伊藤榮祐記者:「こちら、田村親子の自宅です。この家の2階の浴室から被害男性の頭部が見つかりました。事件から間もなく11カ月となりますが、今も規制線が張られています」
事件発生から来月で1年。住宅街の一角でいまもこの家は異様な雰囲気を醸し出しています。
前田愛奈記者:「白い防護服を着た捜査員が中へと入っていきます」
2023年7月、全国有数の繁華街・すすきののホテルで当時62歳の男性が殺害され頭部が持ち去られたという前代未聞の事件。逮捕・起訴されたのは札幌市厚別区に住む親子3人でした。
男性殺害の実行犯とされる田村瑠奈被告は殺人や死体遺棄などの罪で…。
父親の修被告は殺人ほう助などの罪に問われ、母親の浩子被告は死体遺棄ほう助などの罪に問われています。
須藤真之介記者:「ここが、事件があったホテルです。実際に中に入ってみたいと思います」「入り口を入ってすぐエントランスがあり天井には防犯カメラがあります」
これは事件発覚前の7月1日、現場のホテルの防犯カメラの映像。
入口から被害男性に続いて入って来たのが瑠奈被告。
エレベーターに二人で乗り込んでいきました。
それからおよそ3時間20分後の午前2時ごろ、瑠奈被告はバッグのようなものを載せたトランクを押して1人でホテルを出ていきました。
須藤真之介記者:「こちらが、現場となった202号室です」「入ったらすぐ仕切りのようなものがあり、ベッドも置かれています」
頭部のない男性の遺体は長時間すぎてもチェックアウトされないことを不審に思い部屋を訪れた従業員が浴室で発見していました。
廣瀬美羽記者:「持ち去られた男性の頭部は2階にある浴室で見つかりました」
被害男性の頭部は、ホテルでの遺体の発見からおよそ3週間後、警察が親子3人の家を家宅捜索している時に見つかりました。
起訴状などによりますと…瑠奈被告はすすきののホテルで被害男性の首をナイフで刺して殺害したのち、頭部をのこぎりで切断し持ち去って自宅に遺棄。
さらに自宅では、その頭部を傷つけた罪などに問われています。
父親の修被告は瑠奈被告の犯行の意思を知った上でのこぎりなどを買い与え、事件当日は車で現場まで送迎するなど、殺人ほう助や死体遺棄ほう助などの罪に問われています。
母親の浩子被告は瑠奈被告が殺害した男性の頭部を自宅に隠すことを容認した死体遺棄ほう助の罪に。
そして、その頭部を瑠奈被告が損壊することを容認し修被告に撮影させた死体損壊ほう助の罪に問われています。
3人とも去年8月下旬から異例の半年間にわたる鑑定留置のすえ検察は責任能力があると判断し今年3月に起訴しました。
瑠奈被告と修被告は裁判員裁判で審理されるものの、いまだにいつ裁判が始まるかは見通しがたっていません。
そんな中、母親・浩子被告の初公判が6月4日札幌地裁で開かれます。
浩子被告とはどんな人物なのでしょうか…。
こちらの女性は事件前に浩子被告と手紙のやり取りをしていたといいます。
浩子被告の知人:「田村浩子さんが描いたもの。旭川にいらしたころは美術館で学芸員をやっていらしたということでね」
去年の1月に女性のもとに浩子被告から届いたイラスト。
干支のウサギと新型コロナ収束の願いが込められたアマビエが水彩で描かれていました。
浩子被告の知人「私も絵を描くものですから、話が弾んだ」
また、浩子被告は昆虫や植物が大好きだったといいます。
浩子被告の知人:「鉢植えをいっぱい置いていますでしょう。色んなものを育てていた。虫が好きなので本当によく育ててくださって、ゲンゴロウも育てて池に放して『元気に泳いでいきましたよ』と…」
そんな浩子被告にいったい何があったのか…。その一端が裁判で明らかになるのでしょうか。
元検事で刑事裁判に詳しい中村弁護士に今回の裁判のポイントを聞きました。
シティ総合法律事務所・中村浩士弁護士:「母親の方は殺人あるいは殺人のほう助での起訴がなされてませんので、焦点は死体損壊等のほう助、ここのみになるんですね。父親あるいは瑠奈被告の裁判とだいぶ審理対象がずれてくるので、一緒に併合してやるという結論ではなく、母親の裁判のみ別に行うと」
「裁判員裁判の対象事件でも元々ありませんので」
関係者によると、浩子被告は起訴内容を否認する見込みで裁判の争点は「犯行の実行行為の有無」となりそうです。
シティ総合法律事務所・中村浩士弁護士:「争うのであれば、弁護人の立場からは頭部等の隠匿は容認してないと、瑠奈被告が勝手に持ってきて自分ではどうすることもできなかった。容認やほう助行為は何らしていないと、こういう主張が考えられます」
「あとはビデオ撮影。これは瑠奈被告人から頼まれて拒否したんだと。自分は嫌だから、父親の方が撮影したんだと、幇助行為が無いと、こういう主張をすることも考えられるのかなとは思います」
「検察の求刑は?」
シティ総合法律事務所・中村浩士弁護士:「殺人が入っていませんので、求刑としては半年から1年半の間かなと予想」「執行猶予相当事案、執行猶予が予想される本来的な事案でもありますので、認めた場合には早期に終わる事案かなと思います」
早期に終わる裁判との見立てもあるなか、今回の裁判は瑠奈被告と修被告の裁判にも一定の影響を与えるといいます。
シティ総合法律事務所・中村浩士弁護士:「母親の裁判と父親・瑠奈被告の裁判とはあくまでも手続きとしては別であって判断する裁判官、裁判員の構成も全く別ですのであくまで別々に判断をするというのが原則なんですが、実際問題今回の母親の判決内容、母親の裁判での証人尋問の結果、こういったものは証拠として瑠奈・あるいは修被告の裁判でも使われる可能性が高いので、そういう意味では影響を及ぼす可能性が十分あるかなと思います」
猟奇的事件の背景とはいったい何なのか。
浩子被告の初公判は6月4日午後3時から札幌地裁で開かれます。
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