冷房が苦手な人が厚着をしてでもつけるべき理由 エアコンには冷たいものを飲むよりも冷却効果が 医師が解説

暑さを我慢しながら室内で過ごすのは危険。エアコンを適切に使用しよう(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

本格的な暑さがまもなく到来します。近年、高齢者が住宅で熱中症を発症するケースが増えており、2018年の厚生労働省人口動態統計によると、熱中症による死亡者のうち56.5%が家庭(庭も含む)で発生したことがわかっています。自宅での熱中症を防ぐには、エアコンの適切な利用が不可欠です。今からできる対策や、エアコンをつける重要性を紹介します。

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今から冷房の試運転をしっかり行っておこう!

熱中症は、脱水と高体温から起きます。水分補給や栄養補給と同様に、暑熱環境を避ける、すなわち涼しい環境を作れるようにしておくこともとても重要です。

暑くなる前に、エアコンの動作チェックを必ずしておきましょう。いざつけたら「故障していた!」という事態は、実はとても危険です。エアコンを使えない環境では、熱中症リスクが大きく高まります。

試運転を5月中に確実に行いましょう。故障が見つかった場合、エアコンメーカーの設置・修理の繁忙期である6月~8月に入る前に修理を出すことができるので、安心して真夏を迎えることができますよ。

エアコンメーカーのひとつである、三菱電機株式会社の空調冷熱システム事業部の久田優美さんは、エアコンの試運転として最低限実施すべきことを次のように解説しています。

○エアコンの試運転の方法~基本編

エアコンのコンセント周りでチェックすべきポイント【画像提供:三菱電機】

1. 電源プラグやコンセントをチェックする
まずは、すぐに目視できるコンセントの周りをしっかりと確認しておきましょう。

・電源プラグやコンセントに「変色」「がたつき」「ゆるみ」はないか
・電源コードに傷はないか
・電源プラグにホコリが付着していないか

これらをチェックして、電源プラグやコンセントに「変色」「がたつき」「ゆるみ」がある、もしくは電源コードに傷がある場合は使用を取りやめ、電源プラグを抜いて安全点検を依頼しましょう。また電源プラグにホコリがついている場合は乾拭きを。

2. 運転モードを「冷房」、設定温度を「最低」にして10分程度の試運転をする
運転モードを「冷房」、設定温度を「最低」にして10分程度運転します(室温が一定程度エアコンの設定温度を上回らないと、運転しない場合があります)。そして、次の項目をチェックしましょう。

・室内機の吹き出し口から冷たい風が出ているか
・リモコンは動くか、液晶画面の表示が薄くなっていないか

室温と設定温度の差が十分にあるにもかかわらず冷たい風が出ない場合は、メーカーや販売店に連絡を。また、リモコンに問題があるときはリモコンの電池を交換してみましょう。

エアコンが苦手なら着込むべし 「とにかくエアコンをつけてください!」

熱中症にならないためにも、夏は適切にエアコンを使用することが必要ですが、風が冷たくて苦手な人もいるでしょう。かといって、エアコンをつけながら厚着をしては意味がないと思っていませんか?

「熱中症からいのちを守る」(評言社刊)の著者である、医師の谷口英喜先生によると、実は寒さ対策のために冬の服装をしたとしても、エアコンで部屋を冷やすことが大切だといいます。その理由は、エアコンの風に当たるのではなく、冷たい空気を吸うことに意味があるからです。

冷たい空気を吸うと、実は冷たいものを飲むよりも体温の冷却効果があります。麻酔科医である谷口先生は、そのことを日々実感しているそう。

人の肺には、肺胞という風船のような組織がたくさんあります。その肺胞を広げると、なんとテニスコート半面分の面積にもなるそうです。それほど面積のある肺胞に、たくさんの血管が接しています。そのため、そこに冷たい空気を送ることで体温を下げることができるのです。

谷口先生は「たくさん着込んでも良いですから、とにかくエアコンをつけてください!」と、エアコンの重要性を強調します。

すでに暑さを感じる今日この頃。今のうちから暑さに強い体作りを心がけ、真夏には元気に過ごせるようにしたいですね。また、正しい水分補給の仕方をしっかりと押さえて、万が一のことも考えて慎重に行動しましょう。

谷口 英喜(たにぐち・ひでき)
医師、済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長。麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理のエキスパート。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、TNT-Dメディカルアドバイザー。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。2024年5月に新刊「熱中症からいのちを守る」(評言社刊)が刊行。そのほかの著書に「いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ」(評言社刊)などがある。

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