渋谷路上飲み禁止、通年に→当たり前

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(仲野谷咲希)

【まとめ】

・渋谷区が路上のみの制限を通年に。

・公共の場での飲酒や未成年飲酒に寛容すぎる日本。

・若者のアルコール依存を防ぐ意味からも、飲酒に一定の制限を。

渋谷といえばハロウィーン。

もともと、若者の街だった渋谷だが、インバウンドの増加とともに、スクランブル交差点とハチ公は、もはや東京のアイコンになったといってもいいだろう。とにかく、日本の若者に加えて外国人もいっしょになってハロウィーンの期間はお祭り騒ぎが定番になっていた。

ただ、彼らが酒を飲んで羽目を外し、暴れて街を汚すのが目に余る、という地元商店街の声もあり、去年、ハロウィーンや年末年始の時期にかぎって路上や公園での夜間の飲酒を制限する条例を2019年に制定した。

どうやら、インバウンドにとって、日本は「路上飲酒OKの国」ということになっているようで、特に渋谷では路上飲酒が当たり前のようになってしまった。

こうしたことから、ついに渋谷区は、ハロウィーンなどの期間に渋谷駅周辺の路上で飲酒を制限する条例を通年に拡大する方針を決めた。6月の区議会に改正案を提出する。

路上飲酒を制限する時間帯は、午後6時から翌朝の午前5時までで、区の警備員らがパトロールを強化するという。

ようやくか、というのが感想だ。だいたい、昼間っから町中でたくさんの人が路上飲みしている大都市は東京くらいのものだろう。公共の場での飲酒が禁止されている都市は意外と多い。

ニューヨークなど公園や道ばた、駅や交通機関の中での飲酒はもちろん禁止だ。罰金も高い。そして買った酒をむき出しにして持って歩いただけで違法だ。なので、必ず茶色い紙袋に入れて手渡される。なんか悪いものを買った気分になる。実際、そういう感覚なのだ。

IDカードをわすれたら、スーパーやリカーショップで酒は買えないし、レストランでは絶対に酒を出してくれない。そこは徹底している。未成年に酒を売ったり、飲ませた方が厳しく罰せられるからだ。リカーライセンスを没収されたら店も商売あがったりだから当然だ。

東京の公共交通機関で真っ昼間からビールやチューハイを飲んでいる人をわりとよく見かけるが、即刻禁止すべきだろう。

日本はアルコールに寛容すぎると言われるがそのとおり、一部の国では飲酒をあおるようなCMすら禁止されている。未成年飲酒にも緩いお国柄、大学生になったら飲んでよし、といった風潮がいまだにあるのも考えものだ。居酒屋などで未成年はアルコールが飲めないように、IDチェックを厳しくすべきだろう。

酔っ払いが道ばたに座り込んで寝こけている姿が渋谷や新宿ではよく見られるが、国によっては酔わせた人間が逮捕されるケースだってある。実際筆者も海外で飲んだ帰り、仲間の一人が酔い潰れて歩道で大の字になって動かなくなったとき、周囲の人間から通報されそうになった経験がある。

と、ここまで堅苦しいことを言ってきたが、アルコール依存から若者を守る意味からも飲酒の一定の制限は重要だ。ストロング系缶酎ハイなど、アルコール度数が9%とかビールの倍くらい強いものが簡単に買える社会はやはり異常だろう。あの500ml缶を短時間に3本も飲めば相当に酔っ払う。急性アルコール中毒患者をバンバン増やすようなものだ。医療関係者が警鐘を鳴らすにいたって、ようやく飲料メーカーも重い腰を上げ販売を取りやめたようだが。

そういう意味では、Z世代以下の若い世代が、アルコールからあえて距離を置く、「ソバーキュリアス」なライフスタイルを取るようになってきたことはいいことだ。

ようは、むやみやたらに公共の場で酔っ払うのではなく、自宅、もしくはレストラン・バーなど、許可されたところでアルコールをたしなむという当たり前のことができるようになって、初めてTOKYOも国際都市になるのだと思う。

トップ写真:ハロウィーンを祝う人でごったがえす渋谷スクランブル交差点 (イメージ)出典:CHENG FENG CHIANG/GettyImages

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