真ん中の”つぶれ”でアッパー軌道に HS30台の救世主!? 日本シャフト「バルカヌス」

アマチュアゴルファーのドライバー飛距離を伸ばすことに特化した「VULCANUS(バルカヌス)」(撮影/有原裕晶)

「N.S.プロシリーズ」に代表されるスチールシャフトで有名な日本シャフトが、ドライバー用のカーボンシャフト「VULCANUS(バルカヌス)」を新しく発売した。現行のウッド用カーボン「N.S.プロ レジオ フォーミュラシリーズ」とも全く違うタイプ。シャフトの性能についてはギアの知識が豊富なミタさんに解説してもらい、気になる飛距離、弾道、特徴はアスリートゴルファーのコウタロウ(HS50m/s)とベテランゴルファーのシオさん(HS40m/s)に試打してもらった。

トルク6.2の先調子!つぶれ分布を改良して20ヤードアップ!?

N.S.シリーズ以外のシャフトをテストするのは初めての体験(撮影/服部謙二郎)

【ミタさん】
今回紹介する「バルカヌス」は新モデルというよりも、日本シャフトにとっては新カテゴリーです。2年半前から開発を進めていたそうです。

【コウタロウ】
日本シャフトの製品なのに「N.S.」の文字がついていないのは珍しい。

【ミタさん】
今まではカーボンシャフトでもすべて「N.S.」がついていたのですが、今回は完全に新しいカテゴリーに挑戦したということです。

【シオさん】
どういうカテゴリーなんですか?

【ミタさん】
分かりやすく言えばヘッドスピード(以下HS)が速くないゴルファーをターゲットにしたカーボンシャフトです。ラインアップに60グラム台がなく、40、50グラム台だけの展開です。

つぶれ(扁平)に焦点を当て、新しい設計思想を採用している(撮影/有原裕晶)

【コウタロウ】
軽量シャフトなんですね。特徴は?

【ミタさん】
先中調子で、かなりしなり幅は大きいです。最も軽量の「V300」だとトルクが6.2もあります。

【コウタロウ】
6.2はスゴイですね。ただ、それだけトルクが大きい先中調子だと、先端が暴れそうですね。

従来シャフトの走らせ方とは違う設計らしいが、果たして(撮影/服部謙二郎)

【ミタさん】
従来のシャフトはそうだったと思います。でも、日本シャフトはそれを考慮してつぶれ分布に注目した新技術を採用しています。

【シオさん】
剛性分布というのは聞いたことありますが、つぶれ分布って何ですか?

【ミタさん】
切り返し直後のシャフトを想像してもらえるとわかりやすいのですが、シャフトは先端よりも手元側がつぶれます。

【コウタロウ】
ダウンスイングでタメができる瞬間は、そういうつぶれ方してますね。

組み合わせたヘッドはQi10/9度(コウタロウ)とQi10 MAX10.5度(シオさん)(撮影/有原裕晶)

【ミタさん】
一般的なカーボンシャフトの場合、先端から手元にかけて緩やかにつぶれやすくなっています。ですが、「バルカヌス」は意図的に中間部分をつぶれやすくし、HSが遅めでも自然とアッパー軌道になって高弾道・低スピンのボールが打てるそうです。同社のヒューマンテストでは20ヤード近く飛距離が伸びたので、このつぶれ分布を技術は特許も申請しています。

【コウタロウ】
先端を極端に柔らかくしているというよりも、中間部分のつぶれによって、先端が走るようにしているんですね。これはシオさんにピッタリじゃないですか?

【シオさん】
HS的にも完全に私向き。前置きはいいから、早く打たしてっ!

しなりとつぶれの効果で「間」ができる!

ワッグルの段階で中間部から大きくしなるのがわかる(撮影/服部謙二郎)

【シオさん】
私は46グラムの「V410」を打ちましたが、ワッグルしただけでシャフトがしなりましたね。「当たったら飛びそう…」と思って打ったら、実際飛びました。

【ミタさん】
キャリーで220ヤード前後飛んでいたので、飛距離性能は高いですね。しなり過ぎて振りにくくはなかったですか?

【シオさん】
正直、もっとタイミングが合わせにくいのかなと思っていましたが、しなってくれるおかげで自然と「間」ができます。だから、インパクトが合わせやすかったです。

【ミタさん】
コウタロウはどうでした?

【コウタロウ】
50グラム台の「V520」を打ちましたが、切り返し直後からシャフト全体がしなり戻る感覚がありました。HS50m/sの僕が打っても、意外と打ち出しは低く抑えられます。中高弾道の球筋で吹け上がることがないので、HS42、43m/sくらいまでの人なら十分使えそうですね。逆に45m/sを超えたら、ちょっと合わないかも。

HS50m/sのコウタロウでも、終始吹け上がることはなかった(撮影/服部謙二郎)

【ミタさん】
しなり加減はどうでしたか?

【コウタロウ】
50グラム台もしなりは大きい。ただ、変なしなり方ではなくて、オーソドックスなシャフトのしなり。そこは「N.S.」らしさを感じました。

【ミタさん】
シャフト全長に高機能素材「トレカM40X」を使っているので、軽くてもしっかり感があると思います。

シオさんは「V410」、コウタロウは「V520」を装着したショット平均データ

【シオさん】
最軽量の「V300」は持った瞬間から軽くて、ちょっとインパクトが合わせにくかったです。

【ミタさん】
そのスペックはHS40m/sのシオさんにとってもアンダースペックかもしれません。女性ゴルファーとか、HS30m/s前後のシニアゴルファーにマッチするシャフトです。

【ミタさん】
3つのスペックを用意した「バルカヌス」は、HS30m/sから43m/sくらいまでのゴルファーをターゲットにした軽量シャフト。いわゆるツアー向けのカスタムシャフトではありません。軽量シャフトの中でもねじれが大きいトルク設計で、中間部分がしっかりつぶれてくれるのでインパクト前後がアッパー軌道になりやすい。カット軌道で入射角がきついタイプのスライサーとも相性が良いでしょう。

【シオさん】
ダウンスイングで打ち急いでしまう人でも、タイミングが合わせやすいと思います。

■ 試打したシャフトのスペック

重量別で3種類。すべてワンフレックス設計(撮影/有原裕晶)

日本シャフト VULCANUS

●モデル/重量/トルク
V300/41.0g/6.2、V410/47.0g/5.0、V520/53.5g/4.1

●調子:先中

■ マイクラブ情報

シオさん:ピン G430 SFT ドライバー
●ロフト角:10.5度 ●シャフト:NSプロ レジオ フォーミュラ MB+ 55 ●硬さ:S

コウタロウ:ヤマハ RMX VD/X ドライバー
●ロフト角:9.5度 ●シャフト:VENTUS TR RED(ベンタス ティーアール レッド) 6 ●硬さ:X

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