妻には言わない…夫たちに聞いた“離婚”を考えた瞬間 #9「ずっと頭から離れないこと」

夫婦であっても別の人間同士。いつも同じ気持ちで過ごすのは難しいし、うまくいっていると思っても配偶者は反対のことを考えていた、なんてこともありえます。

妻は何とも思わなくても、ふとした瞬間に「離婚」の文字が頭をよぎった夫は、妻に気持ちを伝えないまま何を考えるのでしょうか。

「結婚して10年になる妻とは、これまで家庭が崩壊するような大きな喧嘩もなく、穏やかな関係でやってこられたと思っています。

というのも、交際期間が一年で僕からプロポーズしてOKをもらった後、すぐに妻の妊娠が発覚し、結婚式も入籍も慌ただしく済ませてすぐ子どもがいる生活になったからです。

正直に言えば『もう少しふたりきりの時間を楽しみたかった』のが僕の本音で、でも子どもができればいやでも親にならないといけないし、妻の気持ちを考えたらもっと大変なことは理解できます。

だから本音は隠してとにかく家族のためにと、ずっと仕事や家族サービスをがんばってきました。

最近、仲のいい後輩が『彼女にプロポーズをしたらうんと言ってもらえた』と幸せな報告をしてくれたのですが、『まだまだふたりでいたいから、今は妊娠に気をつけています』と楽しそうに話すのを聞いて、胸がぐっと重たくなって。

あのとき、自分ももっと避妊に気を配っていたら自由を謳歌できていたと思うと、今とはまったく別の人生だったかもしれず、当時の自分を責める気持ちが湧いてくるのですよね……。

結婚したことも子を持ったことも、後悔はしていません。二人目も順調に授かることができて、妻も共働きでがんばってくれて感謝しています。

でも、後輩を見ているとどうしても『別の人生だった可能性』が頭から離れなくて、仕事でミスをして落ち込んだ日など『いっそ離婚してやり直すか』と考えてしまう自分がいます。

自分でもそんな気持ちにぎょっとしますが、夫婦ふたりの新婚生活もろくに送れなかったことが、ずっと尾を引いていることを実感します。

お小遣い制で自由に使えるお金もそう多くなく、『いつまでこんな生活なのかな』と考えたら、たまに果てしなく落ち込みますね……」(38歳/公務員)

入籍前の意図しなかった妻の妊娠により、自由な時間を「早くに奪われた」と思ってしまうと、その後も当時の自分を否定したい気持ちが消えません。

「後悔していない」という気持ちは本当だとしても、それと「もっと気をつけていれば手にできたはずの自由」への憧れはまた別なのかもしれず、それを楽しんでいる人を見れば心のどこかで嫉妬も生まれます。

それでも人生を巻き戻すことはできず、どこで自分の人生に折り合いをつけるか、男性はもう一度モヤモヤと向き合う必要があるのではないでしょうか。

(ハピママ*/ 弘田 香)

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