“松坂効果”だけじゃない 1日2000人集める下部ツアー「太平洋クラブチャレンジ」とは

多くのギャラリーが来場するわけとは?(撮影/谷口愛純)

◇国内男子下部ABEMAツアー◇太平洋クラブチャレンジ◇太平洋クラブ江南コース(埼玉)◇7224yd(パー72)

今年で10回目だった大会は、下部ツアーとは思えぬほどのギャラリーでにぎわった。初日から2000人を超えた動員数は、元メジャーリーガーの松坂大輔氏の出場による効果だけではない。この大会は毎年、レギュラーツアーに劣らない観客動員を誇っているのだ。

今季は年間12試合ある下部ABEMAツアー。レギュラーツアーと違って入場無料とはいえ、本戦中の観客が1日1000人を超えることはあまりない。その中で、本大会は2000人を超えるギャラリーが訪れる日も多い。

「第1回大会で、想定したより人が集まらないことが分かって」と話すのは、太平洋クラブ広報担当の西島 太一氏。2014年に茨城県の美野里コースで行われた大会は、本戦中の観客が合計で593人にとどまった。

そこで翌年から、近隣の練習場や自治会、小中学校に観戦を働きかけた。「地元の人に応援してもらいたい思いと、地域貢献、地域活性化にもつなげてほしいという思いがありました」。埼玉県の江南コースに会場を移した2016年大会以降も、プロモーション活動を続けている。

今ではコースのある熊谷市内や近隣の小中学74校、地元自治会や企業などで告知を行い、会場で弁当などと引き換えられる食事券付きの観戦チケットを配布。2019年の最終日に記録した2746人は現在も、下部ツアー最多だ。

2023年の下部ツアーの1日当たり平均ギャラリー数は約950人(非公開の1試合を除く)。レギュラーツアーは初日が1751人、最終日が3899人だった。

これに対し、同年の本大会は初日から2006人、2292人、2390人を集めた。ABEMAの推薦で松坂氏が出場した今年は初日2055人、2日目2638人。予選落ちした松坂氏がおらず、天候の悪かった最終日も1205人が来場した。

松坂氏と予選同組で回った中西直人は「太平洋さんの工夫で、こうやって集まっていただいて感謝の気持ちでいっぱい」と話す。「お客さんにとって、男子のゴルフを見に行こうって、会場までの“道のり”が遠いと思うんです。ゴルフで魅せるのはプロとして当たり前。それ以外にも、みなさんに感謝の気持ちを伝えられたらと思います」

ABEMAが中継する下部ツアーでは選手にユニークなあだ名をつけて紹介したり、「ベストリアクショングランプリ」と称してバーディ奪取時のリアクションを競う賞を設けたりする取り組みも行われている。レギュラーツアー昇格を目指す選手たちがプレーする姿はとてもまぶしくて、生き生きとしていた。(埼玉県熊谷市/谷口愛純)

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