雅子さま 人前で演奏しないピアノを弾かれることも…ご成婚31周年支えるご一家の「音楽交流」

アイコンタクトだけで意思を疎通させることもあるという天皇皇后両陛下(写真提供:宮内庁)

コンサートホール内で観客たちから湧き起こった大きな拍手。天皇陛下、雅子さま、そして愛子さまは、ほほ笑みながら会釈された。

5月29日、天皇ご一家はおそろいで東京都千代田区の紀尾井ホールを訪れ、ビオラ楽曲のコンサート「ヴィオラスペース2024」を鑑賞された。

「天皇陛下は学生時代からビオラを演奏されており、この『ヴィオラスペース』を皇太子時代から繰り返し鑑賞されてきました。

愛子さまは初めてのご同席となりました。コンサートにはバイオリニスト・五月女恵さんも出演していたのです。五月女さんは、愛子さまの学習院初等科・女子中等科時代の同級生で、管弦楽部の仲間でもありました」(皇室担当記者)

6月9日にご成婚31周年を迎えられる天皇陛下と雅子さま。お二人の絆は年を経るごとにますます強まっているという。最近でも、こんなほほ笑ましいご様子が目撃された。

「5月25・26日、両陛下は『全国植樹祭』に出席されるために、岡山県を訪れられました。25日には岡山市の県立岡山工業高校で、植樹祭の式典で演奏するジュニアオーケストラの練習を見学されたのです。

その後のご懇談で、陛下が指揮者に『私もビオラを弾いています』とお話しになると、雅子さまが笑顔で、『いっしょに弾いてみては』と勧められたのです。雅子さまはそれだけ、ビオラ奏者や音楽家としての陛下を尊敬され、多くの人に演奏を聴いてもらいたいとお考えなのでしょう。

また昨年10月に石川県を訪問され、式典のオープニングステージに出演した芸術家たちと懇談されたときも、ピアニスト・黒崎菜保子さんに、『陛下もピアノをなさるんですよ』と、おっしゃっていました」(前出・皇室担当記者)

陛下はビオラ、というイメージを持っていたため驚いたという黒崎さん。石川県での両陛下のご様子について次のように語っている。

「途中で雅子さまが合いの手や、質問を本当にお上手にしてくださって、両陛下との会話も滞ることなく進んでいきました。会話が少し滞ると感じたら、すぐに横からちょっとお話を入れてくださるのです。そういった両陛下の呼吸が素晴らしいと思いました」

天皇陛下はいまもビオラの練習を欠かされない。今年2月、お誕生日に際しての記者会見ではこう述べられた。

「ビオラの演奏については、最近はなかなか練習の時間が取りにくくなってはいますが、少しずつ続けており、ビオラに限らず、音楽からは多くの癒やしと力をもらっているように思います」

陛下が音楽を大切にされている理由について、長年親交があった作曲家の故・鎌田勇さんは著書でこうつづっていた。

《殿下は、悪い意味ではなく、大変孤独であられると思います。というのも、常に周囲に気を配り、しかも特定の気の合った人たちだけと付き合うというのは、えこひいきになるのでお出来になりません。(中略)息つく暇もないスケジュールをこなしておられます。そうしたお立場を離れることができる、一つの逃げ場が音楽ではないかという気がいたします》(『音楽の聞こえる小さな家』〔時事通信社〕より)

■《見事なハーモニーを奏でられるお二人》

陛下は鎌田さんを含めた音楽仲間と、都内で音楽会を開かれていたが、ご成婚後には雅子さまも参加されたという。

《この時、見事なハーモニーを奏でられるお二人の姿を拝見して、わたしが考えていた、皇太子さまの理想の家庭がここにあるな、という思いを強くいたしました》(『音楽の聞こえる小さな家』より)

鎌田さんは雅子さまの音楽のセンスも絶賛していた。ご成婚後に始められたフルートの曲を、わずか3カ月ほどの練習にもかかわらずノーミスで演奏されたのだ。

陛下は“音楽一家”のなかで成長されたが、それは雅子さまも同じだった。ご実家・小和田家の関係者によれば、

「母親の優美子さんはピアノがお上手で、父親の恆さんはフルートをたしなまれていました。雅子さまも小学校時代にピアノを習われていて、小学4年生のときの発表会では“完璧な演奏”を披露されたそうです。

双子の妹の礼子さんはフルート、節子さんはバイオリンを習っていましたので、三姉妹で合奏することもありました」

雅子さまの“音楽熱”はご成婚、そして愛子さまのご出産もあってますます高まっていったという。

「愛子さまが幼少のころからピアノやバイオリンに興味を持たれたのは、両陛下の影響でしょう。特に雅子さまが、音楽を通じて表現力などを育むリトミックを、愛子さまの教育法の一つとして取り入れられたことは、当時話題になりました。ピアノについては専門の先生にもお願いしていたそうですが、ふだんは雅子さまが教えられていたそうです」(前出・皇室担当記者)

■両陛下に贈られた曲の名は『ロマンス』

天皇ご一家にとって、この31年間はけっして平坦な道のりであったわけではない。雅子さまは’03年から長期療養に入られ、愛子さまは初等科2年生のころ、登校への不安を訴えられた。

だが、そうした苦難を打開できたのも“音楽の力”のおかげだったのだ。

「愛子さまがご登校に前向きになられたのは、4年生進級後に管弦楽部に入部され、チェロを演奏されるようになってからです。“乱暴な男子”に怯えられていた愛子さまにとって、音楽の仲間たちは安心できる存在でした。朝練にも積極的に参加されるようになられたのです」(前出・皇室担当記者)

雅子さまが回復されていったのも、天皇陛下のご尽力あってのことだった。ある宮内庁関係者によれば、

「雅子さまが朝に起きることがなかなかおできにならなかったときは、陛下は朝食を召し上がらず、ずっとお待ちになっていました。

また音楽に親しむ時間を持たれていたことも、ご回復に寄与していると思います。日々、陛下や愛子さまの練習をお聴きになっていたのです。

雅子さまは人前では演奏されませんが、お誕生日やご結婚記念日などの節目の日には、陛下のビオラ、愛子さまのチェロに、ご自身もピアノで参加され、御所でお三方だけで演奏されることもあると聞いています」

音楽の効果について精神科医の香山リカさんはこう語る。

「音楽を聴くとリラックスしますし、自律神経も安定するといわれています。また言葉が足りなかったり、間違えていたりで、すれ違いが生じてしまうことは、家族や親しい者同士でもよくあることだと思います。しかし同じ曲を聴くことで心が通い合ったり、いっしょに演奏する時間を持つことで、協力し合うことができるようになることもあります。天皇陛下と雅子さまにも、そんな機会が幾度もあったのではないでしょうか」

両陛下の知人によれば、お二人がアイコンタクトだけで意思を疎通されていて驚いたことがあるというが、それも音楽の時間をともにされることにより培われたものだろうか。

天皇ご一家がどのような曲を演奏されているのかはつまびらかにされていない。だが、前出の宮内庁関係者はこう語る。

「陛下にビオラを40年以上指導しているビオラ奏者・兎束俊之さんは、ご成婚当時にビオラとピアノの二重奏曲である『ロマンス』という曲を贈られています。それを三重奏にアレンジしたものかもしれませんね」

御所でのハーモニーにより温かさを増している天皇ご一家の笑顔。そのほほ笑みの三重奏は、多くの国民をも癒している。

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