最終ラップのシケインで大逆転。Astemo太田格之進がSTANLEY山本尚貴をオーバーテイク/第3戦鈴鹿

 今回も随所で接近戦のバトルが展開された2024スーパーGT第3戦鈴鹿の決勝レース。数あるバトルのなかでも終盤に注目を集めたのがSTANLEY CIVIC TYPE R-GTの山本尚貴とAstemo CIVIC TYPE R-GTの太田格之進によるGT500の6番手争い。終始、前を走る山本が巧みなブロックでポジションをキープし最終ラップに突入したが、チェッカーを受けた時には順位が入れ替わっていた。

 ちょうどトップのチェッカーシーンとタイミングが重なり、公式映像で捉えられていなかったが、どのような状況だったのか。レース後の太田に詳細を聞いた。

「最後のシケインは“信じて飛び込んでいった”という感じでした」と太田。チェッカーまで残り30分を切った78周目にNiterra MOTUL Zを抜いて7番手に上がり、6番手を走る100号車STANLEYの山本に接近するも、なかなか突破口を見出せず「後ろにつくとダウンフォースが抜けるので苦しんだ部分もありました。『どこで仕掛けようかな?』というのを常に考え続けて走っていました」という。

 ただ、日立Astemoシケインではブレーキングで勝っていると感じていたようで、思い切ってインに飛び込んだとのこと。「シケインのブレーキングは、明らかに分があるというのは分かっていましたし、このまま後ろで終わるのは嫌だったので」と太田。

「尚貴さんもたぶん(抜きに)来ると思っていなかったような距離だったと思いますが、インに飛び込まさせてもらいました。本当にギリギリで2脱(左側2輪脱輪)しましたけど、何とか止まれたと言う感じでした」と、バトルを振り返った。

 17号車Astemoが最終ラップの日立Astemoシケインでオーバーテイクを決めてゴールという劇的な展開となったが、レース後にみられた両者の表情はまったく異なった。満面の笑みでチームスタッフと喜びを分かち合う太田に対し、最終ラップで逆転を許すことになった山本は、悔しさのあまりかマシンを降りるとヘルメットもとらずにピット裏のトランスポーターへ入っていった。

 その後もしばらく姿を現さず、コメントを聞くことはできなかったが、レース翌日の早朝に自身のSNSを更新し、「ポジションを守り切れず決勝は7位に。#17のパフォーマンスと太田選手のブレーキングに対しての読みと対処が甘過ぎた自分のミスです。ペース的に劣勢だったとしても最後まで抑え切ることのできたレースだったと思うし心底自分自身にガッカリです。頑張ってくれたチームと牧野選手にも申し訳ない。クルマもドライビングもパフォーマンスを上げられるようにもっと努力します」と、コメントを残した。

ファイナルラップでポジションを奪われてしまったSTANLEY CIVIC TYPE R-GTの山本尚貴

 明暗が分かれたファイナルラップのバトル。最後のオーバーテイクで結果的に太田が逆転したものの、太田にとってはスーパーGTの経験が豊富な山本を攻略するのは簡単なことではなかったようだ。

「尚貴さんは絶対ミスをしないし、隙を見せてくれないです。速さはもちろんですけど、特に強さと言う部分でバトルになった時は抑えるところをきっちり抑えてくるし、シケインの2つ目もずっと抑えられて、こちらから仕掛けられませんでした」

「これが他のドライバーだと『どこかでミスをしてくれるかもしれない』と、気持ち的な余裕を持ちつつレースができたと思いますけど、今回の相手は百戦錬磨の尚貴さんなので、ミスは絶対しないし抑えるところはしっかり抑えてきます。実際に今回もそうでした」

 さらに太田は「個人的な話で言うと、尚貴さんの後ろで走ることが多くて、スーパーフォーミュラでも開幕戦(鈴鹿)、第2戦(オートポリス)もずっと尚貴さんの後ろで抜けないままレースを終えていました。偶然ですけど、今回も同じようなシチュエーションになりました」と、過去の山本とのバトルを振り返った。

「昨年の第4戦富士もファイナルラップ(のダンロップコーナー)で尚貴さんのインに飛び込んで、あの時も距離があるところからインに入っていきましたが、あの時は止まりきれなくて抜ききれませんでした。僕としても最近速さは常に見せることができていますが、強さというところではもっと見せていかないといけないと思っています。そういうところはスタートラインじゃないけど、ひとつ大きなきっかけになったかな。今日のチャレンジはすごく良かったのかなと思います」

 そう語った太田は、今回のバトルを競り勝てた喜びを噛み締めるとともに、ドライバーとしての新たな目標もできたという様子だった。

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タイヤの状況を考え、ダブルスティントを直談判「チームを鼓舞する意味でも本当に良いレースだった」**
 
 今回の17号車Astemoは、第1スティントを塚越が担当し、開始1時間5分ごろの35周目にピットイン。第2スティントは太田が担当したものの、当初の予定では第3スティントで再び塚越が乗車する予定だったという。

「2スティント目はオーバーテイクに苦戦してタイヤを使いすぎてキツくなっていきました」と太田。

「当初は最後スティントは広大さんが乗る予定で、『あとこれくらい引っ張らないとドライバーのミニマム時間が達成できない』と言われていましたが、『それだったら、僕がもう1スティントいけるから、今すぐ(ピットに)入れてほしい』と言って、自分の意思で早めにピットインさせてもらいました」

 こうして2回目のピットストップは予定より早めにピットイン。ここから最終ラップでの逆転劇に繋がる追い上げが始まっていった。

「最後のピットストップの時点で尚貴さんが6〜7秒くらい前にいて、ピットを出たらウォームアップで苦しみましたけど、そのあとはペースはビックリするくらい良くて、おそらく全体で見てもトップレベルだったのではないかなと思います。3号車は時間をかけずに抜くことができました」と太田。

「前回も3位で終わったけど、松下(信治/ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8)選手を抜ききれなかったところが悔しかったですが、今回は抜き切って気持ちよく終わることができましたし。15番手スタートで6位フィニッシュというのは、かなり良い結果だと思うので、また次に向けて頑張っていきたいです」

 そう語った太田。最近の活躍は目覚ましいものがあるが、今回のバトルでさらに自信を深めたようだった。

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