抜け毛が増えたり、代謝が低下するリスクも!?じつは怖い「亜鉛」不足

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健康を維持したり、病気の予防に欠かせない栄養素。その中でも、「亜鉛」にはどういった働きがあるのかご存じでしょうか?

必要量がたりているからこそ、わたしたちは当たり前に毎日をすごせるのですが、不足してしまうといくつものデメリットが出てくることに……。

管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、亜鉛が不足することでどのようなことが起きるのかと、効率よくとるための食べ方について紹介してもらいます。

亜鉛の働きとは?

亜鉛は、全身の細胞に含まれている必須ミネラルの一種です。

とくに筋肉や骨、皮膚・毛髪、肝臓、すい臓などに多く存在し、300種類以上もの体内の酵素の材料となったり、その働きを活性化することで、さまざまな生理機能に関わっています。

そんな亜鉛の働きには、おもにつぎのようなものがあります。

・正常な味覚を維持する
・骨やエネルギーの代謝を促進する
・生殖器の機能を保持する
・体の細胞にダメージを与える活性酸素を除去する
・免疫反応を調節する

亜鉛は、細胞が分裂したり増殖をする際に必要不可欠となっていることから、若々しく健康でいるために大いに役立つ栄養素となっているのです。

亜鉛不足になると起きることとは?

亜鉛が不足すると、子どもでは身長や体重の増加不良(発育障害)、大人では味覚異常、皮膚炎(傷の治癒の遅れ)、脱毛、貧血、口内炎、男性性機能異常、易感染性(免疫低下)、骨粗しょう症が起こりやすくなります。

そのほか、褥瘡(じょくそう/床ずれとも言い、長時間寝たきりや座りっぱなしの状態で圧迫されると傷ができること)、食欲低下、不妊症になることも……。

令和元年国民健康・栄養調査におけるデータを見てみると、食品からの亜鉛の1日の摂取量はどの年代にも不足している傾向にあることがわかっています。

この背景には、偏食の増加や食事量の減少、加工食品の利用増加などが指摘されています。

亜鉛を多く含む代表的な食材や、おすすめの食材

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ここからは亜鉛を多く含む食品について、ご紹介します。

・牡蠣
・ビーフジャーキー
・レバー
・かたくちいわし(田作り、煮干し)
・牛肉
・パルメザンチーズ
・ココア
・抹茶
・ごま

ご覧のとおり、亜鉛は動物性食品に多く含まれている傾向にあります。植物性食品のなかでは、種実類(ナッツなど)や豆類に比較的多く含まれているのです。また、あまり身近な食品ではありませんが、かつおの内臓の塩辛(酒盗) 、からすみ、かぼちゃの種も亜鉛が豊富です。

なお、通常の食事であれば亜鉛を多くとりすぎてしまう心配は少ないのですが、先述の食材を極端に多く食べ続けるような生活をしている場合には、過剰な亜鉛が銅の吸収を抑えてしまうことで貧血、胃の不快感、心血管系や神経系の異常などの悪影響が起こる可能性があります。

とくに、亜鉛を高濃度に含んでいる牡蠣は食べる量に気をつけないと、とりすぎてしまいやすいため注意が必要です。

牡蠣に限らず、動物性食品に偏った食生活をしていると同様のリスクがあるほか、脂質やコレステロールのとりすぎにもなりやすいため、植物性食品と組み合わせてバランスよくとり入れることをおすすめします。

効率よく摂取するための組み合わせや食べ方

亜鉛の体内への吸収率はあまり高くなく、20~40%といわれています。

少しでも効率よくとり入れたい場合には、ビタミンCやクエン酸を含んだ食材(※)を組み合わせることで、吸収率を高めることができます。

反対に、加工食品に使われるフィチン酸、ポリリン酸、リン酸塩などの添加物によって、吸収率が低くなってしまうことに。一般的なコンビニやスーパーなどのでき合い食品や、ファストフードを日常的に食べている場合には、それらを口にする頻度を見直すといいでしょう。

フィチン酸については、豆類や未精製の穀類にも含まれているため、先述のとおり幅広い食品から亜鉛をとり入れることをおすすめします。

ただし、特定の栄養素のことばかりに目を向けて、基本の食事がおろそかになっては元も子もありません。

主食・主菜・副菜をそろえ、炭水化物・脂質・たんぱく質が偏らないような食事を意識し、その上でご紹介した栄養豊富な食品をとり入れるようにしてみてはいかがでしょうか。

※……おもに野菜、果物などにビタミンCが多く、柑橘類、梅、酢などの酸味のあるものにクエン酸は豊富です。

■執筆/監修・・・

管理栄養士・ゆかりさん

管理栄養士、食生活アドバイザー。一女のママで出張料理、料理教室、講演、栄養相談も手掛けるほか、ライターとしても活動。

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参考サイト

02_各論_1-7_ミネラル(微量ミネラル)|「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書

亜鉛欠乏症の診療指針2018|日本臨床栄養学会

令和元年「国民健康・栄養調査」結果の概要 | 厚生労働省

食品成分データベース|文部科学省

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