訪日客、14市町村で増 福島民報社福島県内調査 コロナ流行前と比較 会津が半数超、高い海外人気

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行後の福島県内インバウンド(訪日客)入り込み状況は、14市町村が感染拡大前より増えたと推計していることが分かった。福島民報社が県内全59市町村に尋ねてまとめた。「増えた」とした市町村のうち、半数超の8市町村が会津地方となり、海外人気の高さを改めて示した。一方、「増えていない」と回答したのは31市町村だった。

■温泉や自然が要因

 5類移行後の訪日客の入り込み状況についての回答は【地図】の通り。観光庁の宿泊旅行統計調査や観光施設からの報告を基に現状を報告してもらった。

 会津地方に海外の旅行客が訪れているのは、日本の文化を味わえる温泉が豊富であるのに加え、車窓からの雄大な自然風景が人気の只見線の再開通などが要因とみられる。

 高速道路や鉄道の環境が整っている中通りの一部も増加している。

 一方、横ばいも含む「増えていない」市町村は浜通りに集中している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復旧・復興を優先しているためだと予想される。

 「分からない」は14市町村だった。

■冬の鍾乳洞盛況

 田村市の観光鍾乳洞「あぶくま洞」を昨年度に訪れた訪日客は、台湾を中心に少なくとも約3600人で、前年度の20倍超に跳ね上がった。閑散期の1~3月に集中し、雪を観賞するツアーに組み込まれているためだという。関係者は冬の鍾乳洞を彩るイルミネーション企画を実施するなど、さらなる誘客を目指している。

 平田村にあるジュピアランドひらたの芝桜を目当てに、大型バスで東アジアから訪れる団体客が多い。村はあぶくま高原道路など交通アクセスの良さが増えた理由と分析している。

 「増えていない」市町村の中には、回復基調にあるが、コロナ禍前の水準に戻っていないと回答した自治体もあった。このうち、喜多方市は認知度の向上のために、1月に観光情報発信専門の地域おこし協力隊員1人を採用。ホームページや交流サイト(SNS)などで地域の魅力を海外に発信している。

■訪問率38位

 観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2023(令和5)年の訪日客訪問率ランキングで福島県は38位と低迷している。

 福島大経済経営学類の吉田樹教授(地域観光政策)は外国人ならではのニーズをつかむ必要があると指摘。「県内在住の外国人に日々の暮らしや地方の魅力を発信してもらうことも必要」と呼びかけている。

 県は今年度、訪日客の誘客に取り組む市町村などを支援するため、自治体職員らを対象にした受け入れ体制強化に関するセミナーを開く。復興の現状や教訓を発信するホープツーリズムを切り口に、浜通りにも訪日客を呼び込みたい考えだ。海外に置く観光窓口を活用し、県内各地を周遊する旅行商品をつくるよう働きかけも強める。県観光交流課は「さらなる訪日客の誘客に力を入れる」としている。

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