国際結婚したタワマンマダムの嘆き「日本のマンションって」 20年ぶり帰国で不満あらわ

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

港区のタワマンは「思っていた以上に狭くてびっくり」

映画やドラマの中に登場する、大理石の床や巨大な窓が映える海外住宅。しかも、広い庭には車が数台は入りそうなガレージが。そんな光景は、海外でも今や郊外に限る話になりつつある。各国で都市部への一極集中化が進み、土地価格の異常な上昇によって「日本の住宅はうさぎ小屋のようだ」と呼ばれた狭小住宅が欧米でも多く見られるようになってきたという。閉塞感をなくすため、壁や柱、収納スペースを取り去り、デッドスペースを減らすことで居住空間を広げるリフォームが主流に。代わりに、おしゃれなアンティーク家具を購入し、最小限の物を身近に置く暮らしを送る人が増えているというが――。

さて今回、話を聞いたタワマンマダムは、国際結婚後に20年ほど海外駐在をしていて、久しぶりに日本に戻ってきたという瑤子=ベルトランさん(仮名・45歳)。彼女が抱えている悩みとはどのようなものなのだろうか。

「つい半年ほど前に、夫の仕事の関係で日本へ戻ってきました。住居は港区にあるタワーマンション。夫の会社が借り上げてくれている部屋なのですが、思っていた以上に狭くてびっくり。タワマンっていうと、広々としたLDKや十分な収納スペースが付いているイメージだったのですが……」

瑤子さんの部屋は、60平米超の1LDK。大学生のお子さんは海外にそのままとどまり、今回は夫婦2人での来日のため、十分な広さがあるように見える。しかし、以前は大都市の郊外にある150平米ほどの戸建てに住んでいたため、60平米の部屋というのは恐怖すら感じる狭さなのだと瑤子さんは語る。

「向こうで使っていた家具をそのまま持ってきてしまったのですが、これが思った以上に大きくて……。『日本のマンションってこんなに狭くて小さかったの? 天井もこんなに低かったの?』って、それこそ浦島太郎状態になってしまいました。しかも収納が少なくて、玄関と寝室にそれぞれ1畳ほどのウォークインクローゼットがあるほかは、小さな棚レベルの収納がつけてあるだけ。その分、居室が広いと言われればそうなのですが、不便で仕方ありません。

夫に文句を言ったのですが『向こうでも都市部の家はこんなもの』『君の我慢が足りないだけだ』などと言われてしまいました。夫の会社に言って、別の部屋を借り上げてもらおうかと思っているのですが、他のタワマンも同じ感じなのでしょうか?」

タワマンにも「はやり」がある

瑤子さんの悩みについて、中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんに話を聞いた。

「日本における一般的なマンションの収納率(床面積に対する収納スペースの割合)は、だいたい8~10%と言われています。60平米の部屋であれば、多くても収納は6平米。3畳程度の広さしかないのは仕方がないことでしょう。しかし、だからと言ってすべてのタワマンが収納不足かというとそうではありません。というのも、その建物が建てられた時期によって『はやり』があるんです。

たとえば2000年代初めごろは、それまでのユニットバスブームが終焉(しゅうえん)し、バストイレが分けられるようになりました。オール電化がブームになったり、再びガスキッチンが主流になったりと、毎年のようにこの『はやり』は変わります。寝室を広く取ることが主流だったときもあれば、居室は4.5~5畳程度に小さくし、その分リビングを広く取る部屋がはったこともあります。ですので、収納が多く作られた時代の物件を探せばいいのですが……。残念ながらどの物件がどうというところまでは僕自身把握していないので、間取りを見て、ご自身で探すしかないでしょう」

特に「デザイナーズ物件」ブームの折は、極端に収納がない部屋が多く作られていたという。瑤子さん夫婦が住むタワマンも、もしかしたらそうした「見栄え重視」の部屋がはやっていた年に建てられたものかもしれない。

「会社が借り上げているのであれば、そう簡単には変更できない可能性もあります。家具を処分するなり、持ち物を減らすなりして、広さを保つ努力をされてみたほうが早いかもしれませんよ」

トイレの上部等のデッドスペースを収納として利用したり、壁面収納家具を利用するなど、住む側にも工夫が必要だろう。「狭い」と嘆くよりも、自身の暮らしを見直す機会と捉えたほうが良さそうだ。

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。和栗恵

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