『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公開から9年 前田真宏、当時の経験が「大きな糧に」ジョージ・ミラーに感謝

画像は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 より - Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

2015年に日本公開され、第88回アカデミー賞で最多6部門を受賞する快挙を成し遂げた映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。同作のコンセプトアート&デザインを担当したのは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』などで知られるアニメーター・前田真宏だ。最新作『マッドマックス:フュリオサ』でも「additional story contributor」として名を連ねる前田がメールインタビューに応じ、メガホンを取ったジョージ・ミラー監督たちとの製作を振り返った。

荒廃した近未来を舞台にした本作は、愛する家族を失い荒野をさまよう主人公・マックス(トム・ハーディ)が、荒野の支配者イモータン・ジョーから逃れようとする女性たちと手を組み、決死の逃避行に挑むシリーズ第4弾。冒頭からノンストップで展開する怒濤のカーアクション、暴力と狂気に満ちた世界観がファンの心を鷲掴みにし、日本でも社会現象を巻き起こした。

『怒りのデス・ロード』の前日譚にあたる『フュリオサ』は、もともとアニメーション映画として『怒りのデス・ロード』の開発と同時に進行していたもの。前田はミラー監督らと共にアニメ映画版『フュリオサ』の企画、シナリオ、デザインに携わっていたが、結果的に同作は実写として製作されることになった。

劇場公開から9年。企画を振り返った前田は「本編である『怒りのデス・ロード』の補助線としてアニメを作る、というのが自分に課せられた仕事だったわけですが、それに関しては『失敗』だったわけです。(プロデューサーの)ダグ(・ミッチェル)さん、ミラーさんには本当に申し訳ないと思いますし、それでもイメージやデザインを採用してもらって感謝しかありません」とコメント。「仕事の仕方、考え方には大きな影響があったので、参加できた事は大きな糧になっていると思います」と続けた。

『怒りのデス・ロード』シャーリーズ・セロンが演じたフュリオサ - Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

『怒りのデス・ロード』での体験は「全てが新鮮」だったといい、前田もクリエイターとして「負けられない」という思いがより一層強くなったとも語る。「現場も面白かったですね。デザインワークでWETA(VFXスタジオ)と一緒にやっていたのですが、本当に仕事のクオリティー、スピードが凄くて脅威に感じていました」

『怒りのデス・ロード』といえば、脇を固めるキャラクターたちも魅力的だ。中でも、大型スピーカーを搭載した改造車でひたすら火を噴くギターを鳴らす“コーマドーフ・ウォーリアー”は、少ない登場時間でありながら強烈なインパクトを残し、シリーズファンから熱狂的な支持を獲得している。デザイン自体はコミック・アーティストが担当したものだが、前田は同キャラクターの人気について「劇伴の盛り上がりと劇中のキャラクターがシンクロして盛り上がる点が最高だった、という事ではないでしょうか? PA(スピーカー)を満載したトラックを舞台に暴れ回る、野外フェスのような高揚感が良いアクセントになっていますね」と分析する。

「音楽、といえば今回(『マッドマックス:フュリオサ』)と前回ではずいぶん劇伴の設計が違います。同じような音やモチーフを使いながら、実は作品としては全く別物、という狙いなのだな、とここも感心した部分です」

最後に、『マッドマックス』シリーズの魅力はどこにあるのだろうか? 前田は「キャラクターの造形、マシーンの暴力的な魅力や世界観など、見る人によって様々だと思うのですが、自分にとっては何といってもジョージ・ミラーさんという人の不思議な魅力に尽きると思います」と回答した。「ものすごく優しくて知的な人なのに、何十年も『荒地』を彷徨っている。深みのある考察を、誰でも楽しめるシンプルさに落とし込もうとする。そこに興味をそそられます」(編集部・倉本拓弥)

映画『マッドマックス:フュリオサ』は全国公開中

前田真宏初の作品集「雑 前田真宏 雑画集(仮)」は2024年内発売予定(価格:6,000円+税、編集:株式会社カラー、発行:光文社)

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