登った山は60年で1000以上、78歳でも「登れる山はまだまだある」 驚きの体力づくりルーティン

登山の魅力を語る田中さん(八幡市八幡)

 約60年かけて、国内外の千以上の山を登った。田中鈴美枝(たなか・すみえ)さん(78)の自宅には、山頂で撮った写真が所狭しと並ぶ。登山の魅力を「登るのが早い人も遅い人も、助け合いながら同じ頂上を目指すところ」と語る。

 和歌山県白浜町出身。19歳で会社の同僚に誘われ、登山にのめり込んだ。「残雪の美しさや高い所からの景色とかいろんな感動があった」。結婚を機に、24歳で八幡市に移り住んでからも続けた。

 ある時、山仲間から「日本百名山」の存在を教えられ、「全部登ってやろう」と挑戦を決意。仕事や育児をこなしながら52歳で全て踏破した。その後も47都道府県の最高峰や台湾で最も高い「玉山」など海外の山に挑んだ。

 新型コロナウイルス禍で山小屋が閉鎖されたことをきっかけに、長期間の登山は控えるようになった。代わりに力を入れているのが、奈良県葛城市の「万才山」といった数字の付いた山に登ることだ。最近は植物の群生地など国指定の天然記念物を100カ所巡ることも目標にしており、「何でも百そろえたくなる性格」と笑う。

 体力づくりは欠かさない。地元の石清水八幡宮に毎朝2時間かけて往復する。食事にも気を使う。「山を登るためには本人が健康でないといけない」との思いからだ。

 登山中の遭難や事故に備え、リュックにさまざまな道具をそろえる。45リットルごみ袋は穴を空けて体温低下を防ぐサバイバルシートにする。手ぬぐいは帽子や包帯になる。けがで出血した人の手当用にポリ手袋も忘れない。「登山のグッズは災害時にも役立つ」

 障害者や高齢者と一緒に登るイベントに参加し、登山の魅力をテーマに講演会もこなしてきた。今春には地元の奉仕団体に招かれ、防災への備えをテーマに講演会を開いた。1月の能登半島地震で「より社会に役立ちたい」という思いを強くしたためだった。グッズの使い方を紹介し、参加者からは「わかりやすい」「すぐに試せる」と好評だったという。

 間もなく傘寿を迎える。「80歳からの山歩きを楽しみにしている。登れる山はまだまだある」。挑戦は続く。

© 株式会社京都新聞社