中国の無人探査機、月の裏側に着陸成功と発表 岩石など採取へ

ジョージーナ・ラナード科学・気候記者、ローラ・ビッカー北京特派員

中国国家航天局(CNSA)は2日、無人月面探査機が月の裏側への着陸に成功したと発表した。

CNSAによると、「嫦娥6号」は2日午前6時23分(日本時間午前7時23分)ごろ、月の裏側の南極エイトケン盆地に着陸したという。

嫦娥6号は5月3日に打ち上げられた。月の裏側の貴重な岩石や土を持ち帰る計画で、この地域の調査ミッションとしては世界初となる。月の南極にある巨大なクレーターから、月最古の岩石を採取できる可能性がある。

月の裏側に到達した宇宙船と通信するのは非常に難しいため、着陸にはリスクが伴う。中国は、2019年に「嫦娥4号」を月の裏側に着陸させ、この偉業を達成した唯一の国となっている。

嫦娥6号は海南省の文昌衛星発射場から打ち上げられた後、着陸のために月の周りを旋回していた。

その後、着陸船が周回機から切り離され、地球からは決して見られない裏側に着陸した。

国営新華社通信によると、嫦娥6号は降下中、自律視覚障害物回避システムを使って障害物を自動的に検知したほか、可視光カメラが月面の明るさと暗さに基づき、比較的安全な着陸エリアを選択したと、CNSAが説明した。

着陸船は安全な着陸エリアの上空約100メートルで滞空し、レーザー3Dスキャナーを使用してゆっくりと垂直降下したという。

また、この作業は通信中継人工衛星「鵲橋2号」が支援したと、CNSAは述べた。

中国の国営メディアは、着陸成功は「歴史的な瞬間」だと説明。2日早朝、嫦娥6号が月面に着陸したとき、「北京の航空宇宙飛行管制センターでは拍手が沸き起こった」と報じた。

3日間かけて採取

着陸船は最大3日間かけて地表から物質を採取する予定で、CNSAは「多くの技術革新、高いリスク、大きな困難」を伴う作業だとしている。

英マンチェスター大学で月の地質学を専門とするジョン・パーネット=フィッシャー教授は、「誰も見たことのない岩石を見ることができるかもしれないと、誰もが非常に興奮している」と語った。

同教授はこれまで、アメリカのアポロ計画や中国の過去のミッションで持ち帰られた月の岩石を分析した経験がある。

しかし、月の全く異なる地域から採取された岩石を分析するチャンスは、惑星がどのように形成されるかについての基本的な疑問に答えるかもしれないと、同教授は言う。

これまでに採取された岩石のほとんどは、アイスランドやハワイで見られるような火山性のものだ。

しかし月の裏側の岩石は、化学的性質が異なるかもしれない。

「惑星はどのように形成されるのか、地殻はなぜ形成されるのか、太陽系の水の起源は何なのか。そうした本当に大きな疑問に答えるのに役立つだろう」と、パーネット=フィッシャー教授は述べた。

CNSAによると、このミッションではドリルと機械アームを使用し、約2キロの物質を採取することを目的としている。

衝突クレーターである南極エイトケン盆地は、太陽系で知られている中で最大級の盆地だ。

探査機はそこから、月のマントル(内核)の奥深くから出てきた物質を集めることもできるとパーネット=フィッシャー教授は言う。

月の南極は、月探査の次なるフロンティアとなっている。氷が存在する可能性が高いため、各国はこの地域を理解することに熱心だ。

水へのアクセスがあれば、科学研究のための月面有人基地の建設の可能性が大幅に高まる。

嫦娥6号はミッション成功後、貴重なサンプルを特別な帰還カプセルに搭載して地球に戻る予定だ。

サンプルは、可能な限り原始的な状態に保たれるよう、特別な条件下で保管される。

持ち帰られた岩石を分析する最初のチャンスは中国の科学者に与えられる。世界中の研究者も後から、分析の機会を得るための申請が許可される。

中国が月からサンプルを採取する探査機を打ち上げたのは今回が2度目だ。

「嫦娥5号」は2020年、月の表側の「嵐の大洋」と呼ばれる地域から1.7キロの物質を持ち帰った。

中国はまた、月面の水を探し、月面基地の設置を検討するため、2020年代にあと3回の無人探査を計画している。

さらに広範な戦略として、2030年頃までに中国人宇宙飛行士が月面を歩くことを目標としている。

アメリカも月面に宇宙飛行士を再び送り込むことを目指している。米航空宇宙局(NASA)は2026年にアルテミス3号の打ち上げを目指している。

(英語記事 China says its spacecraft lands on Moon's far side

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