【イングランド・プレミアリーグ23-24シーズン振り返り】

< シティ、三つ巴の優勝争いを制しプレミアリーグ史上初の4連覇 >

2023-24 プレミアリーグは開幕前の下馬評通り、ペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティが28勝3敗7分の勝ち点91で、プレミアリーグ史上初の4連覇を達成した。

だが、その道のりは決して順風満帆ではなく、アーセナルやリバプールと激しい優勝争いを繰り広げ、最終節までもつれ込む苦しいシーズンでもあった。

苦戦の原因はいくつかあるが、やはりケヴィン・デ・ブライネのシーズン序盤での負傷、そしてアーリング・ハーランドの1ケ月離脱が大きく影響したと言えるだろう。

シーズンの分岐点となったのは第33節。アーセナルとリバプールがともにホームで敗戦する中、シティはルートン・タウン戦で5-1で快勝(この試合でハーランドのシュートが橋岡の顔面に当たり、そのまま先制ゴールとなる珍事も)。この勝利により、シティは首位に立ち、そのまま優勝まで突き進んだ。

ペップ・グアルディオラ監督の手腕とチームの総合力(選手層の厚さ)をもって、選手の負傷や不調という困難を乗り越えたシーズンは、結果的にシティの底力を示すものとなった事は間違いない。

対して終盤、首位争いをしたアーセナル、リバプールはあと一歩のところで息切れしてしまった。

冨安健洋を擁するアーセナルは、ウィリアム・サリバ、マルティン・ウーデゴール、ブカヨ・サカら(サリバは文字通り38試合出場、ウーデゴール、サカは35試合出場)主力への依存度が高いという側面もあり、試合ごとにメリハリが付けられなかったのは痛かった。ガブリエル・ジェズスの不振も追い打ちをかけたか。

また、シーズン中盤に首位を堅持してきたリバプールも、モハメド・サラーを中心に遠藤航、フィルヒル・ファンダイクらも活躍したが、最後は力尽きてしまった。それを象徴するのが第37節のアストン・ヴィラ戦。後半3分のゴールで3-1と2点リードとすると、後半30分を過ぎたところで遠藤ら先発メンバーを入れ替えたとたんに2点を失い、勝ち点1を取るのが精いっぱい。

この試合に代表されるようにチームはシーズン86得点を挙げるも、懸念点だった守備の不安が解消されず41失点。得失点差45は、マンチェスター・シティ、アーセナルの得失点差62と比べてあまりに大きな差となったのではないだろうか。

< アストン・ヴィラの台頭 >

他に目を向けると、アストン・ヴィラの台頭もエポックメイキングだった。活躍の要因はいくつかあるが、まず、ウナイ・エメリ監督の存在だ。エメリは2022年10月に監督に就任すると、アストン・ヴィラに戦術的な安定性と強力な守備組織をもたらした。彼の卓越した指導力と戦術理解により、チームは試合ごとに進化し、競争力を大幅に向上させた。特に、ディフェンスラインの整備と中盤のプレス戦術が効果を発揮し、第15節のマンチェスター・シティ、続く第16節のアーセナルの2戦をともに1-0で連勝。アーセナルには第33節にも2-0で完勝するなど、強豪チーム相手に互角以上の戦いを展開した。最終的には20勝10敗8分の勝ち点68でチームは2024-25シーズンのチャンピオンズリーグ出場権獲得に成功した。

< 日本人選手の活躍 >

日本人に目を向けると今シーズンも目覚ましい活躍が際立った。

まず、ブライトンの三苫薫。その卓越したドリブル技術と鋭い攻撃センスはシーズン序盤からファンを魅了した。特に第2節のウルバーハンプトン戦で見せたゴールは日本人史上初のプレミア月間最優秀ゴールに選ばれた。第25節シェフィールド・ユナイテッド戦(5-0)を最後に、腰の負傷で公式戦への出場はなし。攻撃の要ソリー・マーチの長期離脱で、両翼を成していた三笘に負担が偏ったか。2023-24シーズンは19試合3得点4アシスト。

リバプールの遠藤航は今シーズンのリバプールで大きな話題となった。シーズン序盤こそなかなか出番がなかったが、今ではアンカーポジションのファーストチョイスになっている。昨季までアンカーの主力だったファビーニョが抜けた穴を、遠藤が見事に埋め、カラバオカップ優勝にも貢献。守備的MFとしてマクアリスターとのコンビネーションが光った。2023-24シーズンは29試合1得点。

アーセナルの冨安健洋はケガに泣かされるシーズンとなったが、4月のマンチェスター・シティ戦で復帰。後半から途中出場して、優勝を争うチームとの直接対決で0-0のドロー、無失点に抑える活躍が光った。2023-24シーズンは22試合2得点1アシスト。

< サウサンプトン、1年でプレミアリーグ復帰 >

今シーズン降格の憂き目にあったのはルートン・タウン、バーンリー、シェフィールド・ユナイテッドの3チーム。かわって来シーズンに昇格するのは今季のチャンピオンシップを制したレスター・シティ、2位のイプスウィッチ・タウンFC、プレーオフを勝ち抜いたサウサンプトン。レスター・シティはエースストライカーのジェイミーバーディが健在で、昇格初年度から注目だ。サウサンプトンは降格後1年でプレミアリーグ復帰を決めた。

ということで、見どころたっぷりだった今シーズン。来シーズンもマンチェスター・シティが中心となって熱戦が繰り広げられるだろう。リバプールは9年チームを率いてきたユルゲン・クロップが去り、アルネ・スロットが監督に就任。彼がどんな戦術をとるのか、遠藤の起用法にも注目が集まる。ブライトンも、ロベルト・デ・ゼルビ監督が退任。次期監督がどのような戦術を採用するのか、また、ケガからの復帰が見込まれる三笘薫からも目が離せない。 見どころ満載なシーズンになること間違いなしだ。

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