後ろを向きながらヒールで相手の股を。超絶技巧を見せた川崎・山内日向汰が示す可能性

[J1第17節]川崎 2-1 名古屋/6月2日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

川崎が名古屋を2-1で下し、4試合ぶりの勝利を掴んだ一戦、雨の等々力で躍動したのが、川崎アカデミー育ちで桐蔭横浜大から今季入団した大卒ルーキーのMF山内日向汰だ。

リーグ戦では初出場した5節のFC東京戦(〇3-0)でアシストを記録する活躍を見せ、7節の町田戦(●0-1)では初スタメンを掴んだ。しかし、前半のみで交代となっていただけに、10試合ぶりの先発には気合いが入っていたのだろう。

4-3-3ではインサイドハーフがメインポジションとされてきたが、この日も左ウイングを任されると、濡れたピッチを気にもせず、自慢の技術力を活かしたドリブルで果敢に仕掛けていく。

試合は家長昭博の2ゴールで川崎が2-1で制し、山内はエネルギーを使い果たす66分までプレー。チームに勢いをもたらす活躍にサポーターからは称賛の声が寄せられ、試合後には味方を代表して挨拶をする姿もあった。

【動画】山内のプレー(1分28秒頃~)

そのテクニカルなプレーは観ていてワクワク感が詰まっており、特に38分のドリブル突破は会場がどよめいた。

敵陣右のコーナーフラッグ付近で相手DFを背にボールをキープした山内は、タイミングを見計らって右足のヒールで相手の股を抜いて、突破したのである。その後のクロスは相手に阻まれたが、足技の豊富さを示すには十分なプレーであった。

それ以外にもテンポ良く相手を翻弄したドリブルを目にすれば、川崎育ちの23歳の大きな可能性を感じられずにはいられない。

件のヒールでの突破に関しては「よくやるプレーです。意外と簡単で、地元の友だちとずっとサッカーをしてきて、こうやれば、相手はこうくるなという感覚があるので、そこにイメージとタッチを合わせるだけでそんなに難しくはないです。でも地元の友だちに感謝です」と笑顔を見せる。

開幕前のキャンプからアピールを続け、徐々にプロの水にも馴染んできた印象でもある。

「コンディションはキャンプの時からずっと良いですし、今は自分の成長を実感できています。いろんなことを吸収できていて、ピッチでそれを表現できれば活躍できると信じています。ただ、本当にまだ結果の部分では満足していないので、数字にこだわってやっていきたいです」

試合後には大学選抜で切磋琢磨した同年代の名古屋のアタッカー・倍井謙とのユニホーム交換も実現。ともに先発し、マッチアップした友との絆も嬉しそうに口にした。

「試合前の入場の時に交換しようと話していたんです。初めて交換しましたし、大学選抜で一緒だったので嬉しいですね。(倍井とは鹿島のSB濃野)公人がすごい活躍しているので、公人凄いね、今度ご飯を奢ってもらおうかという話もしていました」

本人が語るように今後は目に見える結果を残す必要があるだろう。それでも彼の将来は大いに楽しみだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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