台湾で静かに広がる、健康的なニュータイプのフルーツ製品が気になる

久しぶりの台北で変わったものを見つけた

「あれ、こんなお店、前にはなかったな」

コロナ禍による渡航制限が解除されて久しぶりに訪れた台北・永康街を歩いていたら、目新しいお店でこれまでに見たことのないものが売っていました。

出典:リビング東京Web
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丸ごとのイチゴをフリーズドライにしたものです。

そのときは買わなかったのですが、その後台北以外のいろいろな場所でも見かけて、「なんか静かに広がってる…?」と気になってきました。

伝統的なフルーツ加工品「蜜餞」と「水果乾」

バナナやマンゴー、パイナップルにライチと、フルーツ王国・台湾にはいつの季節にもたくさんのフルーツがあふれています。6月には台湾で一番有名なマンゴーの品種「愛文(アーウィン)マンゴー」が収穫期を迎えるとあって、それを目当てに台湾を目指す日本人観光客も多いといいます。

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新鮮な南国フルーツを満喫できるのは台湾現地ならでは。旅行者がお土産として生のフルーツを日本に持ち帰ることは基本的に不可能だからです。私たちが持って帰れるのは加工品のみ。

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歴史的に、野菜やフルーツのもっともシンプルな保存方法は塩漬けや砂糖漬けでしょう。台湾にも、昔から親しまれてきたフルーツの砂糖漬け「蜜餞(ミージェン)」があります。

(余談&注意:砂糖と塩の両方で漬けているケースもあって、甘さと塩辛さがガチンコ勝負の味になっているものがたまにあります。日本人にはなじみのない味わい…。)

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そして、台湾土産の定番・ドライマンゴーに代表されるドライフルーツは、古くは天日で、現在は乾燥機で乾燥させたもの。これもいろいろな種類があります。マンゴーは言うまでもないおいしさですが、実はめちゃくちゃたくさん種類があります。私はパイナップルやグァバのドライフルーツが台湾らしくて大好きです。

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伝統的な「蜜餞(ミージェン)」、定番のドライフルーツときて、今回私が出合った「フルーツ加工品3.0」とでも言うべきなのが、フリーズドライ。フルーツは中国語で「水果」といいまして、普通のドライフルーツは「水果乾」、フリーズドライフルーツは「水果凍乾」と書きます(わかりやすい直訳!)。

もちろん、フリーズドライの技術自体は昔からありますが、街なかで売られているフルーツの「凍乾(ドンガン)」が最近台湾でやけに増えた気がするんです。

あちこちにあるフリーズドライフルーツ店

私の記憶では、コロナ禍前にはこんなにフリーズドライのフルーツが一般向けの商品として出回ってはいなかったと思います。

フリーズドライのイチゴは、日本でもフルーツグラノラに入っているのを食べたことがありました。でも、丸ごとのものがぎっしり容器に入っているのは初めて見ましたし、不思議でおもしろい感じです。

カラカラに乾いたサクサクのイチゴをガリガリかじる、という初めての体験でしたが、甘くて濃厚でとてもおいしかったですよ。

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丸ごとフリーズドライイチゴを初めて見たのは台北・永康街にコロナ禍中にオープンしたという「私房小厨(private house)」というお店。現在は台湾各地の観光地を中心に20店舗以上を展開しているそう。ただ、その後台湾のあちこちで、複数の別の業者が作っている「水果凍乾」も見かけたので、やっぱり静かなムーブメントなのかもと思うわけです。

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「私房小厨」のイチゴ凍乾は、ざっと30個は入っている200gの袋入りタイプのもので350元(約1700円)というお手頃価格です。

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イチゴとマンゴー以外にもいろいろなフルーツが「凍乾」になっていました。別のお店のものも含むと、バナナ、パイナップル、リンゴ、メロン、モモ、ドラゴンフルーツ、グァバ、レモン、ローゼル(ハイビスカス)にパッションフルーツまでありました。

フリーズドライなので、どれもそのままかじるとサクサクとした不思議な食感です。(店頭の試食品は台湾の湿気のせいでぐにゃっとしていることが多いのですが、開封したてはサクサクです。)

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使い方いろいろ、新食感の水果凍乾が支持される理由

フリーズドライのフルーツは、そのまま食べるのはもちろん、お菓子の材料(焼き菓子の生地に混ぜたりとか)にもできますし、飲み物に入れてアレンジすることもできます。

牛乳にイチゴやマンゴーの凍乾を入れれば簡単にイチゴミルクやマンゴーミルクができます。ローゼル(ハイビスカス)をお湯に入れれば、あっという間に鮮やかに赤くてビタミンCたっぷりのハイビスカスティーに。ハイビスカスティーとして売られている普通のドライローゼルはお茶を淹れた後の果肉はかみ切れないほどコリコリですが、フリーズドライは加工によって果肉が柔らかくなるので、そのまま普通に食べられちゃいます(結構酸っぱいけど)。

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それから、スプーンでくりぬいたような丸い形がかわいいパッションフルーツ凍乾は、紅茶に入れるとあっという間にしゅわっと溶けて、一気に台湾定番のフルーツティー(水果茶)の味に。私は、ヨーグルトドリンクに入れてインドのラッシー風にするのがお気に入りです。水分量が多くて加工が難しいパッションフルーツのドライフルーツは台湾にあまりないので、手軽にパッションフルーツの味が楽しめるのは嬉しかったです。

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台北101の展望台に売場を構えていた「旅旅食光」というお店で話を聞いてみたところ、フリーズドライにすることで、糖分を加えることなくフルーツそのものの風味を長期間保てるのはもちろんのこと、フルーツの栄養素をそのまま残せることが最大の特長だそうです。店員さんは栄養士で、「だから自信をもってお勧めできるんですよ」と話してくれました。

他に保存方法がなかった時代に発明され、長らく親しまれてきた「蜜餞(ミージェン)」(砂糖漬け)、そしてドライフルーツ。昔は砂糖をまぶしてあるものが多かったのですが、最近は無加糖のドライフルーツも人気です。

さらに、技術の進歩によって生まれたフリーズドライフルーツ。味つけをしないフルーツ本来の味わいが好まれるとともに、栄養価が重要視され、支持されるというのは、健康意識が高まっている今の時代の流れだなあと思いました。食感も普通のドライフルーツとは違っておもしろいですし、丸ごとイチゴには「映え」の要素もありますし、これから台湾で定番になっていくのかどうか、注目したいと思います。

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旅行者目線でいうと、フリーズドライは水分量が少ないので軽いのが嬉しいところです。飲み物やデザートへのアレンジも簡単なので、台湾らしいフルーツの「凍乾(ドンガン)」を日本に持ち帰って、おうちで台湾気分を味わってみるのも楽しいんじゃないでしょうか。

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松浦優子/台湾情報ライター/漢方養生指導士・漢方上級スタイリスト/東京都港区出身のアラフィフ。元Web広告ディレクター。現在は外国人向け日本語教師のほか、中日翻訳、台湾に関わるライター、オープンカレッジ講師として活動。一年のうち1カ月以上は台湾に滞在し、台湾の文化や歴史、中医学(漢方)の養生法など、気になるテーマを探求中。インドア派、愛猫家。台湾で得た一番の宝物は、あたたかい台湾の人たちとの友情とご縁。

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