「ゴール前の感覚とかターン、アタッキングサードでのスムーズさ」に注目! 完全に自信を取り戻した南野拓実の牽引力に期待

2026年北中米ワールドカップ・アジア2次予選のミャンマー&シリアの2連戦に臨む日本代表。6月3日に千葉県内で初日のトレーニングを消化した後、深夜便で移動し、4日の昼前にはミャンマー入り。16時から試合会場のトゥウンナスタジアム横の練習場で現地での初練習を行なった。

激しい雨と晴天が短時間で目まぐるしく変化する不安定な気候のなか、ピッチに現われた選手たち。ミャンマー在住の日本人140人による花道の出迎えを受ける心温まるシーンはあったが、更衣室もなく、外のイスで着替えるという劣悪なアウェーの環境下での練習となった。

この日も足の張りを訴えている長友佑都(FC東京)は別調整となり、それ以外の25人はフルメニューを消化。戦術練習は非公開となったため、6日のミャンマー戦のメンバーは明確には分からなかったが、現代表で最多の20ゴールを奪っている南野拓実(モナコ)は攻撃陣を力強く牽引する構えだ。

南野と言えば「ミャンマーに縁のある男」という印象が強い。2014年のU-19アジア選手権に参戦し、準々決勝の北朝鮮戦でまさかのPK失敗で世界切符を逃した苦い経験もあれば、森保ジャパンのカタールW杯・アジア2次予選の初戦となった2019年9月のミャンマー戦でゴールを挙げている。後者の場所は今回と同じトゥウンナスタジアム。会場の雰囲気や芝生の状態を含め、環境面を熟知しているのは大きい。

「雨が降ったり、ピッチの状態も含めて予想外のことが起きたりするかもしれない難しさはあるというのは、選手たちでも話しています。短い時間ですけど、良い準備をしていきたい」と、本人も今一度、気を引き締めた。

伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)、三笘薫(ブライトン)の両翼不在の今、南野は重要な得点源の1人と言っていい。今季のモナコでは9ゴール・6アシストと気を吐き、「点の取れるアタッカー」として完全に自信を取り戻した。そこは森保一監督にとっても非常に心強い点に他ならない。

「試合に出続けることによってコンディションはすごく良いですし、ゴール前の感覚とかターン、アタッキングサードでのスムーズさというのは、前のシーズンに比べて良くなっている。それを今季最後のこの2試合で出したいと思います」と本人も目を輝かせた。

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3日の練習では、南野は4-2-3-1のトップ下、あるいは3-4-2-1のシャドーに入っており、今回はいずれかで出る公算が大。モナコでも最前線より一列後ろに入ってゴール前に厚みをもたらす形が目立っており、今の彼にとっては最適解の役割と言っていい。

「今回の代表で(自分の起用が)考えられるのは、2シャドーの位置、あるいは8番(攻撃的MF)というか、2シャドートップみたいなところだと思うんですよね。どこに入ってもスムーズに攻撃につなげる仕事と強度の高い守備は変わらない。後ろが5枚なのか4枚なのか分からないけど、全体の連動性を高めていければいいと思っています」と、やるべきことを明確に描いている様子だ。

そのあたりはカタールW杯のアジア予選を戦っていた頃との違いだろう。前回予選時はトップ下からスタートして、最終予選では左サイドで起用されることが多かった。しかしながら、もともと南野はドリブルで相手を一気に抜き去るようなタイプではない。その分、どうしても中央に絞り気味になり、攻撃の迫力を出せなくなり、迷いが見られるようになった。

そこにリバプールでの出場機会減が重なり、得点からも遠ざかっていった。そんな最終予選の悪循環が本大会で今ひとつの出来につながったのは、ご存じの通りだろう。

けれども、昨年に代表に戻ってきてからの南野は「トップ下やシャドーでゴール前に厚みをもたらす」という自身の役割を出しつつ、チームのために献身的に働くことをバランス良く両立させている印象だ。それをより研ぎ澄ませていき、誰と組んでも良さを出せる状態にすることができれば、2度目の最終予選とW杯はより良いものになるはずだ。

「僕としては、前回の最終予選よりも、(直近の)アジアカップの難しさの方をより強く感じています。シンプルに放り込んできたりとか、肉弾戦になった時に自分たちがどうボールを支配していくのかってところを高めないといけない。そのために個の力を高めていくことが重要だと思いますし、チームとしても攻撃の糸口を見つけられるようにしないといけないですね。

そこで自分が保持することも必要でしょうし、どうキープするかにもこだわっていかないといけない。全員で意図を持ってボールを動かせられるように仕向けていきたいです」

南野が言うように、中盤から前線で時間を作り、相手を優位に動かすことができれば、後手に回るケースも少なくなる。そういう戦いに持っていくために、その戦術眼で試合のリズムを作るようなタスクも手掛けてくれれば理想的だ。

ベテランの域に達しつつある29歳アタッカーの牽引力に期待しつつ、6月シリーズでの爆発を楽しみに待ちたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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