傷があるとむしろ良い!? 農家が教える梅シロップの絶品レシピ

梅シロップ作りに向く傷ありの青梅【写真:こばやしなつみ】

梅仕事の季節がやってきました。しかし、今年は各地で不作が報告されています。そこで、茨城県で兼業農家を営み、少量多品種の米や野菜作りに取り組むこばやしなつみさんが、傷ありの梅を有効活用できるレシピを紹介。長年、農家として働く義母直伝の絶品梅シロップです。

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貴重な梅を余すことなく味わいたい2024年の梅事情

各地で梅の収穫時期を迎えていますが、今年は暖冬などの影響で、例年よりも収量が少なくなる見込みです。

今年の梅の木に実っている、わずかな青梅【写真:こばやしなつみ】

茨城県の水戸で暮らす我が家の庭にも梅の木が7本ありますが、豊作だった昨年に比べると実のつきが悪いです。市場での取引価格が上がることを考慮すると、貴重な梅を余すことなく使いたいところ。

今年の梅仕事には、梅シロップを仕込むのがおすすめです。

収穫できる梅の実は、特秀品ばかりではない【写真:こばやしなつみ】

傷があるとむしろ良い? B級品や訳あり品も活用しやすい「梅シロップ」

梅シロップは、梅自体をまるごと食べる梅干しとは違い、梅のエキスを抽出して作り出すものです。よって、生育過程で傷がついてしまったり、収穫時に梅同士がぶつかり合って割れてしまったりしたB級品や訳あり品も活用できます。

30年以上欠かすことなく梅仕事をしてきている義母は、梅のエキスをより効率的に出すために、わざと爪楊枝やフォークで梅の表面に傷をつけています。そうして傷をつけた梅で、砂糖やハチミツに漬けて梅シロップ作を。もちろん、もともと割れや傷のある梅も、梅シロップ作りに活用しています。

梅シロップや梅干しに向く生梅とは? 状態と成熟度で使い分けるのがポイント

レシピ別に生梅を選別するなら、見分けるポイントは2つあります。梅の状態と成熟度です。

傷がなく最も状態が良いA級品は梅干しや梅酒に。傷ありのB級品は梅シロップに向いています。また成熟度は、硬い未熟な青梅、黄色がかってきた半熟梅、やわらかくオレンジ色がかった完熟梅と、色で見分けることが可能です。

我が家の梅シロップ作りには、未熟な青梅を使います。その理由は、熟したやわらかい梅を使うと、傷がついた部分などから果肉がこぼれ、シロップが濁ってしまうからです。梅酒も同様の理由で、青梅で漬けたほうが濁りを防げると思います。

一方で、梅干し作りに使う生梅は、成熟度に伴う“硬さ”をお好みで選べば良いと思います。カリカリ系がお好きであれば青梅、とろりとした果肉を味わいたいなら完熟梅を使いましょう。

配合がシンプル! 梅1:砂糖1で作る梅シロップの作り方

今年、梅仕事に初挑戦するなら、作業工程がシンプルな梅シロップから始めてみるのはいかがでしょうか。仕込んでから2週間程度で飲み始められて、長期間寝かせる必要がないのもうれしいポイントです。

また、3~4L容量などの大瓶で大量に作らなくても、梅シロップはおいしくできます。なので、消毒作業や保管時にも扱いやすい、900ml程度の小瓶で漬けるのもおすすめです。

梅シロップの味の決め手は砂糖の種類です。シロップの濃厚さや口当たりが変わるので、自分好みのシロップにするならどんな砂糖が良いのか考えてみましょう。

味の傾向としては、白砂糖や氷砂糖を使うと、すっきりとした味わいになります。三温糖やハチミツは、こっくりとした濃い味わいに仕上がるでしょう。水戸に移住してきてから8年間、私は毎年、手元にある砂糖類を駆使して梅シロップを仕込んできました。その経験から、今のところ氷砂糖とハチミツで漬け分けるところに落ち着いています。

梅シロップ作りをおすすめするのには、もうひとつ理由があります。それは、義母から受け継いだ梅シロップの作り方には、煮詰める工程がないこと。漬けるだけなので、本当に簡単に作ることができます。

900ml容量の瓶に、各350gの青梅とハチミツを仕込んだ直後の梅シロップ【写真:こばやしなつみ】

【材料】(900ml~1.2L容量の瓶を使用する場合)
青梅 350~500g(砂糖と同容量)
砂糖 350~500g(青梅と同容量)
保存瓶 1つ

【下準備】
1. 煮沸消毒、もしくは焼酎やアルコールを含ませたキッチンペーパーなどで内側を拭き上げ、保存瓶の中を消毒する
2. 青梅を洗い、水に2~3時間ほど浸けてアクを抜く
3. 青梅の水を切ったら、梅のヘタを爪楊枝などで取り除く
4. 青梅の表面やヘタ部分の水分をキッチンペーパーなどでよく拭き取ってから、半日程度ザルやバットの上で乾燥させる(水気を飛ばすため)
5. 青梅がよく乾燥したのを確認できたら下準備は完了

【作り方】
1. 青梅の表面に爪楊枝やフォークを3~4回刺して穴を開ける(梅のエキスがよく出るようにするため)
2. 下準備した瓶に、青梅と砂糖を同量ずつ、交互に入れ、一番上にも砂糖を入れる
一番上に砂糖を入れる理由は、なるべく梅の表面に砂糖やハチミツを触れさせた状態から仕込むことで、梅のエキスを出やすくするため(ハチミツを使用した場合、梅とハチミツを瓶に入れ終わったら、瓶内でハチミツに梅をくぐらせるように優しく動かすと良い)
3. 冷暗所で保管する。1~2日すると、梅のエキスで砂糖が溶けてくるため、気づいたときに瓶を優しくゆするなどしながら、梅と砂糖がうまくなじむようにする
4. 10日程度で梅のエキスと砂糖によるシロップに、しわしわとした梅が浮かんでくる。2週間程度したら、梅シロップは完成
※エキスを出し切った梅は、箸などで取り出すとシロップのにごりや味の劣化が防げる
※冷暗所、もしくは冷蔵保存で、約3か月間保存が効く

3~4日程度で開けた穴が目立ってくる。4L容量の瓶に仕込んだ梅シロップ【写真:こばやしなつみ】

【飲み方】
・梅シロップに対し、3~4倍の水や炭酸水で割る(ストレートでは濃すぎるため)

水で割った梅シロップに、黒酢やリンゴ酢を少々加えると、夏の暑さに疲れた体を癒やしてくれます。

【漬けたあとの梅の活用アイデア】
・梅ジャムに再加工
・種を除いてカレーに入れてほかの具材と一緒に煮込む
・種を除いて刻んでタルタルソースの種にする

今年の貴重な梅は、B級品も訳あり品も、余すところなくありがたく味わいたいですね。

こばやし なつみ
半農半フリーランスPRプランナー。2009年に大学卒業後、東京のPR会社に就職。PRプランナーとして勤務後、14年に独立。同年、茨城県・水戸の兼業農家へ嫁ぐ。16年9月に茨城県立農業大学校いばらき営農塾(野菜入門コース)を修了、同11月に第1子を出産。現在は少量多品種(年間約30~40種)の野菜を義両親と共に作り、販売する傍ら、平日は執筆、意識調査の設計・分析等の仕事もこなしている。

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