【ライブレポート】Mrs. GREEN APPLE、imaseとキタニタツヤを迎えた<Mrs. TAIBAN LIVE>DAY2「一人一人に向かって歌っています」

Mrs. GREEN APPLEの対バンイベント<Mrs. TAIBAN LIVE 2024>DAY2が、5月22日に横浜アリーナで開催された。この日の対バンは、次世代の注目アーティストimaseと、Mrs. GREEN APPLEと同世代であり、魅力的な楽曲で人気/評価共に高いクレバーなシンガーソングライター・キタニタツヤの2組。

まずステージに登場したimaseは、ファルセットと地声を変幻自在に使い分け、「Nagisa」「ユートピア」「Shine Out」などを次々と披露。バンドアンサンブルに乗って、メインステージの左右、あるいはセンターステージへと会場をフルに使って、ポップな楽曲を軽快に歌い上げていく。

MCでは、キタニタツヤとの交流についても触れながら、「Mrs. GREEN APPLEさんは、学生の時から自分も含め、同世代がみんな聴いていて。そんな方とキタニタツヤさんと一緒に横浜アリーナという素敵な舞台でライブができて、とても嬉しく思います」と語り、「いつかワンマンでやりたいな、横浜アリーナ! 楽しすぎます!」と喜びを率直に表すと、代表曲「NIGHT DANCER」で会場を大いに盛り上げた。

対バンライブでのトップバッターは、“会場を暖めることが役割”などと言われることがあるが、まさしくimaseは、自身のキャラクターをしっかりと披露しつつ、見事に観客を非日常のライブ空間へとシームレスに誘ってくれた。

続いて登場したキタニタツヤは、自らハードなギターリフを炸裂させ、ロック感溢れる「スカー」でライブをスタート。重量感のあるビートで「悪魔の踊り方」を歌うと、アップテンポの「聖者の行進」「Moonthief」では会場から手拍子が起こり、パワフルさと色気のあるボーカルで観客を魅了した。

「僕は曲を作る人間として、勝手に大森元貴という存在に打ちのめされ続けてきて。そういう長い旅路があって今日、Mrs. GREEN APPLE、そしてファンの存在のデカさに、改めて打ちのめされています。僕が19歳の時に「ナニヲナニヲ」(アルバム『Progressive』収録/2015年)がリリースされて、それがハイパージェラシーで(笑)。当時の僕は、まだただのパソコン音楽家の大学生で、そこからいろんなバンド、アーティストを追い抜いてここまで来たんですけど…ミセスはずっと上にいるねぇ(笑)。でも、改めてミセスファンの皆さんの顔を見ていたら、ますます音楽に対する意欲が湧いてきました。今日は本当にいい日だと思います。最後まで楽しんでいってください」──キタニタツヤ

MCでこう語ると、「化け猫」「次回予告」「Rapport」を立て続けに歌ったキタニタツヤ。横浜アリーナという大会場にも関わらず、センターステージなどには行くことなく、あくまでもライブハウス的にメインステージのセンターでバンドとパフォーマンスを展開させるあたりに、彼のポシリーやスタンスといったものが感じられた。そして、ピアノと共に「私が明日死ぬなら」を歌い始めると、最後に「今日は本当に楽しかった。また会える日を楽しみにしています!」と観客にメッセージを送り、「青のすみか」でライブを終えた。

◆ ◆ ◆

しばしの転換タイムを経て、いよいよ大トリ、Mrs. GREEN APPLEの登場だ。ステージにはミラーボールがきらめき、「元気にしてますか? 最高の日にしましょう。よろしく!」という大森の言葉から始まった一曲目は「CHEERS」。この日のMrs. GREEN APPLEは、DAY1のロックモードとはまたひと味違い、ホーム感溢れる会場で適度にリラックスした表情を見せながら、バンドのポップな側面を軽やかに演出していた。

続けざまに「ワン、ツー、スリー、フォー!」というカウントで「アボイドノート」へ。大森はギターを弾きながら歌い、藤澤はステージフロントで観客を煽る。そんな中で寡黙に、かつ堅実にギターを弾く若井。リズム隊はDAY1同様、ドラムに神田リョウ、ベースが二家本亮介という、万全の布陣だ。この曲が終わると間髪入れずに、ドラムソロ的プレイから、大森と若井が奏でる「インフェルノ」のイントロへ。藤澤が「横アリ!」とシャウトし、サビ前には大森の「行けるか!?」という掛け声で、会場は一気に興奮の坩堝と化していった。

ここで一旦ギターを置いた大森は、ステージ上であぐらをかいて「Blizzard」を歌い始める。しかしそれは、ただ座っているのではなく、その状態でコンテンポラリーダンスとも言える身体表現を折りませながら、歌詞の世界観を視覚的にも表し、それと同時に、一般的には線が細くなりがちなファルセットのフレーズを芯のある太い声で歌い上げていく。こうした大森の“躍動”と、藤澤が奏でるピアノの“静寂”な響きのコントラストが実に印象的。そこから、DAY1以上に激情的だった「Loneliness」、複雑なフレーズをメカニカルなバンドアンサンブルで見事にこなしていく「ProPose」へとステージは続いた。

次に披露されたのは、4月に配信リリースされた新曲「ライラック」。原曲にはない、リムショットを生かしたドラムと藤澤のエレクトリックピアノの柔らかな響きから、若井がタッピングを駆使したイントロフレーズを放つと、勢いを加速させてバンドイン。大森が“青に似た すっぱい春とライラック” “何を経て 何を得て 大人になってゆくんだろう”と歌う。そのラスト、全員が揃って歌うシーンでは、若井の真横から捉えた3人の横顔がステージ両サイドの大型LEDスクリーンに映し出され、その歌詞、フレーズと併せて、とても印象的な場面を作り出していた。

この曲は大森がメディアで公言しているように“大人の青春ソング”であり、6年前にリリースした彼らの代表曲「青と夏」のアンサーソング。その「青と夏」が次いで歌われ、「青と夏」を経てたどり着いた「ライラック」という楽曲の奥深さと、「ライラック」を聴いた後に届けられる「青と夏」の眩しさという2曲の相乗効果によって、この日のライブはクライマックスを迎えた。

そのエンディング。若井が弾く明るさと切なさが詰まったアウトロのフレーズ、それを藤澤のバッキングが支え、そこに大森はフェイクをふんだんに入れながら「青と夏」を終えると、そこから30秒以上の長い沈黙を挟んだ後、大森のブレスをきっかけに始まったのは「Soranji」であった。楽曲全体が少しずつ熱量を帯びてクレッシェンドしていき、祈りにも近い想いが最高潮へと達した後、藤澤のピアノがその余韻を永遠のものとしていく。

「みなさん、楽しんでますか? ようこそいらっしゃいました!」──大森元貴

ここで大森がMCを挟むと、若井、藤澤も言葉をつづけた。

「最高じゃないですか。ね! 楽しいよね! imaseさんもキタニタツヤさんも、最高のライブを届けてくださって、カッコよかった。カッコよかったよね!」──若井滉斗

「みなさん、楽しんでますかっ! いやねぇ、昨日は乃木坂46さんに出てもらいまして、今日はimaseさん、キタニタツヤさんと、豪華な皆さんとお送りできて嬉しく思っています!」──藤澤涼架

二人の感想に頷いていた大森は、リリースされたばかりの「Dear」を紹介し、「やってもいいですか?」と最新曲を披露。“生”をテーマとした、壮大な歌詞とサウンドをロックマナーで表現した点にMrs. GREEN APPLEの新境地が感じられる曲だ。これを歌い終えると、すぐさまフロアタムを生かしたドラムのビートに合わせて会場から手拍子が起こり、藤澤のソフトなピアノの音色が重なっていく。すると大森の「勝負だ!」というシャウトをきっかけに、若井が「Magic」のギターリフを弾き始めた。ステージ前方では花火のようなスパークが吹き上がり、ステージと客席が一体の大合唱となった。

そして最後のMCで、大森は満員の観客にこう語りかけた。

「7月に行いますスタジアムツアー<ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~>がソールドアウトとなり、この夏に15万人を動員するということで、本当にありがたいです。もっとありがたいことに、「行けないよ」「(チケットが)取れなかったよ」という方がいらっしゃると聞きまして、定期公演をしようと。Kアリーナで、10月に8日間に及ぶ定期公演<Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”>を行います。こちらは、何と16万人。でもね、我々が届けるのは“数”じゃないですから。一人一人に向かって歌っていますので、また会いに来てください。いいですか!」──大森元貴

こうしてライブを締め括るのかと思いきや、前日のDAY1に続いて(さらに言えば、去年の<Mrs. TAIBAN LIVE>に続いて)、imase「NIGHT DANCER」、そしてキタニタツヤ「青のすみか」のワンコーラスをカバー。「(曲を)間違えちゃった!」(大森)というユーモアは、もはや<Mrs. TAIBAN LIVE>恒例となりつつあり、むしろ既に“対バンの何の曲をカバーするのかな?”という新たな楽しみにもなっている。もう次回が楽しみだというファンも決して少なくはないだろう。

そして「また会いましょう!」(大森)という言葉で「ケセラセラ」が歌われ、二日間にわたる<Mrs. TAIBAN LIVE>は大団円を迎えた。

DAY2でのimase、キタニタツヤとの対バン、さらにDAY1の乃木坂46という今年の顔ぶれを見ると、そこには今のMrs. GREEN APPLEならではのラインナップと言える特徴が色濃く感じられる。言ってみれば、DAY1の乃木坂46で横方向のX軸を引き延ばし、DAY2のimaseとキタニタツヤで縦方向のY軸を広げていこうという、“面”で音楽エンターテインメントを拡張させていこうという試み。これは、Mrs. GREEN APPLEによるエンターテインメントをより多面的にしていこうという啓蒙活動と言えるかもしれない。

そんな中でこの日、imaseとキタニタツヤが揃って、「いつか自分もここ(横浜アリーナ)でワンマンライブをやってみたい」といった主旨のMCをしていたことが、実に印象的であった。と言うのも、かつてはMrs. GREEN APPLEも横浜アリーナでのワンマンを目標に掲げ、2019年、<ARENA TOUR “EDEN no SONO”>でそれを実現させた。その際、メンバー同士で心から喜び合っていた姿を覚えているファンは多いだろう。そんな彼らが、今では同世代や次世代アーティストを横浜アリーナに連れてくるという役割を担っているのだ。そして、彼らは自身の立場を十分に理解したうえで、今年の<Mrs. TAIBAN LIVE 2024>に臨んだはずだ。そうやってMrs. GREEN APPLEは今なお、“面”を増やそうと活動を続けている。

昨年のドーム公演<Atlantis>のエンディングで、大森は「僕ら(の根本)は変わらずに、多面的になろうとしました」と語った。フェーズ2以降、特に昨年のMrs. GREEN APPLEは、こと目に見える部分での活動において“自分たちは◯◯である”と自らを定義せず、ありとあらゆるものになろうとしていたし、実際に挑戦していた。それは“Mrs. GREEN APPLEって◯◯でしょ”というパブリックイメージ、もっと言えば“バンド”や“ミュージシャン”という既成概念との闘いであったと言ってもよいだろう。

そうした一年間の活動を通して、あらゆる物事に意欲的にチャレンジしてきたから彼らだからこそ、さまざまな場面で得た独自の経験値を、自身のエネルギーとしてフィードバックしている。そのひとつの結果が、今回の<Mrs. TAIBAN LIVE 2024>だったように思える。彼らは自身の基盤を築くというタームはとうの昔に終えており、今やエンターテインメント全体を牽引していく、少ないリーダー的存在のひとつになりつつあると、そんなことを強く感じさせた二日間であった。

取材・文◎布施雄一郎
撮影◎田中聖太郎写真事務所 / MASA、山内洋枝

■<Mrs. GREEN APPLE「Mrs. TAIBAN LIVE 2024」>2024年5月22日@神奈川・横浜アリーナ SETLIST

【imase】
01. Nagisa
02. ユートピア
03. Shine Out
04. Have a nice day
05. NIGHT DANCER
06. Happy Order?
【キタニタツヤ】
01. スカー
02. 悪魔の踊り方
03. 聖者の行進
04. Moonthief
05. 化け猫
06. 次回予告
07. Rapport
08. 私が明日死ぬなら
09. 青のすみか
【Mrs. GREEN APPLE】
01. CHEERS
02. アボイドノート
03. インフェルノ
04. Blizzard
05. Loneliness
06. ProPose
07. ライラック
08. 青と夏
09. Soranji
10. Dear
11. Magic
12. ケセラセラ

■定期公演<Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”>

▼2024年
10月05日(土) 神奈川・Kアリーナ横浜
open16:30 / start18:00
10月06日(日) 神奈川・Kアリーナ横浜
open16:30 / start18:00
10月09日(水) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月10日(木) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月15日(火) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月16日(水) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月30日(水) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
10月31日(木) 神奈川・Kアリーナ横浜
open17:30 / start19:00
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
▼チケット
・Ringo Jamシート:20,000円(税込) ※特典付き/詳細は後日発表
・SS指定:15,000円(税込) ※特典付き/詳細は後日発表
・S指定:12,800円(税込)
・着席指定:12,800円(税込)
※着席指定は 小さなお子さまや、コンサートを座ってご覧になりたい方の為のお席となります。公演中は立ち上がってのご観覧はできません。
応募方法:https://mrsgreenapple.com/news/detail/20263

■スタジアムツアー<ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~>

▼2024年
7月06日(土) ノエビアスタジアム神戸
7月07日(日) ノエビアスタジアム神戸
open16:30 / start18:30
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888
7月20日(土) 横浜スタジアム
7月21日(日) 横浜スタジアム
open16:30 / start18:30
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999
▼チケット
指定席:12,800円(税込)
※雨天決行・荒天中止
※4歳以上のお子様よりチケット必要/3歳以下のお子様はご入場できません(年齢はご来場の公演当日時点)
※営利目的の転売禁止

■デジタルシングル「Dear」

2024年5月20日(月)配信
配信リンク:https://lnk.to/mga_dear
※iTunes、レコチョク、Apple Music、LINE MUSIC、Spotifyなどの音楽配信サイトにて配信中
※映画『ディア・ファミリー』主題歌

▼映画『ディア・ファミリー』2024年6月14日(金)公開
原作:清武英利「アトムの心臓『ディア・ファミリー』23年間の記録」(文春文庫)
監督:月川翔
脚本:林民夫
主題歌:Mrs. GREEN APPLE「Dear」
音楽:兼松衆
出演:大泉洋 菅野美穂 福本莉子 新井美羽 上杉柊平 徳永えり ・ 満島真之介 戸田菜穂
川栄李奈 / 有村架純 ・ 松村北斗 光石研
制作プロダクション:TOHOスタジオ
配給:東宝
撮影期間:2022年12月4日~2023年2月4日
(c)2024「ディア・ファミリー」製作委員会
公式サイト:dear-family.toho.co.jp
公式X:@dear_family_
公式Instagram:@dear_family_movie
公式TikTok:@dear_family_

▼ストーリー
“ただ娘の命を救いたい”、その一心だった。
生まれつき心臓疾患を持っていた幼い娘・佳美は【余命10年】を突き付けられてしまう。「20歳になるまで生きられないだと…」──日本中どこの医療機関に行っても変わることのない現実。そんな絶望の最中、小さな町工場を経営する父・宣政は「じゃあ俺が人工心臓を作ってやる」と立ち上がる。
医療の知識も経験も何もない宣政の破天荒で切実な思いつき。娘の心臓に残された時間はたった10年。何もしなければ、死を待つだけの10年。坪井家は佳美の未来を変えるために立ち上がる。絶対にあきらめない家族の途方もなく大きな挑戦が始まる。

関連リンク

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