輪島市が緊急解体を再開 市長方針、地元業者に直接発注

3日の地震で倒壊した木造2階建て家屋=輪島市町野町東大野

  ●「2次倒壊」さらに1棟

 輪島市は4日、倒壊するリスクが高い建物の撤去作業を迅速化するため、緊急の公費解体を再開する方針を決めた。最大震度5強を観測した3日の地震の影響で、元日に損傷した家屋の崩落が相次いでいるためで、安全確保を最優先する。専門家は度重なる地震で被災家屋が危険な状態にあり、「ささいな引き金で倒壊する恐れがある」と指摘し、傷んだ建物に近づかないよう警鐘を鳴らす。

  ●罹災証明、再調査の依頼増か

 輪島市によると、国や石川県、解体業者などと相談した上で工事に着手する通常の公費解体に比べ、緊急の公費解体は市町が地元業者に直接発注できる。市は3月末まで緊急の解体を実施し、4月に通常の解体に切り替えたが、3日の地震で建物の倒壊リスクが高まったとみて、再び実施することにした。

 3日の地震では、いずれも元日の揺れで損傷し、「全壊」と認定されていた5棟が倒壊した。4日には、輪島市町野町東大野の木造2階建て家屋もつぶれていたことが新たに判明。所有者の宮腰和彦さん(62)によると、柱が大きく傾き、公費解体を待っていたところだった。

 宮腰さんの住宅を含め、3日の地震による「2次倒壊」は輪島市内で計6棟となった。これを受け、坂口茂市長は4日の会見で「対策を急ぐべき案件は、市が緊急解体を行い、安全性を確保したい」と語った。

 3日の地震は、建物の被害の度合いを表す「罹災(りさい)証明書」の判定にも影響する可能性がある。損傷が進んだ場合は判定が引き上げられることも想定され、輪島市の担当者は「今後、再調査を求められることもあるだろう」と話す。

 罹災証明書を巡っては、判定を不服として2次調査を求める人が以前から多く、県によると、5月27日時点で奥能登4市町に計8千件以上の申請があった。今後、さらに再調査の要請が増えた場合、対応する人手の確保が課題となりそうだ。

  ●5日から朝市解体

 輪島市は5日、元日の地震に伴う大規模火災で大半が焼失した輪島朝市通り周辺の計264棟について、公費解体を開始する。

 朝市では、焼け落ちた建物が「滅失」したとする登記手続きが完了しており、所有者全員の同意がなくても災害廃棄物として解体可能となっている。

© 株式会社北國新聞社