簡単に着られる「ワンピース型浴衣」が話題。一着二役のお得感も。人気の背景を取材した

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ワンピースに上衣を羽織れば、浴衣になるというワンピース型浴衣が、若年層の間で話題になっている。

煩雑な着付け要らずで、気軽に浴衣を楽しめ、一着二役という汎用性やお得感もポイントだ。

ワンピース型の浴衣は、既存の浴衣メーカーのほかに、メジャーなアパレルブランドなども参入。ワンピースとしても日常で着やすい、モダンな柄や色味のデザインで売り出している。

今夏は、イオンリテールも「ワンピゆかた」を新発売。大人用と子ども用で展開している。

ワンピース型浴衣の発売の裏側を取材した。

イオンの「ワンピゆかた」

着付けを簡易化した浴衣としては以前から、「セパレート浴衣」(二部式浴衣)が様々なメーカーから販売されていた。

上衣と下衣が分かれており、巻きスカートのような下衣を着て上衣を羽織り、帯を巻くというスタイルだ。

子ども用の浴衣で多く販売されていたものが、大人用浴衣でも便利だと人気が出ていた。

さらに新しい形の浴衣として出てきたのが一着二役のワンピース型浴衣だ。

ワンピース型浴衣は、若年層をターゲットにするアパレルメーカーがここ数年、相次いで発売をしていて、人気が広がっている。各ECサイトでは、様々なメーカーによる商品が見受けられる。

SNSではワンピース型浴衣に対し「簡単に着れそうでいい」「気楽に浴衣の気分を味わえていい」とのコメントが寄せられている。

「ゆかた、ときどきワンピース」イオンは10種類で展開

イオンの「ワンピゆかた」

市場での人気を受け、イオンリテールも今夏、「ワンピゆかた」を発売した。

「ゆかた、ときどきワンピース」「羽織れば、浴衣。脱げば、ワンピ」とのコピーで、10〜20代の若年層をターゲットに売り出している。

種類も豊富で、「かすみ草」や「ダリア」など10種類あり、トレンドのくすみ系の配色で落ち着きのある柄が特徴だ。

ワンピースの両サイドにはポケットがあり、ポリエステル100%のため、洗濯機で洗うことができる。

価格帯は通常の浴衣と変わらず、税込1万780円で、浴衣以外にワンピースとしても普段使いできるので、物価高の中では家計にもやさしい価格設定だ。

イオンリテール株式会社 衣料本部 雑貨商品部の乱場史歌(らんば ふみか)さんはハフポストの取材に、ワンピゆかたの発売の背景をこう説明する。

「和装に不慣れな人が年々増えており、『調整しながら着用する』浴衣に難しさを感じる人が多く、浴衣着用への高いハードルとなっています。そこで、気軽にゆかたを楽しんでもらうために、今年新たにワンピゆかたを発売しました」

「アパレルブランドでの(ワンピース型浴衣の)取り扱いが増えてきているというニーズの高まりも背景に、弊社でも新たに取り組みました」

着方はシンプルで、ワンピースの上に上衣を羽織り、紐を結んで兵児帯を巻くだけ。着方の紹介動画も約1分という短さだ。

(イオンのYouTubeアカウントに掲載された「ワンピゆかた」の着方の説明動画)

イオンのサイトでは、「たとえば、ゆかた姿で花火を見て、帰りはワンピでラクラクに」と、出先で上衣を脱ぎスタイルチェンジするという提案もしている。

夜も蒸し暑い真夏、浴衣は着たいけど、楽しんだら涼しいキャミワンピ姿になれるという新しい選択肢だ。

イオンは2018年から、子ども用に二部式浴衣「すかあとゆかた」を展開し、定番の商品となっていた。今回は、大人用とあわせて、ワンピースタイプを販売する。

イオンのジュニア用「ワンピゆかた」

乱場さんは「着付けに詳しいご年配の方がおうちにいるという家庭も少なくなってきている」とし、着付けが簡単な二部式浴衣が好評な背景を語る。

着付け方のわからない保護者が、祭りの当日に来店し、簡単に着せられる浴衣だとして二部式浴衣を購入していくこともあるという。

体の動きで上下が干渉されることがなく、着崩れることが少ない点も、子どもにも大人にも便利だと好評だ。

従来からある伝統的な浴衣ではないが、新しい形でも、浴衣という伝統を継続させ、着続けていくということに重点を置く意見も少なくない。

SNSでは、「正統な浴衣でなくとも、日本文化が残るのが大事」との声も見受けられた。

人気アパレルブランドも続々参入。親子でリンクコーデも

ロペピクニックの「浴衣キャミワンピース」

20〜30代に人気のレディスブランド「ROPE’ PICNIC(ロペピクニック)」も、今年始めてワンピース型浴衣を発売した。

「浴衣キャミワンピース」は定番の花柄の他に、ドット柄に鮮やかなピンク色の兵児帯が印象的なデザインなど、5種類のラインナップ。

さらに、子ども用も同じデザインで展開されているため、親子でリンクコーデが楽しめるのも特徴だ。

ロペピクニック広報担当の柚木愛理さんは、「季節やシーンが限定されない汎用性があるアイテムのニーズが高まっている」とし、キャミワンピースとしても使える浴衣の開発に至ったと話す。

「若年層でのセパレート浴衣の徐々な流行拡大を受けたという背景があります。コロナ禍が明け、イベントも増加していて、簡単に着られる商品で、売上の起爆剤にしたい意図もあります。親子でお揃いがかなう、ロペピクニックならではの季節を楽しめるアイテムとなっています」

子ども用のキャミワンピースにはアジャスターがついていて、成長に合わせてサイズ調整もできるため、1枚で数年楽しめるのもメリットの一つ。

旅先でも楽しめるようにと、シワになりにくい、ポリエステル100%の素材を選んだという。

また、簡単に着用できることから、円安効果で増加している、インバウンドの外国人観光客にもアピールしたいという狙いもある。

ロペピクニックの「浴衣キャミワンピース」

世界各国を見ても、伝統衣装を日常的に着る風習は、時代と共に消え去っていっている地域もある。

簡単な着付けで、「民族衣装を着る」という伝統を次の世代へと繋いでいくことも一つの手なのかもしれない。

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