新幹線停車駅から最も近い離島 過疎の危機に直面 “住民5人の小さな島” を「第2のふるさと」に 住民たちの新たな試み

広島県三原市にある住民5人の離島では、過疎の危機に直面しています。自然に囲まれた魅力ある島を「第2のふるさと」にしてもらおうと、住民などが模索を続けています。

瀬戸内海に浮かぶ三原市の小佐木島は、周囲わずか3.2キロ。三原駅から三原港まで徒歩5分、高速船で14分と、新幹線が停まる駅から日本で最も近い離島です。

末川徹 記者
「島の集落は、ひと気がなく閑散としているが、道路などはきれいな印象です。鳥のさえずりも聞こえて、時の流れがゆっくりしています」

三原市は、島の魅力を広く知ってもらおうと、新たな試みを始めました。JR西日本グループや民間事業者と連携して、1泊2日の小佐木島ツアーを開きました。広島市に住む2組の家族が参加しました。

ツアーガイドを務めた 鈴木敏司 さん
「島の人と触れるのもいいかな」

鈴木さんは、幼少期を三原市で過ごし、現在は北海道に住む傍ら、島の宿泊施設などを運営し、活性化に取り組んでいます。

島を散歩していると、さっそく住民がやってきました。大森勝子 さん(94)と、平谷京子 さん(89)は、結婚を機に島に移住したそうです。ツアーの参加者は、島の人たちとのふれあいを楽しんでいました。

岡本正穂 さん、94歳。2023年まで36年間、島の集落の区長を務めました。小佐木島は、かつて「造船の島」として栄えました。昭和30年代には140人が暮らしていましたが、減少の一途をたどりました。

小佐木島 前の区長 岡本正穂 さん(94)
「島が発展するならと区長を務めたが、5~6年で(事業が)ダメになった。若者が就職で島を離れた。60歳以上の年寄りばかりになって…」

2024年の人口は5人。うち4人が90歳前後で、30軒ほどある住宅の多くが空き家でした。島を何とか存続したい―。岡本さんの強い願いです。

小佐木島 前の区長 岡本正穂 さん(94)
「この島がなくなったら、先祖に申し訳ない。誰が住もうと、小佐木島がなくならなければ、それでいい」

2023年、島に移住した 尾身大輔 さん(32)です。広島市立大学で芸術を学んだあと、彫刻家として活動しています。今は島の活性化に取り組む公益財団法人に所属し、ここを創作拠点としています。

島に移住した彫刻家 尾身大輔 さん(32)
「自然が近い。生き物を制作していて、作りたいモチーフに会いやすい」

尾身さんは週に1度、船で買い物に出かけたり、地元の人から野菜を分けてもらったりしているそうですが、こんな意見もありました。

島に移住した彫刻家 尾身大輔 さん(32)
「ものを販売する場所があれば。自動販売機くらいはあってもいいかと」

ツアーに参加した家族たちは、島の魅力の一つ、山に向かいました。緑が生い茂る竹林は成長しすぎると、山を荒らしてしまうそうです。これを防ぐため、島で育った人などが今も定期的に切り倒し、景観を守っています。参加者も竹割りに挑戦しました。

広島市からツアーに参加(30代)
「(竹の)中は空洞だが、外が硬くて、かなり押さないと切れない」
「(島に)行く機会がないので、日頃と違う世界観」

旅の宿は、鈴木さんが、築90年の古民家をリノベーションして造りました。

末川徹 記者
「こちらは2023年にできた新しい施設ですが、実はサウナなんです。瀬戸内の景色をながめながら、じっくり温まることができます」

サウナの燃料は、さきほど伐採した竹です。島のあらゆるものを地域資源に活用しています。室内は65℃前後の低温なので、子どもと一緒に気軽に入れます。

広島市からツアーに参加(30代)
「ジワジワ来る。木のいい香りがする」

家族たちは、このほかも島の生活を肌で感じていました。

広島市からツアーに参加(30代)
「島での暮らしを聞く機会がなかったので、すごく興味深い。島でスイカの苗を植えたが、実がなるときに(子どもに)食べさせたい」
「島自体の魅力を感じた。可能性しかない。人を増やせる下地がある」

ガイドを務めた鈴木さんは、こうしたツアーが島を「第2のふるさと」と感じてもらうきっかけになればと話します。

ガイドを務めた 鈴木敏司 さん
「島に住むのは難しいが、人口や行き来する人が増えれば。応援してくれる人も増えているので、少しずつ浸透すればいい」

住民たった5人の小さな島。そこには、ふるさとを感じさせる温かさがありました。

© 株式会社中国放送