衣子さんです。

おもえば、神戸モロゾフの生みの親であるモロゾフ家が経営した洋菓子店「コスモポリタン」が神戸三宮センター街の喫茶店を閉じたのは2006年のこと。また、1951年創業のロシア料理店「バラライカ」は2023年に閉店。

本格的なロシア料理が食べられるお店が神戸からなくなったことに寂しさを覚えていた人にとって、「ミーシカ」のオープンはうれしい報せなのではないでしょうか。

扉を開くと、店のシンボル「子グマのミーシカ」が出迎えます。店内はロシアの伝統模様「ホフロマ模様」をアクセントに、ピンクを基調としたかわいらしい内装で統一されており、それらはすべて古池さんが手作業で描き、色を塗って仕上げたといいます。

同店でひときわ目をひくのは、ロシアを代表する陶磁器「グジェリ」や「インペリアル・ポーセレン(ロモノーソフ磁器)」。ソ連時代のアンティーク食器など、華やかなカップが数多くそろっています。

メニューにもこだわりが詰まっています。ロシア南部に位置するクラスノダール地方産の香り高い紅茶「アゼルチャイ」や、ビタミンとミネラルをたっぷり含んでいることから健康維持のために愛飲されてきた「イワン・チャイ」、コーヒーの代用品としてお馴染みの「チコリコーヒー」など、ロシアのさまざまなハーブティーを楽しむことができます。

同店では、オリジナルドリンクも提供しています。ビーツとホエイ(乳清)をソーダで割った色鮮やかなドリンク、その名も「赤の広場」です。

氷になったビーツとホエイが少しずつソーダに溶けていき、味の変化が楽しめる清涼感たっぷりのドリンクは、美容効果も抜群。これからの暑い季節にもぴったりです。

ちなみに、「赤の広場」にウォッカを加えたオリジナルカクテル「おそロシア」も。飲みやすさとおいしさ、遊び心を兼ね備えた危険なカクテルです。

イタリア・バチカン市国に関心を持った古池さんは、イタリアを何度も訪れるなかでロシアを旅行してみたところ、ひと目惚れしたのだとか。当時、初めての訪ロでいきなりトラブルに巻き込まれましたが、通りかかったロシア人に助けられ、その後も数々の素敵な出会いが。どこに行っても気さくに声をかけてくるロシア人に、うれしい驚きを感じたと話します。

もともと料理好きだったという古池さん。日本では本場ロシアの味を楽しめる場所がないと感じ、独学でロシア料理を研究。試作を重ねて独自のレシピを生み出しています。

生地を丁寧に発酵させて作るピロシキは、キャベツ入り、タマゴとひき肉入りなどの数種類を取りそろえており、店内のオーブンで焼きあげています。そのほか、「ボルシチ」「ぺリメニ(ロシア風水餃子)」、カッテージチーズを使用するロシアの定番デザート「スィローク」も手作りです。

2022年からのロシアによるウクライナ侵攻も相まってそのイメージは悪化の一途をたどり、この時期の開業には勇気もいるはず。しかし、古池さん自身は不安を感じておらず、「今後は音楽イベントなど文化サロン的な場所として、また、ロシア製のお茶やハチミツ、お菓子などを販売するアンテナショップとしても利用できる店舗にしたい」と抱負を語りました。

さらに、古池さんはこのようにコメントを残しました。

「現在、ニュースなどではロシアの悪いイメージがあふれていますが、私が知るロシアやロシア人はとてもあたたかくて明るく、思いやりにあふれています。ヨーロッパと比べると、ロシア人と日本人は似ているところもあり、親近感を覚えます。自分が『おいしい』『かわいい』と思うもの、好きなものを通して、ロシアの良い面も知ってもらえたらと思います。偏見だけで拒否せずに、どんなところなのか、ぜひ体験してみてください」(古池さん)

◆文=樫本真奈美
専門はロシア文学。神戸市外国語大学博士課程満期修了。現在、同志社大学講師。著書に『ロシアの物語空間』(共著、水声社、2017年)、編訳書に『2時間で逢える日本ーウラジオストク』(晧星社、2020年)、訳書『ロシアからブロードウェイへ オスカー俳優ユル・ブリンナー家の旅路』(群像社、2023年)

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