水中ドローン、瀬戸内の海洋環境改善目指す 課題解決の鍵はアート、大学連携の共同事業

共同事業発表の記者会見でポーズをとる香川大の上田夏生学長(左)と、オンラインで出席した東京芸術大の日比野克彦学長=2024年1月

 海洋環境悪化や離島の過疎化といった瀬戸内地域の課題をアートで解決につなげようと、香川大が東京芸術大との共同事業に乗り出した。水中ドローンを使い、人工の藻場を「美術館」として展示する計画が柱。現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」が開かれる土地柄を生かし、芸術を介して住民の行動変容を促す狙いだ。(共同通信=牧野直翔)

 香川大は、香川県内の中高生が東京芸術大出身のアーティストと作品を作る教育プログラムの実施を通じ、大学間の交流を深めてきた。事業は2028年度までで、文部科学省の助成を受ける。

 瀬戸内海では地球温暖化により、海藻が生い茂る藻場が減少。水中の二酸化炭素(CO2)を多く吸収、貯留するため、香川大が脱炭素化に役立つとして再生に向けた研究を重ねてきた。

 水中美術館は、芸術家と共同で「海の森」と銘打った藻場を造成し、土台となる石の設計にアートの要素を採り入れる。ドローンで撮影した映像を「展示」する想定だ。通常では見えない海中の世界を可視化する。

 過疎化、高齢化で住民の移動が困難になりつつある離島では、持続可能な新しい移動手段の実現を目指す。仮想現実(VR)を使った芸術表現を組み合わせて、現代アートの島として知られる直島をはじめ、芸術目当てで訪れる観光客らにも魅力的な内容としたい考えだ。

 事業の第1弾として、夏にも拠点となる高松市内の研究施設の完成を見込む。東京芸大の日比野克彦学長は「人の心を動かすことで社会が変わる」と強調。香川大の上田夏生学長は「研究にアートの発想が加わることで、これまで思っていなかったような効果に期待している」と語った。

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