消失した海藻の人工栽培に成功! 長崎の水中自然観察家・中村さん 磯焼け改善に期待 

砂地で育成しているアカモク=福田本町沿岸(中村さん提供)

 長崎市の水中自然観察家、中村拓朗さん(39)が西彼南部漁協福田支所と協力し、同市福田本町の沿岸で消失した大型の海藻アカモクの人工栽培に独自の方法で成功した。食害などにより藻場が消失することで沿岸漁業に深刻な影響をもたらす「磯焼け」の改善の一手となることが期待される。
 アカモクは全長3~10メートルになる国内最大級の海藻。日本全域に分布し、春から初夏にかけて巨大な藻場を形成。魚のえさや生息・産卵場所にもなる。近年は気候変動などの影響で食害が深刻化し、福田本町の沿岸では2021年に完全消失した。

中村拓朗さん

 中村さんは水中ガイドなどの傍ら、同漁協と磯焼けの一因とされるウニの駆除などを実施。22年から同漁協福田支所と協力し、長崎大水産学部の桑野和可教授の助言を受けながら海中でのアカモク栽培に挑戦。費用は自身のユーチューブチャンネルの収益から捻出した。
 当初は藻食魚の食害で失敗が続いたが、昨年5~12月にアカモクの卵(幼胚)を海に浮かべて一定育成。その後、藻食魚が寄り付きにくい砂地に移動して、今年4月初旬に卵が入った「さや」に当たる器官「生殖器床」を収穫。磯焼けした場所に移し、卵を採取した。採取分以外に数百万粒以上が海底にまかれており、そのまま成長すれば自然栽培につながる可能性もある。
 アカモクの人工栽培はこれまで、天然のアカモクを別の場所から持ってくる方法などがあったが、今回の方法は「さや」が1株でもあれば可能で、継続的に取り組める。県内の漁業者からの視察もあっている。
 中村さんは「アカモクは近年健康食品としての知名度も上がっており、新たな水産資源としての活用も見込まれる」と期待を寄せる。ここまでの経緯や方法はユーチューブチャンネル「スイチャンネル」で公開している。

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