『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は『アメスパ』と繋がる!? 予告編の小ネタを徹底解説

こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします! 今回は6月3日に全世界で解禁になった『ヴェノム』シリーズ第3弾『ヴェノム:ザ・ラストダンス』の予告編解説です。

映画『ヴェノム:ザ・ラストダンス』予告編
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、マーベルの人気キャラ、ヴェノムを主人公とする映画の3作目で、トム・ハーディが主演を務めています。このヴェノムは、もともとスパイダーマンのコミックに登場するキャラクターで、エディ・ブロックという男がスパイダーマンの能力と記憶をコピーした、黒いブヨブヨのエイリアン“シンビオート”に寄生され誕生しました。もともとスパイダーマンをコピーしていますから、ルックスはスパイダーマンに似ています。スパイダーマンを黒くして怪物化させたようなキャラです。

しかしながら、映画シリーズはそうしたスパイダーマン要素をとりあえず外して、ヴェノム単体の映画に仕上げています。ウルトラマンなしでバルタン星人の映画を作るみたいなことでしょうか?

そして本シリーズは、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とは別世界のお話です。スパイダーマン系のキャラクターの映画化権を持つソニーピクチャーズが、MCUとは別に展開する通称SSU=ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの作品です。『ヴェノム』(2018年)、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年)が製作され、いずれも大ヒット。日本でも興収20億円レベルの記録を残しています。

また先ほど、MCUとSSUは別の世界と書きましたが、昨今のマルチバース設定を使って、この2つの映画世界はマルチバースの関係であると説明されています。したがって『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のエンドクレジットのおまけシーンでは、例のドクター・ストレンジの魔法でエディ/ヴェノムがMCUの世界に来てしまった、そしてすぐ元の世界に戻ってしまったことが示唆されています。

ヴェノムの面白さは、エディとシンビオートの二人三脚ぶり。要はちょっと変わったバディものなのです。だからヴェノムのときは、「俺=I」ではなく「俺たち=WE」と話します。そしてヴェノム自体は、モンスターかつヒーロー。悪い奴を喰ってしまうという暴れっぷりを見せながら、どこかかわいらしく愛嬌がある。そういうキモかわ的な要素も人気なのです。

そして、第3弾となる『ヴェノム:ザ・ラストダンス』は、タイトルの“ラストダンス”が示す通り、シリーズ最終作と言われています。予告を観ていただけると、ヴェノムならではのアクションと2人(?)のバディ感がよくわかります。予告編がこのタイミングだったのは、ソニー・ピクチャーズが誇るバディアクション映画『バッドボーイズ RIDE OR DIE』の公開のタイミングだからという説があります。

では、ここからマニアックな解説をしていきましょう。この予告をみてわかるのは、どうやらヴェノム/エディが2つの敵に追われているということです。

1つは、シンビオートを軍事利用しようとしている組織。もう1つは宇宙からくるシンビオートの軍団です。コミックでは、ヴェノムを超人兵士として使う「エージェント・ヴェノム」という設定があり、したがって軍事利用のくだりはそこにつながるのかもしれません。

また、1995年に『Planet of the Symbiotes(シンビオートたちの惑星)』というコミックがリリースされたことがあり、これはシンビオートの群れが地球を侵略しようとする話でした。後者はここから要素を取ったのかもしれません。

コミックからの引用といえば、予告編の最後のシーンで、馬にシンビオートが寄生して、“ヴェノム馬”みたいになりますよね? これと似たようなのが、『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』という年老いたウルヴァリンが主人公のコミックに、“ヴェノムT-REX”(そう恐竜です)として登場します。

そして、マニアをビックリさせたのは、この予告の1分26秒目、1分58秒目、2分26秒目あたりなのです。まず1分26秒目にはカウンターの上のシンビオートとバーテン風の男、そして軍人が映っていますが、このバーテンは先ほど書いた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のおまけシーンにおいて、MCUの世界でエディ/ヴェノムと会話した人物と同じなのです。そしてこの軍人は、MCUの『ドクター・ストレンジ』シリーズで、ストレンジの宿敵となるモルドー役のキウェテル・イジョフォーが演じています。『ヴェノム』の世界とMCUを何らかの形で結び付けたいと思っているのでしょうか。

さらに、1分58秒目にはギターを弾くヒッピーみたいな人が出てきますが、この役を演じているのはリス・エヴァンス。彼はアンドリュー・ガーフィールド出演の『アメイジング・スパイダーマン』でトカゲ人間リザードに変身するコナーズ博士を演じています。なぜ、この人をわざわざ持ってくるのか。この世界は『アメイジング・スパイダーマン』の世界と繋がっているのでしょうか。

そして2分26秒目に唐突に映る少年、これが少年時代のピーター・パーカーという説があるのです! もしかして『マダム・ウェブ』の最後で生まれたあの子が成長した姿!?

さらに女性の科学者らしき人が出てきますが、演じているのはジュノー・テンプルという俳優さんです。彼女の役柄は“スクリーム”(シンビオートに憑依された女性が変異するキャラ)だと言われています。このスクリームはUSJのスパイダーマンのアトラクションにも登場しました。

そしてガラスの部屋に閉じ込められている男性は、前作に登場したパトリック・マリガン刑事(スティーヴン・グレアム)ですが、彼もコミックではシンビオートに寄生され“トキシン”というヴェノムのようなキャラになります。したがって、ヴェノムの前にスクリームとトキシンが現れるのではないでしょうか。

予告編だけでもファンの考察欲求をかきたててくれますよね。なお、今年のアメコミ映画は『デッドプール&ウルヴァリン』のデッドプールとウルヴァリン、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』のジョーカーとハーレイ、そして『ヴェノム:ザ・ラストダンス』のエディとシンビオートと、バディ系がトレンドです。
(文=杉山すぴ豊)

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