岡奈なな子の飾らないスタイル「YouTubeに自分の人生の記録を残していく」

チャンネル登録者数60万人を超えるYouTuber・岡奈なな子の魅力は、その飾らない人柄にある。築50年の祖母の家を舞台に、昭和レトロな雰囲気と素朴な日常を映し出す彼女の動画は、多くの人々の心を捉えている。そのなかでも、「【衝撃】レトロな理容室で『私の髪を好きに切ってください』と言った結果、、、」は再生回数350万回を超える話題となり、彼女の素直で純粋な性格を印象づけた。

活発だった小学生時代、自分の道を模索した中学・高校時代、そして姉の影響を受けながらも、紆余曲折を経てYouTuberという表現の場を得るまで。「岡奈なな子」という存在は、どのようにして生まれたのだろうか。ニュースクランチ編集部が迫った。

▲岡奈なな子【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

眼鏡をかけているだけで“陰キャ”扱いだった

小学生の頃の岡奈は、活発で好奇心旺盛な子どもだったようで、当時の日常を懐かしそうに振り返る。

「散歩が大好きで、よく家の周りを歩き回っていました。あとは……駄菓子屋に行ったり、友達の家に遊びに行ってスマブラをしたりして。当時は『どうぶつの森』がまだなかったくらいの時期かな。仮面ライダーや戦隊モノが大好きで、よく見ていましたね。ごく普通の、どこにでもいるような小学生でした(笑)」

小学校時代は友達もたくさんいて、のびのびと過ごしていたようだ。しかし、中学校に進学すると、彼女の周りは大きく変化する。新しい環境での戸惑いや苦労を話してくれた。

「中学は地元の学校に行ったんですけど、小学校の頃に仲良かった友達が、みんな私立に行ってしまったんです。だから、いざ中学校に入学したら、仲の良い友達が誰もいなくなってしまって……。その学校は治安があまり良くなくて、カースト制度のようなものがあり、眼鏡をかけていると“陰キャだから”と友達になってもらえないような雰囲気があったんです」

しかし、中3のときに1人だけ、ちょっと派手な感じの子と仲良くなれましたと、新たな友人との出会いに救われたことを明かした。そんな中学校時代の彼女は、姉の影響を強く受けていたという。

「中学校では友達があまりいなかったので、暇だったんですよ。それで、姉がハマっていたテニスの王子様のミュージカルにすっかり魅了されてしまって。姉の部屋で一緒にテレビを見たり、アニメを見たり、BL漫画を読んだりして。そういうふうに遊んでたから、さらにクラスの子と話すことがなくなったのかもしれません。

姉はコミケに(作品を)出していたり、ニコニコ動画に手書きのアニメーションを載せていたり、創作活動に熱心だったんです。そんな姉が近くにいたからか、当時の私も漫画家になりたいという夢もありました」

▲中学生の頃は姉からの影響が大きかったです

勉強をしてこなかった学生時代の思い出

その後、高校へと進学することになるが、受験を前にしても勉強にはあまり熱心ではなかった。

「中3の頃に親から“高校どうするのか?”って聞かれて、正直に勉強や宿題をほとんどしていないと伝えたら、“信じられない!”といった反応でした。兄や姉とも年が離れていたこともあり、自由に育ててもらった感じです。父親は“制服が可愛い高校でいいんじゃない”と言っていたんですけど、母親は“私立だけはお金がかかるからやめてほしい、着物の着付けの習い事がしたいから”と反対していました(笑)。

結果的に、公立は受からず私立に進学したんですが、誰も知り合いがいなかったんです。でも、それがよかったのかも。高校では自分の趣味を見つけようと思ったんです。たまたまMyspaceというサイトを見つけて、そこでいろんなアーティストの曲を聴くのが趣味になりました。兄がベースをやっていて、かまってほしかったというのもあって、私もベースを始めたんです。軽音部にも入って、とても楽しかったですね」

※音楽・エンターテインメントを中心としたSNSで、2005年から2009年にかけては世界最大の規模であった。特にミュージシャンが自身の楽曲を広く公開するのに活用していた。

高校生としての新たな生活をスタートさせることになり、本格的にカルチャーにも興味を持ち始めた。さらには、女子校ならではの和気あいあいとしたエピソードも飛び出す。

「夏の校内合宿で面白いことがあったんです。夜中トイレに行きたくなって電気をつけたら、ゴキブリが出てきて思わず悲鳴をあげてしまったんですね。そしたら、当時付き合っていた子がお化けだと思って逃げていって……。ドラムがいきなり鳴り出したり、先輩が急に霊感があると言い出したり(笑)」

高校卒業が近づくにつれ、早く20歳になりたい、早く実家を出たいという気持ちが強くなっていく。美大に行きたかったが、勉強もしていなかったし学費も高かったので、フリーターの道を選んだ彼女は、さまざまなアルバイトを経験するなかで社会の厳しさを知ることになる。

「人間関係の難しさなども学びました。ある意味、人生の修行時代でしたね。1日でクビになったアパレルのバイトなんかもあったり、居酒屋のバイトでは人間関係がうまく築けなくて……。精神的に参ってしまって実家に帰ったこともありました。でも大人になってみると、当時の自分にも反省点があったと思います」

映像監督・かとうみさとに出会ってYouTuberに

岡奈がYouTuberとしての道を歩み始めるきっかけとなったのは、ある出会いだった。

「22~23歳ごろに、映像監督のかとうみさとさんと出会いました。みさとさんとはインスタグラムで知り合って、やり取りさせていただいているあいだに“うちに来てみない?”となって、ありがたいことに家に置いてもらうことになったんです。

みさとさんが働いている映像制作会社でアルバイトをすることになり、現場の一番下っ端として働いていたんです。あるとき、編集をやってみないかと言われて、編集の基礎を教えてもらったんです。そこで、自分でも表現する人になりたいと思うようになり、YouTuberを始めることを決意しました」

新たな世界に飛び込む勇気を与えてくれたのは、岡奈自身の好奇心だったのかもしれない。

「ずっと何かをやりたいとは思っていたんですよ。フリーランスでやっていたときも、良い条件の案件があればなんでも挑戦するような感じでした。なんでもやってみるのが好きなのかもしれません」

YouTuberという職業は、現在では小中学生のなりたい職業の上位にも顔を出す。実際のところ、彼女は他のクリエイターをどう見ているのだろうか。

「私、他の人の動画をあまり見ないんです。自分と似たようなジャンルの人が誰なのかも、ほとんど知らないんですよ。だから、この人のようになりたいとか、ここを参考にしたいとか、そういう意識は全くないんです。たまたま、自分の生活の記録として配信していた動画が、VLOGの波に乗っかっただけだと思っています」

一方で、彼女自身が感じる「自分の強み」を聞くと、照れながらこう答えてくれた。

「うーん……強いて言うなら、私の強みはたぶん『可愛さ』ですかね(笑)。とは言っても、可愛さにもいろいろあるので、私の場合は愛らしさのようなものだと思っています。例えば、テレビって画面越しであっても、人柄が伝わってくるような気がしているんです。みんな画面越しの印象で好き勝手に言ってますよね。

私の場合はYouTubeというメディアですが、画面越しでもそういった人間味、自分が思う愛らしい部分が伝わるのかなと思います。自分らしさを意識しつつ、飾らない感じで続けていければと思っています」

自分の生きた証をYouTubeに残したい

YouTuberとして活動していくなかで、飾らない姿勢で自分らしさを大切にする岡奈のスタイル。それは彼女の人柄そのものでもある。

「こちらの都合で視聴者に押し売りするようなことはせず、自分が心からいいなと思ったものだけを紹介するようにしています。“自分が好きだから動画を作り続けている”というのが大切だと思うんです。

別にYouTuberとして有名になりたいわけではなくて、自分の生きた記録をYouTubeに残せればいいなという気持ちでやっているので、コツコツと毎日更新していくしかないですね」

▲コツコツと毎日更新していくだけですと語る

音楽や映画などにも造詣が深い彼女を支えてきたカルチャーについても聞いてみた。

「私の中ではArctic MonkeysとNUMBER GIRLが不動の2トップですね。特にArctic Monkeysの1stアルバム『Whatever People Say I Am, That's What I'm Not』は、青春そのものという感じがします。

映画だと、去年、久しぶりに『バトル・ロワイアル』を見て再び衝撃を受けました。中学生や高校生の頃に見たときは、北野武さん演じる先生がすごく悪い人に見えるじゃないですか。でも大人になって見返すと、その先生の心情に妙に共感してしまうんですよね」

そんな岡奈に、今後の野望について聞くと意外な答えが返ってきた。

「今後については、あまり大きな野望はないんです。今まで通り、自分が面白いと思ったこと、心に残ったことを動画にしていければいいなと。YouTubeに自分の人生の記録を残していくという感覚ですね。

だから、目標とかも特になくて、ただひたすらコツコツと毎日更新し続けるだけです。あとは、自分の興味の赴くままにいろんなことにチャレンジしてみたいです。ひとつのことにこだわるのではなく、さまざまな可能性に触れていきたいと思っています」

そんななかでも、ただひとつ、変わらないことがあると彼女は続けた。

「ただひとつ、変わらないのは自分のスタンスですね。視聴者に嘘はつきたくないですし、自分が心から良いと思えるもの以外は扱いたくない。そこは今後も大切にしていきたいと思います。応援してくれる人たちのためにも、これからも全力で楽しんでいきたいです」

(取材:すなくじら)


© 株式会社ワニブックス