【環境考察/気象の変化】熱中症で命の危険も...対策強化を

福島市内に設置された避暑施設「ふくしま涼み処」

 「少し、涼んでいきませんか?」。福島市の施設内に設置されたパネルに、そう書かれている。机や椅子が並び、ゆっくりできる。「暑いと思ったら気軽に立ち寄って涼んでもらい、熱中症に注意してほしい」。担当者は話した。

 「涼み処」スタート

 暑さを避けるため、県は今年から公共施設や商業施設などに避暑施設「ふくしま涼み処(どころ)」を設ける取り組みをスタートさせた。環境省も「熱中症特別警戒アラート」の運用を開始、アラートが発表されると各市町村は事前に決めた指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)を開放する。熱中症対策として、二つの制度が始まった。

 近年、熱中症による搬送が相次ぎ、死に至るケースがあるなど健康への影響が深刻化している。県によると、県内で昨年5~9月に熱中症で搬送されたのは1840人。記録的猛暑だったこともあるが、2008年の調査開始以降、最も多かったという。死者数も最多だった19年と同数の4人に上った。

 総務省消防庁によると、同期間の全国の搬送人数は9万1467人。前年より2万438人増え、調査開始以降、過去2番目に多かった。死者数も前年より27人多い107人だった。

 1度上昇で事態変化

 「気温が1度上がるだけで、熱中症になる可能性はだいぶ違う」。気候変動による健康への影響などを調べている国立環境研究所気候変動適応センターで気候変動影響観測研究室長を務める岡和孝(47)は指摘する。

 岡の研究によると、1981~2000年と、2081~2100年の各20年で比較した場合、温室効果ガスの厳しい排出削減策を取らずに地球温暖化が進めば、長期的な「暑熱適応」が進むとしても、県内の熱中症搬送率(人口あたりの搬送者数)は7~17歳で1.81倍、18~64歳で2.18倍、65歳以上で2.07倍に増加する。「搬送数の増加とともに、死亡するケースの増加も懸念される」という。

 猛暑は「災害」と表現されるときがあり、命に関わる。熱中症を防ぐ上で岡は「『これくらいは平気』という過去の経験は参考にならない。気温が今と昔で違う。いかにして対策を取るかが大事」と強調。企業や学校、家庭など「コミュニティー単位でしっかり話し合い、熱中症に備えてほしい」と注意喚起する。

 さらに岡は「暑い時間帯の運動は避けることが必要」とし、エアコンを使うなど「屋内での対策も重要」と続けた。クーリングシェルターのような避暑施設の役割は大きく「既存の施設を有効に活用してほしい」と述べた。(文中敬称略)

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 熱中症特別警戒アラート 気温と湿度などから算出する指標「暑さ指数」が都道府県内の全地点で35以上になると予想される場合、前日午後2時ごろに発表される。発表時に市町村は、事前に決めた指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)を開放する。

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