なんと悟飯がピッコロの大技を…!? メディアミックスの醍醐味『ドラゴンボール』アニメで描かれた“夢の必殺技”

『DRAGON BALL Z』 劇場版コレクション 復活のフュージョン!!悟空とベジータ/龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる[UK Import]

1984年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載をスタートさせた『ドラゴンボール』(鳥山明さん)。1本の漫画からはじまった『ドラゴンボール』はアニメとしても大成功を収め、原作終了から30年近く経った今も世界中のファンを魅了し続けている。

『ドラゴンボール』のアニメでは原作にない展開が多く、ときに「なんで原作でなかったんだ!」と唸らされるオリジナル必殺技が登場し、視聴者を興奮させることもあった。

そこで今回は、アニメ『ドラゴンボール』で描かれた“夢の必殺技”を紹介していこう。

■ピッコロ大魔王を倒した「あの技」に名前が! 悟空の「龍拳」

まずは、『劇場版 ドラゴンボールZ 龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる』で孫悟空が使用した「龍拳」からだ。

超サイヤ人3の悟空がフルパワーで拳を打ち出すことで、神龍に似た黄金の龍を生み出して相手を貫く、まさに“龍拳”の名にふさわしい豪華な技だ。さらに黄金の龍が貫いた相手の全身に絡みつき、大爆発で跡形も残さないおまけつきである。

さて、この“龍拳”は原作のとあるシーンに似ている。幼少期の悟空が右手の拳だけでピッコロ大魔王に突撃し、その腹を突き破って勝利したあの名シーンだ。右拳を突き出すポーズや、相手の腹を貫通するといった要素がとても近い。

原作でとても印象深いものの名前がなく呼びようのなかった“あの技”が、アニメでアレンジされて“龍拳”という名前をつけられる。メディアミックスだからこその展開といえるだろう。

■誰もが考えた夢のコラボ…“超サイヤ人”と“界王拳”の併用

気のコントロールで戦闘力を何倍にも高める“界王拳”と、激しい怒りによって目覚めた“超サイヤ人”。

どちらも悟空の有名なパワーアップ技だが、実は同時に使われたことはなく、疑問に思った人も多いのではないだろうか。「超サイヤ人のまま界王拳を使えば最強でしょ!」と、筆者は「人造人間・セル編」を読みながらよく思ったものだ。

アニメ版では、そんな幻のコンボが実現した。アニメオリジナルエピソード「あの世一武道会編」において、死者となった悟空が強敵パイクーハンを相手に、超サイヤ人の状態で界王拳を使用する。その名も“超(スーパー)界王拳”! 金髪の悟空が真っ赤なオーラを纏ってパイクーハンを殴り飛ばす姿がとてもカッコいい。超界王拳はほんの数秒で解除され、そのあと登場しなかったのが惜しいぐらいだ。

これは余談だが、後年の『ドラゴンボール超』では気のコントロールを極めた超サイヤ人ブルーと界王拳を掛け合わせた“超サイヤ人ブルー界王拳”が登場している。

■師弟の絆が悪を貫く! 悟飯の“魔貫光殺砲”

悟空の良きライバル、ピッコロの技でもっとも有名なのは“魔貫光殺砲”だろう。原作ではラディッツ戦で使われただけだが、その一度で読者の人気をかっさらった。

長年ピッコロの代名詞となっていた魔貫光殺砲だが、2022年公開の映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』で悟空の息子、孫悟飯が使って話題になったことはご存じだろうか。

ピッコロと悟飯が主人公に抜擢された本作では、終盤にレッドリボン軍の残党が目覚めさせたセルマックスとの死闘が繰り広げられる。戦いの中で新たな力「孫悟飯ビースト」に覚醒した悟飯が最後の一撃に選んだのが、敬愛するピッコロの魔貫光殺砲だったのだ。

決着後にピッコロから「(魔貫光殺砲を)撃てたのか」と尋ねられた悟飯が、「こっそり、練習したことが……」と照れくさそうに答える様子にジーンとしてしまう。

原作では悟空の死をきっかけに師弟となり、互いを尊敬し合う良い関係を結んだピッコロと悟飯。だが、悟飯がピッコロに影響された技は幼少期に使った“魔閃光”ぐらいしかなかった。

師匠の技を弟子が受け継ぐ……ピッコロと悟飯の深く熱い絆が感じられる一幕だ。

『ドラゴンボール』のアニメは“引き延ばし”と揶揄されがちで、確かに過剰な演出や独自の展開が多い。それらをまとめて「アニオリ」と呼び、敬遠するファンもいる。

一方で、今回紹介した素晴らしい必殺技は、アニメ版があったからこそ実現したのも事実だ。漫画とアニメ、異なるメディア展開があるからこそ化学反応が起こり、原作にない魅力が生まれる。『ドラゴンボール』はその典型といえるのではないだろうか。

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